2026年7月18日土曜日

東北新幹線の増発に向けた事前考察(2)

 前回は、東北新幹線の増便に関して、福島駅の上り線アプローチ工事完了後にどのようなものが考えられるか、推測することを試みた。今回はその成立可能性を具体化するため、北陸新幹線の列車運転計画に具体的に落とし込むことを試みた。ここでまず、前回登場させた案の「おさらい」をするため、一枚の図を用意した。
図1 東京駅新幹線ホーム使用状況想定図
外側から順に20番線(やまびこ)、21番線(こまち・つばさ)、22番線(上越新幹線)、23番線(北陸新幹線)

 この図は、円を時計の長針に見立てて作成したものである。一時間を16等分し、東京駅の20番線~23番線に等間隔に割り付けることにより、東京駅の発着ホームを統一することを念頭に置いたものである。北陸新幹線の場合は、毎時15n分0秒に東京駅に到着し、15n+11分15秒に東京駅を出発することになる。前回記事では東北新幹線(毎時15n分ちょうどに東京駅を出発)から先に示したが、現在のところは敦賀駅での在来線への乗り換えが存在することから、本来北陸新幹線から先に決めるのが筋だろう。正直に回答すれば、元から決めてあったのであるが、それを具体化するのに思った以上に時間を要し、このタイミングになってしまったのである。

図2 北陸新幹線想定ダイヤ 茶色の太線は、金沢以西の各駅に停車する便で、本稿では仮に「きらめき」と命名する。

 この形になった経緯を説明すると割と長くなるが、概ね以下のとおりである。
1.米原駅を発着するしらさぎ号の時刻を、現行どおりになるように決める。
2.大阪駅を発車するサンダーバード号の時刻を決める。新快速の前の30n+12分とする。
3.しらさぎ号に接続する側を各駅停車、しない側を速達便とし、敦賀発金沢(または富山)行きの時刻を決める。ここまでは現在とほとんど変わらない。
4.一番の肝は、東京直通便と在来線の特急を接続させない、正確には「待てば接続するが、つるぎ号に接続する方が所要時間が短くなる(乗換案内の一番目の解にしない)」ことに尽きる。このため、敦賀~東京の速達便は、速いほうのつるぎ号の直後に配置する。(※直前に配置することも選択肢の一つなのだが、東京駅の停車時間が11分15秒に収まらない結果になるか、5.の制約条件を満たさない結果になったので、不採用としている。)
5.もう一つ厄介なのが、速達便のサンダーバード号から東京直通の各駅停車(はくたか号もしくは、きらめき号)への乗り換えが成立してしまうことである。そこで、サンダーバード号が毎時2本いる時間帯は、加賀温泉駅もしくは越前たけふ駅で、速達便の通過をわざと待つことによってその組み合わせを消す
6.最後に、サンダーバードが大阪駅に到着する時刻を微調整し、30n+6分とする。
 この組み合わせを満たすのが、東京駅の停車時間の4つの枠のうち、「毎時15n分0秒に東京駅に到着し、15n+11分15秒に東京駅を出発する」なのである。

 余談だが、あさま号の停車駅は複数パターン試したが、結局のところ「安中榛名駅か本庄早稲田駅のどちらかを通過する」の、現行のパターンと同じ結果に落ち着いた。軽井沢駅まで逃げきれるのならそれに越したことは無いのだが、正直に言って厳しいと判断した。今後新車を開発するに当たっては、「碓氷峠での登坂性能」と「停車コスト削減のための加減速向上」とを両立することが課題となるのかもしれない。
 
 さて、東北新幹線系統の東京駅発着本数を毎時16本とし、東京駅の発着ホームを統一してしまうと、これ以上の増発はもはや難しいように見える。が、まだ続きがあるのにお気づきであろうか。具体的には図3に示したとおりだ。毎時16本しか入らないのは東京駅の折り返しの制約が原因であって、東京駅を使わずに列車を割り込ませることができればその限りではない。上野駅の19番線、22番線を折り返しに使うことで、大宮駅において2分30秒間隔を実現できるのではないか、という浪漫に満ちた案であるが、この具体的な中身に関しては、機会を改めて記載したい。

図3 東京駅において3分45秒間隔、大宮駅において2分30秒間隔を念頭に作図。上野駅の平面交差の向きの制約から、3枠に1枠の割合で不使用とした。

 終わりに このような作風にこだわることにはいくつか理由があるが、その一つとして、地方都市の交通(列車・バス)の運転計画を考えようとすると、最終的には新幹線の運転計画に行きつき、それが大概の場合は東京駅に起因する制約で決まっていることに行きつくことが挙げられる。新幹線開業前の上野駅においても、その容量の制約から結果としてパターンダイヤに近い形となっているが、その状況は現在も変わらないのである。新幹線の運転計画は、基礎自治体が手出し口出しできるようなものではないから、雲の上で決まる、というのが実感に近かろう。せめて、理路整然とした決め方がされ、納得して自ら進んで接続を取り得る形であって欲しいのだ。当方からのせめてもの願いなのである。

2026年7月4日土曜日

小田急線小田原線の複々線化(登戸~新百合ヶ丘)について考えてみる(2)

  前回の記事において、小田急線小田原線の複々線化(向ヶ丘遊園~新百合ヶ丘)について一定の記載を試みたものの、交通政策審議会答申第198号の目標年である2030年が迫る中、一定の動きが無く、実現可能性は極めて不明瞭ではないか、という疑念は否めない。ここでは、実現性や事業性の観点はいったん脇に置いて、いざ工事に着手した際、それがどれくらいの価格を要するか、に焦点を当てた記載とする。前回の記事同様、「急行線のみを地下化する」方針で記載していく。

 地下トンネルのうち、今回のケースへの適用が考えられる工法として、「シールドトンネル」と「NATM」の二つが考えられる。今回は工法どうしの比較ではなく、供用開始機に絞った議論をしたいので、前者に特化した記載とする。シールドトンネルの断面は一般的に円形であることが多いが、その内径として必要な寸法はどれくらいだろうか。例えば横浜高速鉄道(みなとみらい線)においては、外径の実績として単線7150mm、複線が10000mmであった。ここから想定すると、単線と複線では、径としては1:1.4、断面積としてはほぼ1:2と言えそうである。そうなると、トンネルの体積が単線:複線=1:2なら、単線2本と複線1本の工事費はさして変わらないのではないか?という仮説を得ることになる。そこで、単線2本と複線1本を比較することを議論の俎上に載せるため、単線2本の場合の断面図を描画してみる。

図1 新百合ヶ丘~向ヶ丘遊園駅 想定縦断面図

 この断面図は、以下を念頭に置いて記載している。
 ・単線シールドトンネル(外径約7m)を2本別々に築造する
 ・トンネル同士は1D(外径=約7m)離す
 ・向ヶ丘遊園駅付近には、(用地買収しない限り)2本同時にアプローチする場所が無いので、片方はホームのある場所で勾配を下る(駅に停車しない)

 単線でトンネルを2本築造するデメリットの一つとして、幅を取ってしまうので周囲の土地に対する地上権設定(平たく言えば、地下を含む土地の特定の高さに構造物を設置する権利の取得)を行う必要があることが挙げられる。このデメリットを可能な限り低減するため、あえてトンネルを縦に二段並べ、土被り40mを超過して以降(平成12年法律第87号(大深度地下の公共的使用に関する特別措置法)の適用範囲として考えられるもの)は1段とすることにより、武蔵野南線をくぐる際の高低差を少しでも低減することを意図している。 
 なお、この付近の地盤が固く、支持地盤が非常に浅い位置にあるので、支持層の10mしたという条件は満たすと認識して問題ないと思われる。

図2 生田駅付近の土質柱状図

 ではトンネル1kmの単価はおおよそいかほどだろうか。シールドトンネルの価格で主たるものは材料であるセグメントの単価であり、今回はコンクリートセグメント(二次覆工なし)を想定するが、1百万円/m(単線)、1.5百万円/m(複線)程度は要するものと思われる。また、土砂の運搬・処分費も相応にかかり、1m3あたり5千円ほどと仮定すると、単線で200千円、複線で400千円ほどかかると考えられる。また外径が大きくなると日進量も落ちるので、ここでは単線で約9m、複線で約6mであることを想定して記載する(もっとも、日進量はセグメントの生産スピードにも左右される。現場作業の多くをセグメント工場で分担できることに強みを見出せる工法でもあるのだ。)その場合の現場労務費は、これも単純計算は難しいが単線で30人、複線で45人(2班施工の2半分を想定)とする。トンネル作業員の神奈川県の単価は32千円であるから、1m当たりに換算すると単線で107千円、複線で240千円程度となる。むろん他にもシールドマシン製作費や機械経費等がかかるのだが、これら3つだけの足し算で、単線で1300千円/m、複線で2140千円/m程度となる。
 実際の工事費は、上記の直接工事費の他に共通仮設費、現場管理費、一般管理費等を足して出し、直接工事費の1.6~1.7倍くらいになることが多いのだが、今回の試算には直接工事費の一部が足されていないので、多めに見積もって上記の額の2倍とする。こうすると単線で2.6百万円/m、複線で4.3百万円/mとなる。今回のトンネルは約5.5kmにわたるので、単線で130億円、複線で220億円程度となる。
 むろんこの額には、新百合ヶ丘駅付近で発進立坑用地を築造する費用を含んでいないので、実際はもうすこしかかるのであるが、前回記事にて紹介した、交通政策審議会答申第198号において想定した事業費(1500億円)と比べるとずいぶん安い金額である。半分くらいというならまだ解るが、複線トンネルで比べても想定の5分の1にしかならない、というのは、いくらなんでも不自然な気がするのである。
 ところで、先ほど「単線2本と複線1本の工事費はさして変わらないのではないか?」という仮説を置いたものの、結果としてセグメントの価格差が2倍までは広がらなかったので、複線1本の方が安い結果となる。しかし、あえてそれでも単線2本案を残した理由は、先に単線1本を事業化する選択肢を産むためである。なぜここまでしたのかは、想定ダイヤを書かないと説明がつかないため、次回以降に改めて記載することとしたい。