2017年12月3日日曜日

札幌駅の配線について考えてみる(6)

 前回記事を起こして以来3か月が経過したが,札幌駅新幹線ホームの建設位置問題については様々な報道があり,その一つに,「杉山淳一の「週刊鉄道経済」: 北海道新幹線「札幌駅」地下案はダメ、ゼッタイ!」がある。同記事は明確に「現駅案」を主張しているが,経緯に関しては同記事より詳細に立ち入らないことにする。本記事は今まで通り繰り返してきた,「在来線列車は現在の3~10番線のみで対応可能」という方向性を保ちつつ,より具体的な議論を深めたいと考える。

 前々回記事では,快速エアポート号の12分間隔(毎時5本)運転を前提としたとき,千歳線のダイヤパターンがほぼ2通りに絞られることを記述した。これは,南千歳~新千歳空港が単線であることで,エアポート号同士が行き違い出来る場所に強い制約があるためである。当該記事では,新千歳空港駅での停車時間が12分の案(千歳駅南方で行き違い,以下「12分案」)と17分の案(南千歳駅構内で行き違い,以下「17分案」)の2通りに絞り込んだが,この時点では貨物列車の運転計画を具体化していなかった。今回記事ではまず,貨物列車の具体的な運転計画を織り込むことから記述していこうと思う。

 ここで重要になるのが,貨物列車が札幌貨物ターミナル駅(本記事のダイヤ図では擬似的に,平和駅の真横として描画している)と新札幌駅との間を走行する際の所要時間である。距離にして約3kmであり,最高速度が(分岐器の関係で)45km/h程度であることを考慮すると,平均35~40km/hが精いっぱいと思われ,5分30秒~6分程度と推測できる。この区間の多くが単線区間であるためダイヤ作成上の制約が大きい。単線区間の最小運転間隔は走り抜けるための所要時間の2倍とほぼ等しいことから,仮に貨物列車を12分間隔で走らせようとすると,「出来なくはないが,ダイヤを綿密に設計する必要がある」ことが分かる。貨物列車が新札幌~千歳を平均80km/hで走行すると仮定して以下図1,図2のように検討した結果,「17分案」では「追いつかれないように」配置することが困難と判明したので,以降は「12分案」をベースに検討を進める。

図1:12分案
図2:17分案。エアポート号と貨物列車が新札幌駅付近で接近しすぎるため,今回は採用を見送った。
図1を見ると,特急列車と貨物列車が毎時「合計」5本まで走れることが分かる。エアポート号とエアポート号の間の12分間に特急と貨物を1本ずつ入れると,特急が貨物に追いついてしまうため,合計6本以上走らせることは非現実的と思われる。とはいえ,札幌(貨)~新札幌の単線区間や,そのアプローチ部での平面交差をあらかじめ回避するようダイヤを組んでおけば,上下線それぞれで「特急と貨物列車が毎時最大合計5本」まで走れることになる。現状,特急列車が毎時合計最大3本程度(北斗+すずらん+おおぞら)で,貨物列車が最大2~3本であるから,調整次第で現状の需要に十分耐えられるものであると考えられる。


 ところで,この記事では今まで,札沼線についてあえて見逃してきたのだが,ここに来て大きな問題が生じている。それは,札沼線の運転間隔が13分を下回る場合,札沼線用のホームが2線分必要になることである。
 具体的に検討してみよう。札沼線が札幌~桑園を走行するのにかかる時間は,市販の時刻表を見たり実際に走る列車を観察したりと思案した結果,3分ちょうどと仮定することにした。ある列車が桑園駅を出てから札幌駅に着き,7分の折り返し時間を経て再度桑園駅に戻ってくるのにかかる時間は3+7+3=13分である。札沼線の運転間隔が13分を切る場合,札沼線専用のプラットホームが2線分必要になる。これが12分サイクルを仮定している千歳線ダイヤと非常に相性が悪い。今の15分間隔(エアポート号が毎時4本)のダイヤなら調整できなくもないだろうが,毎時5本にすると決めてしまった以上,札沼線のホームを1本しか置かないことに現実味が無い。
 札沼線と函館本線の間では線路が独立しているため,相互に調整する必要はないのではないか,という意見もあろうが,下図の通り,手稲側から札幌駅の8~11番線に入線する列車と札沼線の列車とが線路を共有していて,これらが相互に支障し合わないようダイヤを調整する必要がある。

図3:赤い太線で示した個所が,今回ボトルネックとなっている。点線は線路を撤去した跡。
このような配線になった原因の一つは,現在札沼線が使用している単線区間がもともと函館線の下り本線で,いまの下り本線がもともと引き上げ線だったことに起因していると考えられる。当時の配線は,札沼線が函館線ないし千歳線と直通することを考慮していたようにも見えるが,今更引き上げ線を復活させ,直通運転を検討するのも困難なので,いまの配線をどう改良するか,考察したいと思う。
 手稲側に向かう列車を3~5番線の3本で捌くことを考える時,少しでも札幌駅での停車時間を減らすため,白石~手稲での無待避を仮定し,ここから逆算してエアポート号の停車時間を6分取ったのは前回記事に記載した通りである。ところが苗穂側に向かう列車で無待避を仮定すると,その区間が手稲~上野幌と非常に長くなってしまい,エアポート号の停車時間が8分にも及ぶ。あまりプラットホーム削減に寄与しないと判断して無待避の仮定を諦め,札幌で緩急接続を行うことにした結果,1本余分にホームを使う(6~9番線)ことになったため,札沼線が使用できるのは10番線と11番線のみになってしまう。札沼線のダイヤを12分間隔を仮定した千歳線のダイヤとなじむよう調整する際に一番手っ取り早いのは,11番線にプラットホームを新設することである…と言いたいところだが,大規模な土木工事になるし,今ある建物の立ち退きが間に合わないと報道する向きもあるようなので,これも現実的でないということになる。 おまけに,北側に何本プラットホームを新設しても,図3で示した箇所のボトルネックは解消しないのである。
 しかし,「札沼線の運転間隔が13分を下回る場合,札沼線用のホームが2線分必要になる」のは,よくよく考えると「桑園~札幌が単線である」ためである。札幌と桑園の間で行き違いが実施できるならその限りではない。筆者なりに色々と検討した結果,以下の案が浮上した。

図4:配線改良案のひとつ
図では,桑園駅に渡り線を2か所追加しているように書かれているが,案の本旨を実現するためなら片方だけで十分である。桑園駅東側の片渡り線を両渡り線に改造できれば理想だが,それが難しければ,駅西方で過去に撤去した渡り線を復活させるだけでも大きな効果がある。何のためにこんな案を出したのかと言えば,函館本線の下り線に札沼線の上り列車を乗り入れさせ,札沼線の運転間隔を短縮するためである。三線運転で真ん中の線路だけ向きが違う,半ば右側通行のような事例は筆者も見たことが無いが,出来ないことはないと考える。

 ここまで色々と検討してきたが,これを一つの図にまとめると以下のようになると考えれられる。一番混む時間帯は毎時55分頃で,すべてのプラットホームに出番がある。次に混む時間帯は毎時30分頃で,5番線を除きすべて使われてしまう。
図5:毎時何分に何番線がどの列車に使われているか示した図(雑)

 上記のパターンを仮定すると,以下のような改良工事があれば,ダイヤ乱れ時にも対処しやすいと考えられる。
 ○発寒~発寒中央付近に,待避設備か引き上げ線を整備する。地平区間のため高架橋の大規模改修も不要だし,上に架かる道路橋の橋脚スパンも線路4本分はゆうに確保してあるように見受けられる。その効果として,各駅停車用のプラットホームが8番線1本で済む(9番線が浮く)ようになることが挙げられる。
 ○札幌駅3~6番線の場内閉塞を,プラットホームの真ん中で二つに分割する。札幌駅での追い出し間隔をなるべく詰めるとともに,現状9両編成の普通列車は無いため,詰みを減らすために2本縦列停車させることも(物理的には)可能になる。3~6番線に限定したのはプラットホームが長いためである。
 逆に,以下のようなケースでは,上記のパターンは破綻してしまう。「こうならないように組む」しかないのが現状である。
 ×12分間隔で,二本連続で苗穂方向に回送する必要が出た場合。
 ×すずらん号が毎時55分付近の一番混む時間帯で,ホーム上折り返しになった場合。

 ダイヤ図を大きく出して検討する作業は,今回の記事で一通り済んだと考える。手元には特急列車の想定ダイヤ(2020~2030年)も用意しているが,蛇足であると判断し今回はあえて掲載しないことにした。次に筆を起こすのは,札幌駅新幹線ホーム建設位置の問題について,より具体的な報道があるのを待ってからにしたいと思う。
 
 
 

2017年8月27日日曜日

札幌駅の配線について考えてみる(5)

 前回の記事では,快速エアポートの毎時5本運転を想定し,その際組まれる千歳線のダイヤパターンが二通りに絞られることを中心に記述した。今回は,これを函館本線(小樽~旭川)のパターンと接続させる。札幌駅の配線問題に立ち返り,「札幌駅到着列車は3から5番線のみを使用」でダイヤパターンを作成できるかどうか,考察を行う。
 結論から言うと,「可能」である。しかし,列車遅延時に運用するには非現実的なものとならざるを得ないため,列車遅延時に運用するために必要性の高い設備を「どの場所に」「どのようなものを」置くか,併せて考察する。

 まず第一に,毎時4本から5本に増発するエアポート号の行先についてである。現在15分間隔で運転されるエアポート号を最小の運用数で回すためには,以下のように合計10編成必要であると考えられる。
小樽10:00→11:12新千歳空港11:30→12:47小樽13:00
3時間÷30分間隔=6運用
札幌10:20→10:57新千歳空港11:15→11:52札幌12:20
2時間÷30分間隔=4運用

 一方,増発するエアポート号は毎時1本である。エアポート用車両発注 JR、増発に向け24両なる記事が正しければ,一周最大4時間かけることが可能である。ここでは,新規に増発するエアポートを小樽方面に(区間快速として)直通させ,現在毎時20分に小樽駅を出ている各駅停車を置き換えるものとして想定する。こうすることで,札幌~手稲間の快速は毎時5本となり,12分間隔で運転できる。

 次に,函館本線の旭川方面列車が,毎時何分に札幌駅を出発し,毎時何分に札幌駅に到着する必要があるか整理する。

表1:函館本線旭川方発着時刻

特急 (区間)快速 各停
札幌駅到着 25,55 03or13,43 19,3X,53
札幌駅出発 0,30 15,40 03,23,46

 現在,函館本線の区間快速は札幌を境に東西に分割されているため,小樽方面の区間快速は毎時何分に到着・出発しても問題ない。そのため,自由にダイヤを設定できるように見えるが,以下のような問題が生じる。
 先に大きい問題から述べるとすれば,「札幌~手稲に待避設備が一つも無い」ことである。小樽方面列車が3番線から5番線の3本しか使用できない制約からすると,旭川方面から札幌駅に到着した各駅停車や区間快速が,ただちに小樽方面に発車する必要がある。これに加えて,後ろの快速列車を邪魔せずに走行するためには,表1を見ながら,小樽方面の快速と各停を毎時何分に出すかあらかじめ決めておく必要がある。上記毎時5本の区間快速・普通列車の中から毎時二本小樽行きを出そうとすると,毎時20分・56分に小樽行きを快速として出すのが自然である。残り3本(毎時8分・32分・44分)はエアポート号を小樽行きとして出すことになるだろう。
 なお,表1の制約はよく見ると,札幌駅到着時刻の制約の方が厳しいのだが,原因は厚別駅で上り特急列車の通過待ちが出来ない(※厳密には出来ないことはないが,特急列車の大幅な減速を伴う)ことにあると考えられる。
 次に,エアポート号が札幌駅に停車している時間の長さを決めるのだが,空港発のエアポート号は白石駅~手稲駅を無待避で走り抜ける必要がある。12分間隔となると手稲の手前で各駅停車に追いついてしまうため,ここから逆算してエアポート号の札幌駅停車時間を6分取る。
 ここまでの内容だけで,小樽方面のダイヤは「ほぼ」図1の一通りに固定されると考えられる。

図1:小樽方面パターンダイヤ図
 算用数字は「札幌駅のプラットホーム」を表すが,一部8番線に直接付けているものが見受けられる。これは,札幌駅桑園側の引き上げ線が1本しかなく,そもそも不足しているだけでなく,これを快速エアポートに充当すると,普通列車が折り返す引き上げ線が無くなってしまうため,無理矢理8番線の上でそのまま折り返させている。琴似駅にも引き上げ線があるが,現状カムイ・ライラック号が使用しており,本記事でもカムイ・ライラックが使用することを想定する。
 一方苗穂側はと言うと引き上げ線が1本あり,かつ苗穂駅構内にも2本あるのだが,札幌駅で方向転換している間に次の列車が来てしまう状況では正直使いづらい。本記事では苗穂側の引き上げ線を,千歳線の特急列車に充当し,平面交差による支障を少しでも低減する方向で考えている。これには,手稲回送をなるべく減らすという効果もある。現に,図1では一部の特急列車(毎時30・54分)で手稲回送のスジを確保できておらず,一本後ろのスジに乗せるか,やむを得ず苗穂側に回送するか,いずれかを強いられる。もっとも,手稲回送の設定自由度が低い原因を突き詰めて考えると「札幌~手稲に待避設備が一つも無い」に尽きる気がしてならないのだが…
  これを基に,小樽・手稲方面を発車する列車を重ね合わせ,ダイヤパターンを作成する。エアポート号が新千歳空港駅に着く時間帯によって2通りに場合分けでき,小樽→札幌の快速列車5本の「どれをエアポート号,どれを岩見沢方面直通」にするかで5通りに場合分け出来るため,理論上は10通りのダイヤが考えられる。10通り作る作業には正直に言って骨が折れたが,折り返し運転の効率が良いものを以下に2つ抜粋し記載する。
図2

図3
 図2・図3案にはそれぞれ長所・短所があると考えられ,以下表2にまとめる。

表2:図2・図3案比較表

図2 図3
長所 ○新札幌駅付近で快速同士がすれ違うため,新札幌駅付近の平面交差にあまり関係なく貨物列車を入れやすい
○南千歳駅付近で特急同士がすれ違うため,南千歳~駒里(信号場)で詰みが生じにくい
○新札幌付近の平面交差に関わらず,貨物列車を設定できるスジが確保できる
○快速列車の小樽・札幌・新千歳空港駅折り返し時分が可能な限り長く取られていて,遅延に比較的強い
短所 △平面交差の関係で,空港行きのエアポートの遅延が,そのまま空港発のエアポートに伝播する △南千歳~新千歳空港の線路が常時埋まっている状態になるので,千歳線の札幌方面の遅延が,そのまま空港行きのエアポートに伝播する

 これらパターンで考える限り,札幌駅の到着ホームは3~5番の3本でも可能という結果となる。しかし,きわめてダイヤ設定の自由度が低い状態なので,遅延したときまで含めて考えると依然として以下が課題として残っている。

○札幌~手稲に待避設備が一つも無い
○札幌駅桑園側の引き上げ線が不足している
○厚別駅で上り特急列車の通過待ちが出来ない

 札幌駅新幹線ホームの現駅1・2番ホーム案を支持するには,以上の課題を解決する方向へと適切に誘導する必要がある。特に上の2点は致命的であり,発寒駅もしくは発寒中央駅,あるいはその付近の改良工事は「現駅案」実現のために必須と見て良いだろう。

 札沼線との交差支障問題,札幌駅での縦列停車,札幌駅への亘り線追加等の問題について記述できていないので,体力気力が残っていれば,次回また筆を起こそうと思う。

  

2017年8月21日月曜日

札幌駅の配線について考えてみる(4)

 今回長い中断期間を経て再び札幌駅の配線問題を取り上げたきっかけは,2017年6月2日付の北海道新聞にて,エアポート用車両発注 JR、増発に向け24両なる記事が掲載されたこと,同8月8日付の同新聞にて,新幹線ホーム位置、検討長期化  札幌「現駅案」 利便性優位も在来線に支障なる記事が掲載されたことである。引用する割には中をよく見ていないのだが,何度も話題となっている札幌駅の新幹線ホーム位置問題に関して,改めて筆を起こしてみようと考えた。今回は,「快速エアポートを毎時5本に増やすことを想定し,具体的なダイヤパターンを作成すること」「「現駅案」に落とし込もうとした際,具体的にどこがネックとなるか明らかにすること」を目指そうと思う。

 まずダイヤパターンを作成する際の前提として,「特急・快速共に12分間隔」「特急の停車駅は札幌・新札幌・南千歳・苫小牧」とする。次に,列車同士の最小間隔を決める。具体的には,「先発列車の発車から次発列車の到着まで,同一ホームの場合は2分30秒」「待避駅での待ち合わせの場合は,緩行列車の到着から1分45秒後に優等列車が到着,優等列車の発車後1分30秒後に緩行列車が発車」「待避駅での通過待ちの場合は,緩行列車の到着から1分30秒後に優等列車が通過,その通過後1分15秒後に緩行列車が発車」のように決める。これらの値と,いわゆる標準運転時分の間で適宜加減算を行い,以下のような表を作成する。

表1:千歳線優等列車同士最小運転間隔表
上段:先発特急,後発快速
下段:先発快速,後発特急
「自駅の」「発時刻(または通過時刻)同士を」比較し,10分を超えるものは省略。
自\至 札幌 白石 上野幌 北広島 島松 ビ庭園 千歳 特急と快速との間の
所要時間差及び要因
札幌


07'00"
08'45"






白石 05'00"
05'00"







上野幌




05'30"
05'45"
06'45"
08'30"



北広島 00'00"
00'00"
07'00"
07'45"



05'30"
06'15"
08'45"


北広島快速停車+01'15"
島松
08'15"



05'30"
05'30"

06'45"
07'30"


サッポロビール
庭園



08'45"

06'30"
08'45"

05'45"
06'00"
恵庭快速停車+01'30"
千歳




07'00"
07'45"

千歳快速停車+01'30"

 この数字が大きいほど,優等列車同士の間隔が開いてしまう,悪く言えば詰め込みが効かないことを意味している。隣りあう待避駅同士で比較すると,上下線問わず島松~サッポロビール庭園間の数値が大きく,ダイヤ編成上のボトルネックになりがち,と考えられる。
 文字だけだとイマイチ説明が分かりづらいが,要は下の図1のようなダイヤを試しに書いた時の,優等列車同士の時間間隔を整理したものである。
図1:千歳線優等列車最小間隔(案)
 隣り合う区間同士で足し合わせた時に12分程度の値を取る組み合わせ(表1の着色部)を探し出すことが,12分サイクルで特急と快速が交互に出るパターンを組む際の第一歩である。図1を眺めて12分間隔が作れそうなところから抜粋する,というのもアリである。例えば,表1で着色した組み合わせで説明すると,おおよそ
赤色:7分30秒+5分45秒-1分30秒=11分45秒
青色:5分30秒+7分00秒-1分15秒=11分15秒
 間隔で優等列車が走行できる,と計算できる。各パターンを具体的に文字に起こすと,
赤色:島松で快速通過待ち→サッポロビール庭園で特急通過待ち→千歳で快速待ち合わせ
青色:島松で快速通過待ち→北広島で特急通過待ち→白石で快速待ち合わせ
となる。ほかにも探せば組み合わせはそこそこたくさんあるのだが,12分間隔で運転すると特急が快速に追いついてしまうので,上記のパターンを基に組み始め,時間が足りなくなったら同時に2本待避する,という条件で編み上げてみる。すると,

図2:千歳線ダイヤパターン図(想定)
 この図2のようなパターンが得られる。このパターンの上下線を貼り合わせる際は,新千歳空港に快速エアポートが到着してすぐに,快速エアポートが出発することを想定した。次に,下り線の一部列車を平行移動することにより,以下図3のようなパターンも作成できる。
図3:千歳線ダイヤパターン図その2(想定)
 これ以外の考え方でも一見作れそうなものだが,エアポートの停車時間を縮めようとすると折り返しの7分が確保できず,かと言って長くしようとすると千歳~南千歳で快速同士が交錯してしまうため,ほぼこの2通りのパターンしか作れない。偶然にも,札幌貨物ターミナルから苫小牧方面に出発する貨物列車との交差支障も発生しにくい。新札幌駅付近で「札幌を出た貨物列車」と「札幌行きの旅客列車」が平面交差することがしばしば問題視されているが,「苫小牧方面の各駅停車がいない隙にそのスジに乗る」「平面交差は,札幌行きの特急ないし快速が新札幌に停車している間に済ませる」ことで妥協せざるを得ない。「立体交差化すれば千歳線の増発が可能になる」という趣旨の意見をしばしば見かけるが,個人的にはあまり変わらないと考えている。それよりは,白石駅の配線を改良して札幌~白石で走行中追い抜きを実施することで,ダイヤパターンの自由度を上げる方が効果があるように思う。

 ここまで,いわゆる千歳線の札幌~新千歳空港のダイヤパターンを作成することを試みてきた。現況の設備で12分間隔のダイヤパターンを組もうとするとほぼ2通りになってしまうことが分かったため,今後の議論は,このパターン(あるいは,上下線同時にこれを平行移動した形)を前提に進めていこうと思う。

 ※「他にもっと良いパターン思いついたぜ」という方は,ご遠慮なくお寄せ下さい。
 

2017年7月10日月曜日

快適通勤ムーブメント「時差Biz」実施に関する事前考察(終)

図1:時差Bizの公式ポスター
現職の都知事が「満員電車ゼロ」を公約として掲げて以来,筆者は「早朝時間帯の列車本数を増やすべきである」と繰り返し主張してきた。様々な事情から実現困難である一方,その「事情」は「(線路・駅・車庫の容量など)物理的な理由」では無い,と筆者は考えている。今回の記事はこれまでの記事とは趣向を変え,「鉄道事業者が万難を排して早朝時間帯に本当に増発を行った場合,それでも時差出勤が定着しないとすると,その理由は何か?」に焦点を当てたいと思う。

 まず過去に「時差Biz」に似た取り組みが無いか,その失敗原因は何か,という点に着目しよう。調べてみると驚くほど多くの取組があることに気づかされるのだが,今回はひとまず「ズレ勤」「北海道サマータイム」あたりに絞って検討してみようと思う。
 「ズレ勤」に関して筆者がすぐに手に入れられる資料は「平成14年度オフピークキャンペーンについて」くらいである。ここで登場する「快適通勤推進協議会」の名が登場する資料のうち,
規制改革・民間開放推進会議 土地住宅分野に関するヒアリング 国土交通省提出資料平成17年11月11日(金)国土交通省鉄道局業務課 (※リンク先PDF1.3MB)」は,資料の直接の目的には関連しないものの,内容に「時間差運賃により通勤時間帯の需要の分散を図ること」が挙げられていることは興味深い。このうち,通勤手当という形で実質的に運賃を負担している企業(≒使用者)側からの意見として,「既に可能な範囲においてフレックスタイム制や裁量労働制等の措置は実施しており、お客様対応、商慣習、労務管理上等の問題を勘案すると、これ以上始業時間を動かすことにより通勤時間帯を広げることは困難(フレックスタイム制等を導入している企業は約2割)」「通勤手当は実費で支給しており、ピークロードプライシングは企業にとってコスト増となる。」
といったものが得られている。また,企業に対して実施されたアンケートでは,「時間差運賃制実施時の対応行動については、ピーク時運賃を現行の1.3倍にするケースで勤務制度を変更するとした企業は約4%にすぎず、3倍とするケースでも変更するとした企業は約25%にとどまる。」といった結果が得られている。
 「北海道サマータイム」では,「平成18年度サマータイム導入実験の実施結果について」にて,実施されたアンケートの結果が掲載されている。例えば,出勤時刻の繰り上げに関わらず退庁時刻が従来と同じになった理由として「仕事の相手方が、サマータイム対象者でないため帰りの時間が同じであった」などが挙げられている。
 北海道では夏季時間帯の日の出時刻が,東京では想像のつかないほど早く(時期によっては3時台) ,かつ夏至が近づいても(東京ほど)曇天・雨天に当たることが少ないため,サマータイムの導入には適していると言えるし,寄せられた反対意見は時差Biz実施に際して参考になるはずである。現に時差Biz実施に当たって知事自ら(第1回快適通勤プロモーション協議会で)「このムーブメントを成功に導くためには、企業、鉄道利用者の皆さまにも同じ意識を持っていただき、一斉に取り組みを進めていくことが肝心」と述べている点は,過去の失敗を踏まえたものと言えるだろう。
 
 さて,鉄道事業者,(時差通勤の旗振り役となる)役所側の立場について書いたところで,この取組に協力する側である企業側(以下,使用者)と従業員側(以下,労働者)それぞれにとってどのような負担が生じるか考察してみよう。そこで,まず以下の図をご覧いただきたい。平成27年大都市交通センサス首都圏報告書(PDF8.48MB)の98ページ,図Ⅲ-24から抜粋したものであるが,


図2:時刻別移動比率、始業時刻構成比(H27大都市交通センサス首都圏報告書より)


 これを参考に以下の表1を作成する。朝8時から9時にかけて,企業が始業済みである割合と比べて,従業員が出勤済みである割合の方が20%近く高いことが分かる。大雑把に言って5~6人に一人が,出勤時間帯より前に1時間サービス残業をしている計算になる。早出出勤を制度化することは,上記のサービス残業に対して残業代を払う(少なくとも,従業員から請求される)ことと等価であり,使用者が制度化に後ろ向きになるのも当然である。「早出残業」という概念は無いのか,という疑問も当然浮かぶであろうが,2013年頃に伊藤忠商事が朝型勤務を導入した際,早朝に超勤手当を認めた事例がもの珍しく報道されたあたり,最近ようやく権利として認められた概念である,と考えられる。翻って言えば,ほぼ大半の企業において,従業員が早出出勤をしても,残業として認められていなかったのでは,と推測される。

表1:時刻別移動比率(出勤済のみ),始業時刻構成比(積み上げ)
時刻 出勤済み従業員割合 始業済み企業割合
07:00 2% 1%
07:30 7% 2%
08:00 20% 6%
08:30 47% 27%
09:00 75% 75%
09:30 88% 90%
10:00 94% 99%
10:30 96% 100%

 企業の使用者側に言わせれば,「通勤ラッシュの回避は,使用者が指示しなくても労働者側はすでに自主的に実施しており,出勤時刻を繰り上げても(混雑緩和に)大した効果が無いし,かえって残業代支出が増える」ということだろうか。この理屈からすると,企業の使用者側の立場では,「早出残業を認めず,出勤時刻を繰り下げる」 方が,実態として協力しやすいように思われる。
 さて,これまでの議論は「残業代が全額支払われている」という仮定の下で行われてきたが, 残業代を踏み倒している企業や年俸制を採用している企業に関してはこの限りではない。こういった企業の使用者にとって,出勤時刻の繰り上げは特にデメリットにならない。つまり企業の使用者は,残業手当に関する自社の実績に合わせて出勤時刻の繰り上げ・繰り下げを使用者の都合のいいように選択できると考えられる。

 これまで使用者の都合ばかり書いてきたが,企業の規模がある程度大きければ,社員の一定割合を早出・遅出出勤に振り替える,などして従業員の「ダイバーシティ」を尊重する選択肢を取ることも可能である。残業手当の問題も,早出・遅出それぞれの社員の割合をだいたい同じくらいに設定できれば,社にとってそこまで大きな問題にはならないであろう。ここからは,残業代の支払いという使用者側の問題がクリアできる比較的規模の大きい企業を対象に,従業員(≒労働者)が時差出勤に協力できない理由について考察してみたいと思う。

 とは言っても,筆者はここで理由をあえて一つしか挙げない。それは育児に関わる時間制約である。以下,中学生以上の子供は自宅の鍵を閉めて自分で登校でき,小学校の多くは給食が支給されることから家事の負担が比較的少ない,と勝手に仮定し,未就学児の子供を持ち,両親共働きの家庭に絞って議論を進めていく。
 まず,幼稚園には夏休み・冬休みがあり,(義両親との関係性が良好な場合は別として)これらの時期に共働きを維持することが難しいため,議論の的は事実上保育園一つに絞られるだろう。ここで,保育園の開園時刻をご覧いただきたい。東京都世田谷区同北区を例示するが,両区いずれにも,朝7時より前に開園している保育園は無い。時差Bizの実施に伴って出勤時刻を繰り上げようにも,保育園が開園しておらず子供を預けられない,というのはかなり致命的な問題である。前回記事で「早朝時間帯に列車を増やせ」などと以下の図3を作ってまで主張した割には,早朝時間帯の列車ということで朝7時には都心に着いてしまい,保育園の開園時間帯と相性がとても悪いことに気づかされる。
 
図3:前回記事で増発可能性を探った際の図。どの列車も都心に着くのは,保育園が開園していない6時台後半である。
 無駄に大きなダイヤ図を挟んだところで,この問題に対するアプローチの方法は大きく分けて二つあるだろう。一つは「夫婦での分業」,もう一つは「オフィス直結の保育園(以下,託児所)」である。
 夫婦での分業は,簡単に言うと父母の出社時刻をあえてずらし,「出社の遅い側が子供を保育園に預け,早い側が引き出す」というものである。比較的混雑の激しい時間帯を男性が担当すれば,N+1人目を身ごもった女性との分業も比較的スムーズだろう。そういった意味で,社内結婚の方が時差出勤に関する理解を得やすいと思わないでもない
 一方託児所と言う案は,そういった設備を持つ企業に対象が限られるが,効果はかなり大きいだろう。というのも,託児所に通わせる場合,子供の電車賃はかからない(≒通勤手当の範囲に収まる)。また,父親が担当すれば母親が弟妹を身ごもっていても影響は小さい。ただし,子供が車内で騒ぎ出す可能性や,ベビーカーが場所を取ることを考えると,比較的年齢の高い子供が現実的,と考えられる。
 小学生に満たない子供が朝の通勤電車で一方の親と一緒に通勤(?)する姿を観測することがあるが,そのODはかなり高確率で蒲田・大森・大井町→東京である。不思議なことに東海道線ではほとんど見かけない(ディズニーランドに遊びに行くと思しき親子の方がはるかに多い)し,京浜東北線の新橋で下車する乗客の中にもまず見かけない。あまりにも朝が早すぎる・移動が長すぎると子供がついて来られない,という事情なのか,新橋の企業と東京の企業の間で取り組みに温度差があるのか,偶々なのか,真相は果たして…?

 長ったらしく書いたが,鉄道事業者が仮に早朝に増便したと仮定して,それでも時差出勤に協力できない事情に関して推測を試みた。使用者側の都合に「残業代支出」があり,それがクリアできる比較的規模の大きい企業であっても,労働者側の都合に「保育園の開園時間」があるのでは,ただこれを書きたかっただけである。

 内容の長さの割にあまり実りが無かった気がするので,この事前考察はこれで終わりとし,今後の時差Bizの動向を見守ろうと思う。





 

2017年7月8日土曜日

快適通勤ムーブメント「時差Biz」実施に関する事前考察(4)

 2017年7月2日の都議選で,現知事率いる都民ファーストの会が議席の数を大幅に増やしたことは記憶に新しいが,知事公約の一つ「満員電車ゼロ」を具現化すべく取り組まれてきた「快適通勤ムーブメント「時差Biz」」の実施期間が7月11日と迫ってきている。公式ページの更新や駅へのポスター・広告等掲示,快適通勤プロモーション協議会(第2回,7月6日)の実施など,機運が高まっていることが伺える。
 さて2017年7月7日のこと,ポイント付与以外に明確な立場表明を行ってこなかった(とされる)JR東日本が,同年10月14日に実施するダイヤ改正の内容を明らかにした。詳細は「2017年10月ダイヤ改正について(2017年7月7日)(20170713.pdf)」に譲るが,主な内容として「常磐線の品川駅直通列車(特急・普通列車いずれも)増加」「朝通勤時間帯10両編成の15両編成化」「黒磯駅信号・電力設備改良工事に伴う新白河駅折り返し運転の開始」が挙げられる。在京鉄道ファンの話題は新白河駅での折り返し運転や車両運用に持って行かれてしまったものの,朝通勤時間帯10両編成の15両化による効果はきわめて大きい。これにより,東海道線の上り列車は東京着9:50の列車まですべて15両編成に統一され,混雑の緩和が期待できる。PDFのタイトルからして,公表を時差Bizに間に合うよう調整したように見受けられるが,結局増発は時差Bizに間に合わないので,あまり気にしてはいけない。

 一方,筆者の過去記事「ゆう活と時差出勤と増発と」にも記載したが,東海道線新橋駅に到着する上り列車が,7時以前で3本,7時から7時半の間も3本と極めて少なく,現時点でも混雑が激しい。7月6日の協議会によると,時差Bizの協賛企業の数はおよそ230社とされ,どの程度の乗客がピークを避けて乗車するかが未知数なのだが,この本数で支えきれるかどうか不安に感じるところである。
 鉄道事業者が時差Biz期間中(およびそれ以後)に実施する取り組みが一通り出そろったところで,鉄道事業者にとっての課題である「早朝時間帯の増発」について,東海道線・高崎線・宇都宮線(以下,上野東京ライン)を題材として考察し,風呂敷を広げすぎてまとまりの無くなってしまった「事前考察」から,一つの方向性を示すことを目指してみたいと思う。

 筆者が上野東京ラインを題材として選んだ理由は多数あり,各々の該当箇所にそれとなく示すつもりであるが,その一つが「(ほぼ)すべての列車に「グリーン車」が連結されていること」である。上野東京ラインの列車1編成あたり,グリーン車(1両当たり90席)が2両連結されており,利用料金は,平日ラッシュ時の最も安い場合(50km以下)で750円である(グリーン定期券は6か月券が無いため割高であり,ここでは考慮しない)。筆者が目視で観測する限り,朝ラッシュ時は誰かしら座れないグリーン車だが,仮にグリーン車の90%の席が埋まったとすると,列車1本あたり90×2×0.9×750で約120,000円の売り上げとなる。列車の運転士・車掌・グリーンアテンダント(2名)で山分けしても,一日分の仕事に匹敵するように見受けられる。増便することによって(グリーン券その他の)収入が得られる,と言うのは他の路線にはあまり見られない特徴であり,増便するインセンティブとして働くと考えられる。
 一方,この路線で増便が困難な理由は,距離が非常に長いことである。東京~国府津が77.7km,東京~籠原が67.7km(いずれも営業キロ)もあるので,同じ電車が1日1回しか朝ラッシュの輸送に携われない。例えば,新橋に5時49分に着く一番列車は高崎駅まで行った後,赤羽駅まで戻ってくると9時半を過ぎてしまう。要は,1回お客さんを都心に運んでおしまい,という電車が大半なのが現状である。距離が短ければ,同じ電車が何往復もして輸送力を稼げば良いのだが,距離の長い路線ではそれが出来ないため,これ以上本数を増やそうとすると電車を買って増やすしかなく,増便は実現困難と考えられる。(↑主張の内容は変わらないため,過去記事をほぼそのまま)
 …と言いたいところなのだが, それで手をこまねいていてはこのブログの存在価値がなくなってしまうので,もう少し何とかならないか,検討してみようと思う。以降のダイヤ図では,赤い太線で表されているのが「増便」,赤く太い一点鎖線で表されているのが「減便」である。

図1:東海道線早朝時間帯増発検討図

増発を検討するにあたってまず着目するのは品川駅を7時15分頃出発し,藤沢駅まで回送される3953M列車である。この列車を東京駅始発(7:08発)に変更することで,この図で言う1806E列車,国府津5:44→6:59東京の列車を生み出している。これと同時に,品川から国府津に向かって回送列車(この図で言う3945M列車)を走らせることで,車両数の辻褄を合わせている。
 次に宇都宮線に目を移すと,


図2:宇都宮線早朝時間帯増発検討図
着目するのは上野駅を6時50分頃出発し,古河駅まで回送される2525M列車である。これにくっつける形で1501E列車,小金井5:08→6:30上野の列車を生み出している。これと同時に,上野から小金井に向かって回送列車(この図で言う2501M列車)を走らせることで,車両数の辻褄を合わせている。
 ところで,高崎線はと言うと下の図3のように検討を行ったが,これまでの「下り列車にくっつける形で行う増発(図中の1801E+2501M)」のだけでなく,「上り列車が途中駅で折り返す形での増発(図中の1803E+1806E-832M)」も併せて検討した。

図3:高崎線早朝時間帯増発検討図
 「下り列車にくっつける形で行う増発(図中の1801E)」は,「必ず15両編成が用意できるとは限らない」「都心側から運用を開始する下り列車のうち最終のもの(この例では827M)よりも早く都心に着く必要がある」という難点がある。先述の時刻以降に増発しようとすると,早朝に1本増発するために,ラッシュピーク時の上り列車を1本減便する必要が生じてしまう。 そこで,次の手段として考えられるのが,籠原より手前の駅での折り返しである。この図では上尾駅での折り返し運転を想定し,籠原始発だった列車の籠原~上尾を1本減便している。この方法で増加した列車は1803E(籠原→上野)と1806E(上野→上尾)である一方,減少した列車は832M(のうち,籠原→上尾)である。1806E列車のグリーン券の売り上げはこの際無視するとして,820M列車のグリーン車が上尾→上野駅までに売り切れていれば,1803E列車のグリーン券の売り上げを「売り上げの純増」とみなすことが出来るだろう。832Mは上野着8:38であり比較的遅い時間帯のため,席が本当に全部埋まるかどうかは何とも言えないところだが,好意的に解釈すれば「時差Bizは出勤時間帯の繰り下げも含む」のだから,問題なく座席は埋まるものと考えている。
 これらの観点から,下り回送列車を増やす必要のある前者に比べ,後者(途中駅での折り返し)による増発の方が,費用対効果で見るとすぐれているように思われる。郊外の車庫を拡張できるならば話は別なのだが…

 ところで,東海道線,宇都宮線,高崎線と,いちいち図を3つも使った挙句,バラバラに考察している,というのはいかにも効率が悪いように見える。上野東京ラインらしく一つの案にまとめてみたらどうだ,ということで一つにまとめることを試みたところ,以下図4のようになった。最初からくっつけるつもりだったのは内緒である

図4:上野東京ライン早朝時間帯増発検討図

宇都宮線方面では10両編成のやりくりに失敗したため,高崎線上尾駅と同様の方法を用い,蓮田駅での折り返し運転を想定している。図4の通り,朝7時より前の段階で東京駅もしくは上野駅に到着する列車は,高崎線で2本,宇都宮線で1本,東海道線で2本増加している。
 …と言いたいところなのだが,図中で赤く示した線のうち何本かが太くなっていないことにお気づきかもしれない。というのも,801M列車が朝6時より前(正確には,現況の一番列車より前)に東京→上野を通過する必要があり,増発が困難なためである。回送する列車が東京・上野間の高架橋を午前6時以降に通過するよう設定すると,籠原到着が7時半頃となるものの,その頃には籠原始発の列車は出尽くしているため,同一運用数で回すことが出来ない。これを回避するには,細い線(1801Eのうち籠原→品川,801M)の増発をあきらめるか,801Mを削り東海道線-高崎線をもう一本(1802E,国府津5:22→6:42上野6:45→7:20上尾,上野以北回送)増発するとともに1837Eの籠原→上尾を減便するか,いずれかだろう。
 こうして見てみると,細かい調整が必要なく,車庫の無い駅で折り返す必然性も低いことから,上野東京ラインへの直通をせず,東海道線・宇都宮線・高崎線のそれぞれが単独で増発を試みる方が,端的に言って楽なのではという気がしないでもない。

 ここまで色々と検討してきたが,「朝の短い10両編成は何とかならないのか」「湘南新宿ラインは増発できないのか」については,以下の図5をご覧いただきたい。

図5:「みじかい10両編成」を赤色・太線にて強調

 この図を使って回答すると,それぞれ「みじかい10両編成は精一杯ラッシュのピークを外してあり,これ以上増結するためには付属編成を買って増やすしかないため」「現況の一番列車より遅い時間に入れようとすると,選択肢が著しく限られるため」という回答になるだろう。とはいえ,湘南新宿ライン側の折り返し可能駅の一つである大船駅は,東海道線側の折り返し可能駅(例えば,平塚駅)に比べて都心に近いため,検討の余地はありそうだ。今後の課題としたいと思うところである。


今回は「上野東京ライン」という具体例に絞って記述してみたが,早朝時間帯に増発しようとすると,以下のような課題のあることが明らかになったように思う。

○グリーン車を連結していることにより,早朝時間帯に増便するインセンティブが働くはず。
○増便しようとする時間帯が便利な時間帯であればあるほど,関係機関との調整が複雑化する。このため,各路線が単独で増発した方が実現しやすいケースもあり得る。
○距離が長い路線で輸送力を稼ぐには,「早朝に下り回送列車を出す」「途中駅での折り返す」が有効である。後者には「グリーン券の売り上げ増を狙うことが可能」「増発する列車として15両編成を用意しやすい」などのメリットがある。

 次回は,労働者・使用者側がそれぞれどのような形で時差Bizに協力できるか?その課題は?という点に着目してみようと考えている。筆者の気力が続いていれば。


 
結びに代えて:現況ダイヤを調査する際,以下のWebサイトの情報を参考にしました。この場を借りて,厚く御礼申し上げます。

宇都宮線・高崎線(宮ヤマ車)
車両運用データ - Tokyo North-South Railway

東海道線(横コツ車)
東海道線運用調べTai!

2017年6月28日水曜日

快適通勤ムーブメント「時差Biz」実施に関する事前考察(3)

 2017年6月27日のこと,鉄道ファンの間で「時差Bizライナー」が話題となった。それもそのはず,同日に東急電鉄・東京メトロから以下のような発表があったためだ。以下は,公式ページへのリンクである。

(東京メトロ公式ページより,リンク先PDF約420KB)


 筆者はこれを受けて,取り急ぎ田園都市線の「時差Bizライナー」に関して簡単に考察してみることにする。東西線に関してはいまのところ完全に他力本願である。 

図-1 赤:2017年4月改正での増発,青:「時差Bizライナー」関連の増発
 
図2:時差Biz関連の増発全体図(仮)

 田園都市線では本年4月のダイヤ改正で,図で言うところの赤い箇所で増発が行われた。特に,5時台から6時台前半には急行が2本増発されている。一方で,今回話題となっている時差Bizライナーは,渋谷駅到着が6時43分と,時差Bizの目指す方向性と合致しているように見受けられる。

 今回は,今年4月に行われた増発と,今回設定された時差Bizライナー関連の増発との間で,共通点と相違点を簡単にまとめてみたいと思う。


2017年4月改正(図赤色) 2017年7月「時差Bizライナー」(図青色)
車両の増備の必要性 ・増発の対象時間帯がラッシュのピーク時間帯より前で完結しており,不要と思われる ・ピーク時間帯の減便を伴わないため,何かしらの車両増備が必要と思われる
東京メトロ・東武鉄道との調整 増発・対象車両ともに東急線内で完結しており,詳細な調整は不要と思われる ・時差Bizライナーは押上まで運転するため,東京メトロとの調整が必要と思われる
・時差Bizライナーの直前・直後に東武線直通電車があり,影響が出ないよう検討が必要と思われる
・変更前の半蔵門始発が営団車両の担当であり,何らかの調整が必要と思われる
・変更後の半蔵門止まりを回送する必要があり,何らかの調整が必要と思われる
速達性 ・長津田→渋谷で29~33分。 ・先行する大井町線の急行に追いつかないよう調整して走ると思われる。長津田→渋谷で29分。
時間帯 ・渋谷駅到着5時34分,6時09分 ・渋谷駅到着6時43分

 端的に言えば,4月の増発は定期列車としての性質を持つ一方で,時差Biz関連の増発は定期列車化しようとすると多くの調整事項があるように見受けられる。換言すれば,時差Bizライナー関連の増発は「短期間のキャンペーンだからこそ」出来ると考えられる。
 
 以下筆者の妄想。早朝の時間帯に速達性を限界まで高め,いまの京王線のようにピーク時とそれ以外との間で極端な時間差をつけるとどうなるか検討すると,(細かい停車駅はさておき)以下の図のような形に帰着するのではないか,と考えている。
図-3:早朝に速達便を設定し,ピーク時は各駅停車だけにした場合の想定図(筆者の妄想)
この場合は,速達列車(渋谷着~6:40)が長津田→渋谷で24分,ピーク時の最速列車(渋谷着8:15~,各駅停車しかいない)が長津田→渋谷で48分となる。倍も違えば少しはピークシフトも進まないかなあと思いつつ,これだけ差をつけてもピークシフトが進まなければ,そもそも所要時間に差をつけることは意味をなさないのかもしれない。改造手間を省くために速達列車を全部サークルK運用に充当しているのは内緒


 以上筆者の妄想終わり。

 筆者の個人的な意見だが,現段階での時差Bizライナー最大の成果は,発表前日まで鉄道㋔㋟㋗から見向きもされていなかった時差Bizが,ようやく注目を集めたことではないか,と考えている。
 
 

 今回は突然の発表を受けて大慌てで記事を起こした次第である。いずれは,鉄道事業者・使用者・労働者の三者各々が持つ課題(前から順に「早朝増発にともなう各種調整」「出勤時間変更に伴う超勤支出の増加」「7時以前の保育園利用困難」)について取りまとめてみたいと考えていたのだが,この発表を知った時点ではいまだ構想止まりであったことから,機会を改めたいと思う。




 以下,筆者の雑感。あくまで筆者の利用している路線に関しての話なのだが,6月26日(月)頃から,朝6時台後半の列車の混雑が増してきたように感じている。増した分のお客は品川駅で大量に降りているように見受けられるが,同駅付近の比較的大きな企業の使用者側により,何か意思決定でもあったのだろうか。

2017年6月11日日曜日

快適通勤ムーブメント「時差Biz」実施に関する事前考察(2)

 6月9日のこと,時差Bizの公式ページが刷新された。ここでは,今回の刷新で追加された「時差Bizとは」「参加企業の取組紹介」「鉄道事業者取組レポート」 に関してを中心に考察しようと思う。

○「時差Bizとは」の内容に関する考察
 この記事を書いている6月11日現在,公式ページの「取組事例イメージ」には以下のような記載がある。


このような取り組み方が考えられます!
【企業の方】
このような形でご参加ください!
【個人の方】
「時差出勤」で快適通勤ムーブメントに参加 ・部門や職種の特性に応じて、複数の勤務パターンを整備して時差Bizに参加。 
・営業部門は取引先との関係上難しいので、管理部門だけ時差出勤に挑戦。
サマータイムで全社員同時に始業時間を前倒し。節電にも貢献。
・朝は1時間早く出勤して、早く帰宅。家族全員で夕食を取る。
・時差出勤を活用して自宅で資格取得の勉強をしてから、1時間遅らせて出勤。
・時差出勤を体験して、自分のライフ・ワーク・バランスについて考えてみる。
「フレックスタイム制」で快適通勤ムーブメントに参加 ・会社最寄り駅の混雑時間帯を避けて出勤してもらえるよう従業員に推奨。
・ムーブメント期間だけ、コアタイムなしのスーパーフレックスタイム制に挑戦。
・ムーブメント期間内の特定日だけ、全社員で混雑時間帯の出勤を中止。
・盛夏の7月、涼しい早朝に出勤して、汗知らず。
・マラソン大会に備えて早朝はジムに通ってから、1時間遅らせて出勤。
・早朝出勤して鉄道事業者のポイントをゲット。
「テレワーク」で快適通勤ムーブメントに参加 ・ムーブメント期間中、従業員の移動時間を減らして、効率性・生産性を高めてもらう。
・サテライトオフィスを整備。
・普段より積極的にWeb会議を実施し、出社不要な仕組みを構築。
・電話が鳴らない静かな環境で、集中力高めて仕事に取り組む。
・介護が必要な家族の近くで働くことができるから安心。
・自宅最寄のサテライトオフィスでメールチェックしてから、オフピーク通勤。

 筆者が着目しているのは内容そのものではなく,企業側(使用者側)と個人側(労働者側)で取り組み方を分類したことである。筆者は常々,鉄道「利用者」が労働者・使用者のいずれを指すのか疑問に感じていたところではあるが,企業・個人それぞれの取り組み,あるいは得られるメリットについて整理されていることは評価できると考えている。一方で,いざ表に整理してみると, 時差Bizを普及させるためには,使用者側が「やる」と決断するかどうかが肝要であるように見受けられる。
 ところで,「時差Bizとは」の項目の一番下に以下のような表が掲載されている。

公式ページ(https://jisa-biz.tokyo/about/)の表をそのまま掲載。

 こういった形で需要の時間分布を「見える化」することは肝要と思う。この需要に従う形で鉄道事業者は資源(列車)を特定の時間帯に集中させている以上,時差出勤の普及によって,かえって早朝時間帯の混雑が激しくなることもあり得ると考えている。
 

○「参加企業の取組紹介」の内容に関して
 取組紹介の例として挙げられている企業はいずれも大企業であり,時差出勤やフレックスタイム制といった制度に積極的に取り組む旨の方針が示されている。大企業の取組を取り上げることには「宣伝効果がある」「大企業の「一部の部門(あるいは社員)」が実施すれば,費用対(宣伝)効果が大きい」といった利点がある。多くの中小企業にとって「発注者」「取引先」「親会社」たりうる大企業の取組内容を紹介することで,中小企業の使用者側の「やる」という決断を促す,というものであれば,方向性としては意義のあるもののように思える。
 一方で, 「一部の部門(あるいは社員)」が実施というのが事実であれば,思ったほど混雑緩和効果は無いのではないか,と穿った見方をすることもできる。早朝出勤にシフトしすぎると早朝の電車が大混雑するので,適切な割合に関してはコメントしづらいところではある。

○「鉄道事業者取組レポート」の内容に関して
 筆者としてはここに考察の手間を割きたいところなのだが,「今までの取組の紹介+取り組みを継続する」という内容なので,悪く言えば「真新しいものが無い」というのが実情である。特に小田急にとってこのキャンペーン実施はタイミングが悪く,複々線化の完成と輸送力増強は早くても2018年である。ここでは,すべての社の取組に着目する,と言うよりは,満員電車の解消にとって特徴的な取組を抜粋し,筆者なりの意見を添えて考察してみたいと思う。

・JR東日本の取組内容
 「お客さまのご利用状況に応じた列車の増発」がどうしても気になってしまうところなのだが,「上野東京ラインの開業」「東京メガループでの増発」が実態となっている。
 東京メガループの増発と言っても実態は昼間の時間帯が主であり,朝の時間帯に関してめぼしいものは少ない。2010年と現在の時刻表同士を見比べると,南武線が「稲城長沼6:29→7:11川崎のスジを立川始発に変更」,横浜線が「東神奈川駅6:10と7:00の列車を桜木町まで直通・延長運転」,京葉線が「武蔵野線からの直通列車を各駅停車に変更」「府中本町5:59→7:54東京の列車を増便」 にとどまっているのが実態である。とはいえ,混雑した時間帯に1本でも列車が増えればそれだけ効果も大きい。
 筆者が繰り返し主張しているように,朝6時台の中距離電車を増発する方向で検討が欲しいところである。これに関連してかは不明だが,最近の傾向として早朝の「短い10両編成」が減少傾向にある。例えば東海道線だと,1826E列車(熱海5:18→7:18東京7:19→9:09高崎)の一本しかない。鉄道ファンの間の風の噂では,東海道線に付属編成(5両編成)が1本増えるらしい。事実であるなら朝の上り列車をすべて15両編成に統一でき,宣伝効果が大きい。今後の動向に着目したいところである。

・東武鉄道の取組内容
 朝の上り特急列車が大幅に増えている。例えば,「スカイツリーライナー2号(春日部5:36→6:10浅草)・4号(6:08→6:43)の増発」「土休日限定だったりょうもう6号(太田6:36→8:18浅草)の平日運転開始」と,結構思い切った増発に踏み切っている。新しい特急車両のデビューを受けて運行系統の見直しを行った形だが,複々線を生かし,最近流行の着席保証列車をタイミング良く増やすことが出来た点で,小田急とは対照的であると言える。

・京王電鉄の取組内容
 以前から筆者が着目している取り組みの一つに,早朝に速達列車の設定を行っていることが挙げられる。
2015年秋現在の優等列車設定状況(一部列車のみ抜粋して掲載)

 京王線は現状,調布以西から二本の路線が合流しているものの調布~笹塚が複線であり,同区間が輸送上のボトルネックとなっている。連続立体交差事業は複線のままを想定していることから,同社にとっては複々線化せずに輸送力を向上できれば非常に大きな成果である。
 こうした実情から,真っ先に時差出勤を普及させたい,という考え方はごく自然である。調布→新宿で比べると,特急の運転している時間帯は20分弱で移動できるが,最混雑時間帯では約35分を要している。 これだけ所要時間に格差をつけることで,時差出勤のメリットを目立たせようという意図が感じられる。
 現状はというと,特にピーク時間帯の遅延が多発していて,時差出勤のうち「出勤時間の繰り下げ」にイマイチ寄与できていない課題がある。筆者は個人的に,遅延をうまく吸収できるように9時台のダイヤを編成することによって定時運行率を向上し,出勤時間帯の繰り下げに寄与できないか,机上で検討しているところである。

10分間隔で各駅停車×1・急行×1・特急×2を設定。遅延したらその部分のスジが寝て圧縮される仕組み(伝わらない)

 この案を検討している際,千歳烏山駅に待避設備があるかどうかで9時台の速達性が大きく左右されることに気づかされた。同駅に待避設備が無いと,この時間帯に特急を運転してもすぐ詰まってしまい大して意味をなさない。同駅には連続立体交差事業によって2面4線化される計画がある。同事業を大きく二つに分けるならば,環八通りとの交差部でありすでに高架化されている八幡山駅が境界になると思われるが,このうち(千歳烏山駅を含む)西側だけでも完成すれば効果は大きいし,この効果だけに着目するならば通過待ちさえ出来れば良いので,1面2線ないし2面2線でも良い。準特急が千歳烏山に停車するようになったことで,通過待ちだけ出来れば良いという方針が使いづらくなったのは気のせいだろうか…?

・京急電鉄の取組内容
 個人的に興味深いと考えているのは,同社アプリ上の取組のうち「ラッシュ時間でも混雑率が低い普通電車へ誘導し、ゆったり通勤を提案【同じラッシュ時間帯で列車をズラすオフピークを提案】」「「1時間早く出発」は厳しくても、「数十分早く出発する普通電車」に乗れば、ゆったり快適な通勤が可能ということを啓蒙」である。


比較的混雑率の低い普通列車へ誘導する案内に特徴がある(画像は公式HPから抜粋)

 同社はプラットホームの長さの都合上,優等列車と各駅停車をそれぞれ設定する必要があり,混雑が激しいからといって全部各駅停車にするという手が使えない。どうしても優等列車に混雑が偏る傾向がある割には, これ以上各駅停車を減便するわけにもいかない以上,比較的すいている各駅停車に乗客を誘導する方法は現実に即していると言える。
 しかしながら,同社が直通運転を行う都営地下鉄の定期券が他社と比べて高額であったり,JR線の6か月定期券の値段が1か月定期4.8枚分と,私鉄各社の5.4枚分と比べて安かったり,横浜以北は通勤ルートとして選択されにくい傾向がある。一方で横浜以南はと言うと,優等列車が金沢文庫駅で増結を行うため,同駅以南の乗客にとってはあえて各駅停車を選ぶメリットが薄い。同社ならではの事情もあって,各駅停車への誘導は興味深いと感じるのだが,時差Bizに直接貢献できるかというと何ともコメントしづらく,勿体なさを感じているところである。
 もっとも,朝の快特が京急蒲田→品川で最大14分を要していて京浜東北線よりも遅い現状,この区間で少しでも各駅停車に乗って欲しいという意図は理解できるので,実際どのくらい効果があったものか,フィードバックがぜひ欲しいと考えているところである。
 

・首都圏新都市鉄道の取組内容
 開業以来混雑が激化している影響もあって,年々運転本数が増加すると同時に速達性が低下している実情がある。開業当初(例えば,2006年4月時点),ピーク時(北千住7:45~8:45)の運転本数は1時間当たり快速4本,区間快速4本,各駅停車8本の計16本であり,つくば→秋葉原の所要時間は45分であったが,現在は優等列車8本,各駅停車12本,八潮始発2本の計22本であり,つくば→秋葉原の所要時間は52分となっている。開業当初のダイヤの朝ラッシュ時の所要時間が昼間とほとんど変わらないことに驚きを隠せないのだが,増便の影響で遅くなっていることもまた事実ではある。
 同社の取組として「列車を5編成増備し,ピーク時に1時間当たり3本増発する」があるのだが,八潮始発にしては列車を増備する編成数が多い気がするので,守谷から各駅停車を増発する前提で良いと思われる。5編成増備するのに3本しか増発できないのは列車2本分(≒約5分)スジが寝るため,と思わないでもないが。また,「ボックスシートを長椅子に改造する」という試みも興味深い。混雑の一因として,「乗客が車両の奥に詰めて乗らない」があるため,この改造は大きな効果があるように思える。
 この路線の弱点として「八潮から守谷まで引き上げ線がなく,折り返しによる増発がしづらい」「待避設備が八潮・流山おおたかの森・守谷にしかなく,朝の速達性が確保しにくい」がある。しかし用地取得の都合上,待避駅の増設は困難と思われるので,停車駅の設定を工夫する必要がありそうだ。

 以下筆者の妄想。
 標準軌に改軌して最高速度を上げ,運用数が余った分を増発に回す方法も考えられなくはないが, いまさら長期間の運休を伴う工事は現実的ではないし,選択停車が普及しない限り,「せっかく高速化しても朝ラッシュ時に大した効果を発揮できない」という弱点が露呈しそうなのが実情である。また,長編成化(具体的には,8両編成化)に関する言及はないが,仮に長編成化した場合,秋葉原駅の時間あたり折り返し可能本数が減少しないか気になるところである。


○記事の結びに代えて
 「協議会レポート」の項目の下の方をよく見ると「次回は7月上旬に「第2回 快適通勤プロモーション協議会」が予定されている」と記載がある。ところで2017年7月1日は土曜日であり,都議選は2日(日)である。時差Bizの開始予定日は同11日(火)であることを考えると,第2回の協議会は都議選の直後ということになる。混雑緩和には期待を寄せているだけに,政治の風向きひとつで吹き飛んで欲しくない,と願うところだが…。

2017年5月28日日曜日

快適通勤ムーブメント「時差Biz」実施に関する事前考察(1)

  2017年4月28日のこと,「第一回快適通勤プロモーション協議会」が開催され,「快適通勤ムーブメント"時差Biz"を,同年7月11日(火)~7月25日(火)の期間に実施する」ことが明らかになった。出勤時間をずらすことで混雑緩和につなげることを趣旨としている。詳細は,以下のリンクに公式ページがあるため,それに譲ることにする。


 筆者はこのブログを開設した当初から,「時差出勤による混雑緩和のためには,政府による鉄道会社への(増発)要請が肝要である」と考えていたため,今回のような取り組みは非常に大きな進歩である,ととらえている。内容に対する細かな指摘はあるものの,大枠としては評価できると考えている。

 さて,公式ページの記述を追ってみると,鉄道利用者への要請として「フレックス勤務,テレワーク,時差出勤 等」,鉄道事業者への要請として「混雑の見える化,オフピーク通勤者へのポイントの付与 等」が掲載されている。さすがに二階建て電車を要請するわけにもいかなかったのだろうが,各々の要請について,他にやりようがなかったのか,という考えにはしばしば至るので,以下にまとめてみたいと思う。

○フレックスタイム・時差出勤について,出勤時間を前後どちらにずらすのかという議論
 筆者は過去に「都知事公約「満員電車ゼロ」の実現に向けた時差出勤に関する考察」にて,出勤時間の前倒し・後ろ倒しの各々について考えたことがある。鉄道事業者の立場からすると,「電車区が地価の安い郊外に置かれるならば,遠距離客を前倒しし,近距離客を後ろ倒しするのが自然」といった趣旨であった。しかし別の考え方をすると,超勤手当を受け取る側としては前倒ししたいし,超勤手当を払う側,そもそももらえない側としては後ろ倒ししたい,と考えることが出来る。また,あくまで伝え聞いた話であるが「7時より前に開いている保育園が少ない」という現状もある。
 「鉄道利用者への要請」の「利用者」とは労働者・使用者のいずれを指すか,にもよるだろうが,筆者は「この「利用者」は使用者を指す」と考えている。超勤手当の支払いを助長し,果てには残業ゼロの公約と相反する出勤前倒しに対し,「利用者」は協力しにくいのでは,という気がしている。
 
○テレワークに関して
 実のところ,筆者はテレワークに本気で取り組むとは考えていなかった。鉄道事業者にとって,テレワークがあまりにも進行してしまっては減収につながるため,協力を得にくいのでは?と考えていたためである。しかしよく考えてみると,鉄道事業者の収入をなす定期券による収入は6ヶ月単位の買い物であり,6ヶ月間に数日テレワークになったところで大した影響はない。東京五輪の開会式を予定している7月24日をテレワークデーと定め,その前後数日~数週間のみに集中して実施する,という趣旨であるからこそ,鉄道事業者の協力を得て「時差Biz」の一環として取り組めるのでは,と考える。

○混雑を「見える化」する方法に関する議論
この項目では「要はこんなの作れないの」という議論を試みます
オフピーク通勤を奨励する方法の一つに,混雑の「見える化」がある。各列車の混雑度合いを調べる方法として,直接駅で観測する方法もあるが,列車には「応荷重制御」という,「旅客の重さに応じて性能を調整する機構」が付いているので,少なくとも鉄道会社にとっては,旅客の重さ(≒人数)を調べることは,さほど難しくないはずである。
 一方で,いざデータを提供する段になると,駅にポスターを掲示し,「この列車が特に混雑しています,避けてください」程度の情報提供にとどまっている鉄道事業者が大半である。なかには,各社アプリに混雑情報を掲載する事業者もあるが,首都圏全線に広まっている取り組みではなく,一部の事業者独自の取り組みにとどまっている。

東急線アプリで混雑を示した一例(公式ページより抜粋)

JR東日本アプリで山手線の混雑率は車両ごとに表示される(公式ページより抜粋)
また,混雑率データを公表しようという試みは,鉄道事業者に限った話ではない。一例として,NAVITIME社の「電車混雑予測」では,朝の通勤列車を中心に各列車の混雑率を独自に調査していて,その結果を自社アプリ上で検索することが出来る。鉄道事業者を問わずデータを取得できることに強みがある。
NAVITIME社の自社アプリ上では,さまざまな路線の混雑データを取得できる。
  現段階で筆者が懸念している事項は,「データの二次利用が困難であること」である。各社のアプリに掲載されているデータを取得し,それを利用して別のアプリを作ったり,別の方法で情報提供したり,といった取り組みは不十分であるように感じる。一時期,例えば東京メトロの「オープンデータ活用」の取り組み(※リンク先PDF3.8MB)のような企画が盛り上がりを見せたことがあるが,この動きが他社に影響を与えているかは(現時点では)疑問である。
 
 例えばの話なのだが,以下のような一枚の図で情報提供が出来れば,混んでいる列車はどれか,だけではなく,どの列車が速いか,どの時間に出勤するのが快適か,など様々な情報が提供できるように思う。データの形式不統一が課題であるなら,鉄道オタクが全部.oud形式で作るべきである。筆者が作れよという意見も聞かれるだろうが,このページにアップロードできないので,作ったところで「生まれの過ち」である。

OuDiaで手打ちするとこんな感じ。濃い青のスジは着席可能らしい。
何らかの理由で座って通勤したい,と考えた場合,①濃い青のスジに乗る,②途中で始発列車(濃い青のスジである必要はない)の列に並ぶ,の二通りの方法があると考えられる。この一枚絵ひとつで記事を一本書けそうなものだが,「元データさえ手元にあれば,情報提供の方法は千差万別である」ことが言えるだろう。
 長くなってしまったが,オフピーク通勤のための情報提供の仕方については,今後一層の議論が必要があると考えている。


○オフピーク通勤者への「ポイント付与」に関する見解
 オフピーク通勤に協力した「利用者」に何らかのメリットを与えよう,という動きが最近活発化している。具体的には,朝のある時刻より前に改札を通った「利用者」に対し,朝食などのサービスに対する割引を提供する,といったサービスである。一方で, 例えば高速道路のようにピーク時に料金を割引・割増することは出来ないのか,という意見も出よう。このうち割増については,着席を保証する代わりに料金を取る列車(いわゆる通勤ライナー)を鉄道各社が運行することで,間接的に実現されているように思われる。
  ところで,この「割引」「割増」は「利用者」に対するものと書いたが,この「利用者」は「労働者」を指し「使用者」を指さない。「利用者」に対する「割引」(クーポン券)」「割増(着席保証サービス)」のいずれも,通勤手当の過大・過小支給には該当せず,あくまで労働者側の自己判断によってなされているものであるように見受けられる。一方,利用した時間によって運賃そのものに対する割引,割増を行うと通勤手当の過大・過小支給につながってしまう。運賃そのものに介入しようとするなら,運賃が高くなる方向に介入しようとすると,実質的に運賃を負担している「使用者」からの反対意見が,運賃が安くなる方向に介入しようとすると鉄道事業者からの反対意見が出て,時差Bizの枠組みそのものに影響が出るであろう。
 ポイント付与以外に何か出来る方法は無いだろうか,と考えてはみたものの,運賃そのものへの介入が困難であることから,今のところ筆者にはいいアイデアが浮かばずにいるのが現状である。


○他に鉄道事業者に要請すべき事項は無かったのか
 上で「いいアイデアが浮かばない」と書いたが本当はそんなことはない。オフピーク通勤に協力した利用者(労働者を指し,使用者を指さない)に何らかのメリットを与えたい,でも「現金と交換可能だと通勤手当の過大・過小支給にあたる」のであれば,オフピーク時間帯の列車を速く走らせたり,オフピーク時間帯に始発列車を増やしたりすることで,速達化による効用や着席による効用に還元できないだろうか?これに絡んで筆者は,朝6時台に都心に到着する中距離電車の本数が少なすぎることこそ,真っ先に解決されるべき問題であると考えている。詳細は過去の筆者の記事「ゆう活と時差通勤と増発と」「都知事公約「満員電車ゼロ」の実現に向けた時差出勤に関する考察」に譲るが,(線路や電車の数など,ハードの制約面では)不可能ではないと考えている。列車の運転士・車掌にかかる負担が増える,という反対意見も出るだろうが,例えばその分,運転士・車掌が夜間寝泊りする環境を改善する方法もあるだろう。ここまで細かい用途に限定された補助金が払えるかどうかは別として…

 
 ここまで,利用者(使用者ならびに労働者)および鉄道事業者の立場から,時差Bizに対してどのような協力が出来るか,予定されているものもそうでないものも検討した次第である。都議選を控え,政治上の動向は不透明なままだが,どんな形であれ,朝の通勤ラッシュが少しでも解消する方向に動くことを強く願いつつ,いったん筆を置くことにする。

2017年5月21日日曜日

小田急線の増発について考えてみた(2)

 以前も小田急線の複々線化に伴う増発について記事にしようとしたのだが,いかんせん話が長くなりすぎたので,前回の論点を簡潔に整理しつつ,記事の内容充実に努めようと思う。

 まず前回の記事に書いた通り,増発については主に下記の四つの要素から行われるように思われるので,改めて一つ一つ考えてみたいと思う。

1.小田急が保有する車両の数を増やす。直通先の千代田線や常磐線(各駅停車)から車両を借りてくる。
2.列車を速く走らせ,同じ本数を走らせるために必要な車両の数を減らす。その分を増発に充てる。
3.千代田線方面への直通運転の本数を増やし,折り返しのために新宿・代々木上原で止まっている車両を減らす。これで浮いた分だけ増発に充てる。
4.下り列車を途中駅(特に成城学園前・向ヶ丘遊園)で折り返し,新たな上り列車として走らせる。

  1.を行うには,相当な投資が必要であったり,直通先の千代田線・常磐線の減便を伴うため,現実的ではないように思うので,ひとまず2.に着目してみたいと思う。とある新聞報道(正確には,2016年4月28日の日経電子版の記事)によると,急行列車の町田→新宿が,現行の48分から38分に短縮される,と記載がある。 この記事を参考に,ひとまず現行の優等列車のスジを10分ほど立てることを想定し,以下の図を書いてみる。なお,今回の記事でベースとするダイヤ図・時刻表データは,すべて2014年春改正時点でのダイヤとする。(←最新版の運用を調べるのがめんどくさいからです。すみません。)

太線のうち実線が増発,点線が減便である。赤く着色した個所を例にとると,現行の町田→新宿が47分なのに対し,計画では37分と10分短縮したことになる。10分早く着くことにより,現行で言うところの2本前の急行に追いつくことになる。これによって「同じ輸送力を確保するため必要な電車の編成数が2編成減る」ことになるので,同じ電車の編成数なら2本増発できることになる。

 3.に関して同記事に言及があるかというと,「千代田線への直通列車を5本から12本に増やす」と言及がある。ここで,千代田線への直通列車を1本増やすごとに,「千代田線が代々木上原で折り返すための所要時間(約8分程度)」が浮くことになる(新宿折り返し分の約6分と,新宿~代々木上原の往復所要時間は,この区間が減便されるわけではないのでここでは計上しない)。一方で,都心(例えば新宿駅)と郊外(一番近い折り返し拠点である向ヶ丘遊園)の間を急行列車として往復するだけでも50分近くかかるので,千代田線直通を7本増やして代々木上原折り返しを7本減らして8×7=56分浮かせても,せいぜい1編成しか浮かないことになってしまう。

 しかし,2.と3.を頑張って組み合わせても,せっかく複々線化したのに列車が2+1=3本しか増えないというのはいささか寂しすぎる気がしてこないだろうか。上記の新聞記事によれば,ピーク時は1時間に27本から36本に増発することになっているはずである。

 そこで着目されるべきは4.で挙げた「向ヶ丘遊園駅・成城学園前駅始発の列車」である。そもそも複々線化はほぼ東京都内の区間に限られており,複線の川崎市側で毎時36本も運転するのは厳しい。すなわち, 増発されるべき9本分は向ヶ丘遊園ないし成城学園前のいずれかの駅の始発列車になると考えられる。(経堂でもできなくはないが,交差支障があるので折り返しが難しいと思われる。)

 2014年時点の時刻表によると,向ヶ丘遊園駅始発の列車は,6時28分発の後8時26分まで無い。理由は単純で,始発を作ったところで結局下北沢で詰まってしまうためである。この影響で,向ヶ丘遊園や成城学園前で折り返していればラッシュの戦力になれるはずの列車が,そのまま下り方面に走って行ってしまい,場合によってはそのまま車庫に入っていわゆる昼寝をしてしまう。これではあまりにも勿体ないので,2014年時点のダイヤ図をもとに,何本くらい向ヶ丘遊園・成城学園前始発を設定できるか,下記の図のように考えてみた。




 実線を増発する代わりに点線を減便するわけだが,下り列車を減便することにより,5本程度であれば向ヶ丘遊園始発の列車が設定できる。2.や3.で増便する列車が向ヶ丘遊園始発になると考えれば,5本と言わずもっと多く設定されても不思議ではない。また,新聞記事の通り9本(27→36本)増発するのであれば,「速達化で2本+直通列車の増で1本+向ヶ丘遊園での折り返しで5本」増えることで,割とつじつまが合うと考えられる(※遠方向けの有料特急も増えると思われるが,本稿では深入りしない)。物価も家賃も都内に比べて安いので,実際「向ヶ丘遊園近辺でアパート借りて住むのも悪くないんじゃないか?」と思い始めたところである。
 上記の図だと成城学園前始発が1本しか増えていないことになるが,個人的な感覚としては,成城学園前始発はもっと増えても良いように思う。そう思い始めたきっかけは,「代々木八幡駅のホーム10両化(2018年秋予定)が,下北沢付近の複々線化(2018年春予定)に間に合わないこと」である。
 代々木八幡駅のホームに10両編成が停車できるようになると,各駅停車も10両編成にすることが(理論上は)可能になる。各駅停車を10両化するならば,現在一番混んでいる時間帯の各駅停車を10両化するのが一番のサービス向上と言うべきであろう。下記のダイヤ図は,2014年現在8両編成で運転されている列車のみを図示したものなのだが,ここでは着色した11個の運用が激しく混雑し,ここを優先的に10両化するものと仮定して話を進めていく。



 今持っている8両編成の一部を10両編成に改造する必要が出るわけだが,そんなにいっぺんに改造できるわけではないので,おそらく改造の進捗に合わせて少しずつ10両化していくものと思われる。そのため,本稿では「10両編成化された後も,当分は各駅停車のみとして運用される」と仮定して筆を進める。また,昼間の各駅停車に10両編成を使うのは動力費の観点から好ましくない(乗車率が低い上,そもそも各駅停車は急行に比べて電気を喰う)ため,「10両化する」運用は可能な限り昼寝させる方向で考えるべきだろう。
 ところが,実際は各駅停車の多くが同じ駅(本厚木駅)で折り返しているため,最混雑時間帯の各停を集中的に10両化すると,その後の各停が「特定の時間帯だけ」10両編成だらけになってしまう。上図の例では,新百合ヶ丘10時台上りの各駅停車が10両編成だらけになってしまっている。これを防ぐためには,折り返しを駆使して少しでも10両編成の塊を散らすしか無い。一方で向ヶ丘遊園は始発優等列車の増発という役割を兼ねている上,各駅停車が折り返す際は交差支障を生じる(下りは大して変わらない説があるが,それは置いておいて)ため,支障の少ない成城学園前駅に白羽の矢が立つのではないか,と考えている。もっとも,成城学園前止まりのまま入庫してしまう可能性もあるにはあるのだが…


 というわけで今回は,小田急線の複々線化に伴う増発について,新聞記事と照らし合わせながら考えてみた。新聞記事は,町田以遠の遠距離通勤客にとって利便性が向上する,という趣旨であったが,あくまでも筆者の私見によれば,通勤が快適になるのは,むしろ始発列車の恩恵を受けられる近距離客(特に向ヶ丘遊園・成城学園前)ではないか,と思われる。


 個人的に,快適通勤ムーブメントなり時差Bizなりに関して書きたいところでもあるのだが,この記事と共通する部分もあればそうでない部分もあるので,近いうちに別途記事を起こすことにしたい。