2016年5月22日日曜日

札幌駅の配線について考えてみる(1)

いったい何人の読者がいるか分からないが,長らく放置している間,いろいろ書きたいことが増えてきた。久々に投稿する機会が出来たので,今日ここに投稿してみようと思う。

北海道新幹線が新函館北斗まで開業して以来,しばしば話題に上っている「札幌駅の配線」について,しばし考えてみることにした。とはいっても,都会育ちの筆者にとって,札幌駅は訪れる機会が少ないので,何となく実感の持てないまま筆を進めてしまっている感があるので,是非皆様からご意見等いただきたいところである。

新幹線の札幌延伸に当たってしばしば話題になるのが「札幌駅をどこに置くか」で,札幌駅の(現)1・2番線部分を新幹線に転用できるかどうか,議論の的になっている。ここでは,議論の細かい経緯には立ち入らないことにして,「今の3から10番線だけで札幌駅を回そうとすると,どこがボトルネックになりそうか」調べてみることにする。

まず,議論の前提となる札幌駅の配線図については,筆者が無理矢理デフォルメした図(下記)を掲載しようと思う。一応某ストリートビューで確認はしたつもりだが,間違い等あればご指摘いただければ幸いである。

見づらくてご迷惑をおかけします
図1:札幌駅の配線図(現況)

初めて駅を訪れる少年の心をワクワクさせる配線図なるものも,いざ書き出してみるといくつか特徴があるように見える。真ん中付近の3~8番線はかなり使いやすいように見えるが,それ以外の線路は一部の方向からだとその場では折り返しが出来ず,引き上げ線を通ってから折り返すことを前提に作られているように見える。9・10番線を札沼線に集中的に割り当てることが出来るのは,おそらく今の札沼線本線を(小樽側の引き上げ線を1本減らしてまで)作ったためと思われる。

さて肝心の容量に関する議論を行う際に必要と思うので,現況の列車パターンをある程度整理しておこうと思う。カッコ内は,一時間当たりの本数である。

特急列車
スーパーカムイ(1~2)
スーパー北斗・北斗・スーパーおおぞら・スーパーとかち・オホーツク・スーパー宗谷・サロベツ(不定)

エアポート(4)(うち2本は小樽行き・2本は札幌止まり)
いしかりライナー(2)(札幌~江別快速運転,岩見沢行・江別行1本ずつ)
いしかりライナー(2)(札幌~手稲快速運転,小樽行)

江別行(2),岩見沢行(1)
小樽行(1),ほしみ行(1)
千歳行(3)(一部は苫小牧行)

起終点の対応関係をあえて明示しなかったのは,後で組み替えるときに見やすくするためである。

さて,線路容量の足りる足りないについて議論する際に一番わかりやすい根拠は,「現行の配線の利用状況を調べて,同時に最大何本使っているか調べる」ことと思う。筆者も「鉄道ダイヤ情報」誌が一時期やっていたように丸一日分図示しようと思ったのだが,あまりにも時間がかかるため後回しにした。全国の鉄道ファン・あるいは鉄道趣味誌に先に実現していただけると勝手に期待し,筆者は独自にダイヤパターンを作ることに作業時間を割いた。

というわけで,筆者が勝手に作ったものだが,図示してみようと思う。

図2:札幌駅付近ダイヤパターン(筆者想定)略図

 鉄道ファンにとってダイヤ図と言えば縦軸が距離,横軸が時間のダイヤグラムと思うが,ここではあえて上に掲載したような図で議論を進めたいと思う。スイスではこのような図が広く用いられていて,各駅で接続がどのように取られているか一目でわかるようになっている。なお,スイスではこの接続を徹底するために,乗換駅同士の間の所要時間を,30分・1時間より少し少ないくらいになるよう調整し,速度が遅く達成できない区間に絞って速達化のための線形改良を行っているらしい。
個人的には,接続を「線」ではなく「面」で議論するときに適した図と思う。目的地が札幌一点に偏っていると有用性が100%活かせているか怪しくなってくるが,単に見やすいという理由であえて使ってみた。
図そのものや数字の意味を説明していなかったが,線1本が「1時間につき1本走る列車」を表す。4本あれば毎時4本走るという意味になる。線に数字が書かれているが,駅に近い方が到着時刻,遠い方が出発時刻である。○囲み数字は使用する番線だが,筆者が勝手に付け加えたもので,スイスで使用される図にはこの記述は無かった…はず。進行方向は,日本の鉄道に合わせて左側通行にしたので,たぶんどちらがどちらかご理解いただけるものと勝手に期待する。

まず見ての通り,快速エアポート(札幌どまり)をいしかりライナー(札幌~手稲快速運転)に付け替えている。現在のダイヤをお調べいただければ見ての通り,いしかりライナーは札幌を境に事実上別列車として運行されていて,札幌駅に長時間停車している。線路容量の限界について議論するので,「長時間停車は減らせるだけ減らして分かりやすくしよう」という方針からこのようにした。

次に特急列車について。珍しくパターン化されているスーパーカムイの発着時刻は,可能な限り現行のものをそのまま使っている。一方,千歳線内の特急列車については,1時間に4か所(要は,15分に1か所)走行できるスジを開けておいて,既存の特急を可能な限りこのどこかに当てはめる方針で書いている。とはいえ特に札幌行きの特急が遅れて南千歳に到着することは決して珍しいことではないと思うので,札幌方面の普通列車は特急がどこに突っ込んできてもある程度対応できるようにしておく必要が出るだろう(詳細は後述の予定)。南千歳までの所要時間は,せっかく30分弱で(一部の列車が)走っているのだから,ということで28から29分としてある。冬場は厳しい気がしてならないが,せっかくスイス式の図表を使ったので,見やすいようにしたかったというのもある。30分で物理的に走れない場合については,札幌側のパターンを優先的にそろえることを想定している。

あとは江別方面だが,いしかりライナーを毎時2本等間隔に置くことにした。今は20分‐40分の間隔で置かれているが,特急が1本のパターンと2本のパターンを両方とも考えるのが面倒だから,というだけで,特に深い意味はない。

発着番線は,以下のように割り振ったことになる。
3:スーパーカムイ(2),いしかりライナー(2)
4:エアポート(4)
5:千歳線特急(終着)(最大4)
6:千歳線特急(始発)(最大4)
7:エアポート(4)
8:いしかりライナー(2)
9:札沼線(3)
10:スーパーカムイ(2)

これだけ見ると案外余裕じゃないかと思いたくなるが,上の図には(札沼線を除き)普通列車が明示されていない。普通列車は合間を縫って隙間に入れることになるが,千歳方面に毎時4本,江別方面に毎時3本を想定しているのだが,いったいどこに入れるのかという感がある。詳細についてはこの記事の図に入れておいたのだが,特に4番線回りはかなり無理をしている。

さて,札幌駅のホームを可能な限り埋めないことばかり考えていると,各駅停車を手稲方面に毎時9本(千歳方面4本+いしかりライナー2本+江別方面3本)も入れることになる。もともと多すぎる気はしているのだが,仮に江別方面のうち1本を札幌の桑園側の引き上げ線で返しても毎時8本,快速が毎時4本いてかつ手稲まで待避不可能となると,形が勝手に定まってしまうような気がしている。

各駅停車も含めてダイヤ図にしたものが下の図である。3号から10号まであるが,札幌駅の使用番線である(9番線は札沼線用に空けてある)。別に阪急電鉄にあやかりたかったわけではなく,列車番号以外にスジ上に情報を出す手段が他に思い浮かばなかっただけである。


図3:札幌駅付近ダイヤパターン(筆者の勝手な想定)

この図だけ見るとかなり無理矢理ながらなんとか成立させているように見えるかもしれない。しかし,特急が札幌→手稲を回送する場所がないという致命的な欠陥があるので,まあ確かにホーム足らんわなとなるわけである。これを解消するには「そもそも手稲まで回送させない」「札幌から手稲のどこかに(西の里信号場みたく駅間でもいいから)待避可能な設備を追加する」「手稲方面行きの普通を何本か札沼線に突っ込む」のいずれかが考えられるが,手稲まで回送させない案はすでに琴似駅でカムイ号が実施しているし,待避設備の追加は大半が高架線なのもあってそもそも場所が見当たらないし,八方塞がりな感がある。正直なところ北側にホームを何本追加しようとこの欠陥が解消できないので,「北側にホームを追加しても,在来線への影響が大きく厳しい」という意見も一理あると思うところである。

こんな長ったらしい記事をここまでお読みの皆様が,「そもそも9番・10番線の使い勝手は何とかできないのか」「江別行は札沼線に直通できないのか」などといった考えをお持ちでも,不思議ではないと思う。線路の改良を伴う記述について,今回は見送り,次回書きたいところである。機会と皆様からのご期待があれば。