2026年6月20日土曜日

小田急線小田原線の複々線化(登戸~新百合ヶ丘)について考えてみる(1)

  今回は趣向を変えて、小田急小田原線の登戸~新百合ヶ丘の複々線化について考えてみることにする。その内容の都合上、おそらく何回かに記事を分割することとなろうけれど、ご辛抱いただければ幸いである。

 手始めに、新百合ヶ丘駅の配線に関して具体化してみる。当方では大きく分けて、以下の3つの方向性のいずれかを想定している。

図1 新百合ヶ丘駅想定配線図

 簡単に言えば、外側線を急行線にするか、内側線を急行線にするか、そのどちらでもないか、の三案となる。いずれの案も、「急行線は地下とする」「急行線を内側線にする場合、小田原方面の優等列車と多摩線との平面交差を防止するための線路を柿生駅側に追加」の点で共通させている。では、「急行線は地下」を確定事項と見做して分類した理由であるが、その他の案が困難である、と判断したことによる。

 その内容を具体化するためにも、まずは前提を議論しよう。手始めに、東京圏の今後の都市鉄道のあり方について(交通政策審議会答申第198号)においての位置づけだ。

図2 交通政策審議会答申第198号における本案件の位置づけ
 
 事業費約1500億円に対してB/C(費用便益比)が2.9程度と、少なくとも同列の他のプロジェクトと比べるとかなり期待度が高い。一方で、課題の欄に「関係地方公共団体・鉄道事業者等において、事業スキームを含めた事業計画について十分な検討が行われることを期待。」と記載がある。これを具体的に突き詰めるとどうなるのだろうか。図3は、川崎市における都市計画施設を掲載した地図のうち、読売ランド前駅付近を切り取ったものである。

図3都市計画施設のうち、読売ランド前駅付近を抜粋した地図

 この図によると、小田急小田原線や、隣接する県道3号世田谷町田線(通称「津久井道」)は都市計画施設として図示されている。一方で、小田急線の線路をもう2本増設する余地は付近に見当たらない上、県道の計画幅員(約20m)は、小田急線の無い側に向かって拡幅することになっているので、両者は一見すると無関係な事業、ということになる。とはいえ、小田急が既存の駅の直下に地下駅を築造しようとすると莫大な時間と費用を要する。この区間では踏切による渋滞が発生しているが、かといって駅を含む緩行線を立体化するには、県道の拡幅用地を何かしら活用せざるを得ない状況である。なぜなら、小田急線の真上には道路橋が何か所も存在するので、鉄道を立体化する意義は、少なくとも踏切解消という文脈上、意義が薄いのである。複々線化の文脈においては、県からの要望があることも事実だが、それに対する小田急電鉄の回答は下記のとおりである。
 「向ヶ丘遊園~新百合ヶ丘間の複々線化につきましては、輸送サービスの向上、周辺地域の生活利便性の向上に資する効果的な施策であると認識しておりますが、本事業には莫大な事業費が必要であり、当社単独による整備は事業採算上極めて厳しいと判断しております。」
 一方で、要望書の登戸~向ヶ丘遊園にある「川崎市施行の登戸土地区画整理事業(昭和63年9月都市計画事業認可)による用地の確保が前提となります。」といった、用地確保を前提とした記載が見当たらないことから、用地の確保を必須としない方法を何かしら検討しておく必要があるはずだ。
 これらの理由から、「急行線のみを地下化する」案に特化した記載を進めていくことにする。具体的な建設費や期間については、次回以降に改めて記載することにする。

 ところで、その「急行線のみ地下化」の費用負担と便益の帰着先は、それぞれどこになるのだろうか?踏切の除却が出来ない以上、「莫大な事業費」は鉄道事業者が一見負担するように見えるが、多くの割合を占めるはずの建設費は、加算運賃という方法で「受益者」から徴収することで、ある程度解決を図ることも出来るはずだ。また、朝の一部の時間帯のためだけに車両やその留置場所を増備するのは一見不可解な判断にも見えるであろうが、小田急が保有する車両のうち千代田線直通対応車の割合が低かったり、伊勢原市内に車両基地を移設する計画があったりと、中長期を見据えた判断は考えられないだろうか?さらに、この事業の主たる受益者は、その多くが川崎市内に属するように見えるが、答申第198号の図が多摩線延伸と同じであり、図を両者で使い分けることも出来たはずなのに、使い回されている状況から、鉄道事業者が懸念しているのは、延伸計画とセットで語らざるを得ないことなのではないか??
 いずれにせよ、興味の尽きない議題である。次回以降は、まずは事業費として見込まれている1500億円の妥当性から検証していくことを試みる。
 

2026年6月6日土曜日

東北新幹線の増発に向けた事前考察(1)

  東北新幹線の輸送力向上に向けた制約として、福島駅付近における単線区間の存在がしばしばその一因として挙げられる。これの解消に向け、山形新幹線福島駅上りアプローチ線新設工事(例えば:JR東日本ホームページ)が進行中であり、現時点では2026年度末の供用開始が見込まれている模様である。

 そこで本稿では、福島駅上りアプローチ線供用開始後の列車運転計画(以下、単に「ダイヤ」と呼ぶ)としてどのようなものが見込まれているか、事前に考察することを試みることにする。

 早速ではあるが、当方で想定している形を図で示したいと思う。

図1 東北新幹線 福島駅工事完了後想定ダイヤ

 コンセプトとしては、下記のとおりである。

 ①東京駅の発着ホームを統一、この図の場合は20・21番線が東北新幹線、22番線が上越 新幹線、23番線が北陸新幹線
 ②1時間を16等分(現在は15等分)し、東京駅の発着間隔を3分45秒(現在は4分)とする
 ③つばさ号を毎時2本、こまち号を毎時2本、等間隔で設定する
 ④つばさ号の宇都宮停車列車、郡山停車列車を分離
 ⑤仙台以北各駅停車の列車は、仙台以南の需要を可能な範囲で吸収できるよう、こまち号の直前を走るよう設定する

 ①は、東北新幹線が5方面に分岐しており、誤乗防止の観点、何より分かりやすさを重視する観点から設定したものである。このような設定を可能にするには、東京駅の発着ホームの数が4面であることから、運転本数を1時間につき4の倍数にする必要がある。このことから、②とセットで実施しないことには効果が薄くなるおそれがある。
 ②に関して言えば、2026年3月改正時点で、朝8時台、朝10時台はすでに3分45秒間隔となっており、物理的に設定可能な状態は整っていると考えられる。一方で、②の最大の制約条件は、折り返す際の車内清掃にかかる時間であり、その短さ故に「7分間の奇跡」などと称されるが、これをさらに45秒縮める必要があるのだ。実現可能性は総じて人手の問題に集約されるものと思われるが、すでに実現している時間帯もあることから、本稿では実現可能であることを想定して筆を進める。
 ③になってようやく、福島駅の上り線アプローチ線が完成することの意義が見出せるようになる。現状つばさ号は毎時1本が標準的で、2本目を上下どちらかに設定するともう1本が設定できなくなる関係性にある。単線であることを理由に、設定枠をこれ以上増やすのが厳しいのである。東京駅では、つばさ号はつばさ号として、こまち号はこまち号として折り返す必要があるので、上下線の対称性を崩さずに設定する観点から、つばさ号を東京駅毎時0分・30分発、こまち号を同15分・45分発として設定し、現在のダイヤパターンからの変更を極力少なくするように設定した。
 ④は、現状下りのつばさ号(毎時0分発)が、こまち号(毎時20分発)より20分早く発車し、福島駅でこまち号に追い抜かれていることを念頭に置いた記載である。③によりこれを15分に縮めようとすると、途中停車駅の宇都宮、郡山のいずれか一方を通過する必要が出る。郡山駅でこまち号に追い抜かれる選択肢もあるが、つばさ号のスピードダウンになるので、毎時2本に増やすことを前提に、どちらか1本を宇都宮駅、もう1本を郡山駅に停車させることを想定した。
 ⑤は補足に近いが、現状東京近郊と仙台駅との間の需要が大きく、その需要が速達便である、はやぶさ号・こまち号に需要が集中してしまうので、これを極力防ぐために、仙台以北各駅停車の列車が、こまち号のなるべく直前になるよう設定した。

 現時点で以下の点を考察しきれていないが、これらは冗長になるので筆を改め、次回以降にしたいと思う。

 ・北陸新幹線が15分間隔となることを受けた想定ダイヤ
 ・小山駅の停車時間が余ることとその対策
 ・つばさ号をE8系に統一することによる速達性向上をどこに織り込むべきか