2017年12月3日日曜日

札幌駅の配線について考えてみる(6)

 前回記事を起こして以来3か月が経過したが,札幌駅新幹線ホームの建設位置問題については様々な報道があり,その一つに,「杉山淳一の「週刊鉄道経済」: 北海道新幹線「札幌駅」地下案はダメ、ゼッタイ!」がある。同記事は明確に「現駅案」を主張しているが,経緯に関しては同記事より詳細に立ち入らないことにする。本記事は今まで通り繰り返してきた,「在来線列車は現在の3~10番線のみで対応可能」という方向性を保ちつつ,より具体的な議論を深めたいと考える。

 前々回記事では,快速エアポート号の12分間隔(毎時5本)運転を前提としたとき,千歳線のダイヤパターンがほぼ2通りに絞られることを記述した。これは,南千歳~新千歳空港が単線であることで,エアポート号同士が行き違い出来る場所に強い制約があるためである。当該記事では,新千歳空港駅での停車時間が12分の案(千歳駅南方で行き違い,以下「12分案」)と17分の案(南千歳駅構内で行き違い,以下「17分案」)の2通りに絞り込んだが,この時点では貨物列車の運転計画を具体化していなかった。今回記事ではまず,貨物列車の具体的な運転計画を織り込むことから記述していこうと思う。

 ここで重要になるのが,貨物列車が札幌貨物ターミナル駅(本記事のダイヤ図では擬似的に,平和駅の真横として描画している)と新札幌駅との間を走行する際の所要時間である。距離にして約3kmであり,最高速度が(分岐器の関係で)45km/h程度であることを考慮すると,平均35~40km/hが精いっぱいと思われ,5分30秒~6分程度と推測できる。この区間の多くが単線区間であるためダイヤ作成上の制約が大きい。単線区間の最小運転間隔は走り抜けるための所要時間の2倍とほぼ等しいことから,仮に貨物列車を12分間隔で走らせようとすると,「出来なくはないが,ダイヤを綿密に設計する必要がある」ことが分かる。貨物列車が新札幌~千歳を平均80km/hで走行すると仮定して以下図1,図2のように検討した結果,「17分案」では「追いつかれないように」配置することが困難と判明したので,以降は「12分案」をベースに検討を進める。

図1:12分案
図2:17分案。エアポート号と貨物列車が新札幌駅付近で接近しすぎるため,今回は採用を見送った。
図1を見ると,特急列車と貨物列車が毎時「合計」5本まで走れることが分かる。エアポート号とエアポート号の間の12分間に特急と貨物を1本ずつ入れると,特急が貨物に追いついてしまうため,合計6本以上走らせることは非現実的と思われる。とはいえ,札幌(貨)~新札幌の単線区間や,そのアプローチ部での平面交差をあらかじめ回避するようダイヤを組んでおけば,上下線それぞれで「特急と貨物列車が毎時最大合計5本」まで走れることになる。現状,特急列車が毎時合計最大3本程度(北斗+すずらん+おおぞら)で,貨物列車が最大2~3本であるから,調整次第で現状の需要に十分耐えられるものであると考えられる。


 ところで,この記事では今まで,札沼線についてあえて見逃してきたのだが,ここに来て大きな問題が生じている。それは,札沼線の運転間隔が13分を下回る場合,札沼線用のホームが2線分必要になることである。
 具体的に検討してみよう。札沼線が札幌~桑園を走行するのにかかる時間は,市販の時刻表を見たり実際に走る列車を観察したりと思案した結果,3分ちょうどと仮定することにした。ある列車が桑園駅を出てから札幌駅に着き,7分の折り返し時間を経て再度桑園駅に戻ってくるのにかかる時間は3+7+3=13分である。札沼線の運転間隔が13分を切る場合,札沼線専用のプラットホームが2線分必要になる。これが12分サイクルを仮定している千歳線ダイヤと非常に相性が悪い。今の15分間隔(エアポート号が毎時4本)のダイヤなら調整できなくもないだろうが,毎時5本にすると決めてしまった以上,札沼線のホームを1本しか置かないことに現実味が無い。
 札沼線と函館本線の間では線路が独立しているため,相互に調整する必要はないのではないか,という意見もあろうが,下図の通り,手稲側から札幌駅の8~11番線に入線する列車と札沼線の列車とが線路を共有していて,これらが相互に支障し合わないようダイヤを調整する必要がある。

図3:赤い太線で示した個所が,今回ボトルネックとなっている。点線は線路を撤去した跡。
このような配線になった原因の一つは,現在札沼線が使用している単線区間がもともと函館線の下り本線で,いまの下り本線がもともと引き上げ線だったことに起因していると考えられる。当時の配線は,札沼線が函館線ないし千歳線と直通することを考慮していたようにも見えるが,今更引き上げ線を復活させ,直通運転を検討するのも困難なので,いまの配線をどう改良するか,考察したいと思う。
 手稲側に向かう列車を3~5番線の3本で捌くことを考える時,少しでも札幌駅での停車時間を減らすため,白石~手稲での無待避を仮定し,ここから逆算してエアポート号の停車時間を6分取ったのは前回記事に記載した通りである。ところが苗穂側に向かう列車で無待避を仮定すると,その区間が手稲~上野幌と非常に長くなってしまい,エアポート号の停車時間が8分にも及ぶ。あまりプラットホーム削減に寄与しないと判断して無待避の仮定を諦め,札幌で緩急接続を行うことにした結果,1本余分にホームを使う(6~9番線)ことになったため,札沼線が使用できるのは10番線と11番線のみになってしまう。札沼線のダイヤを12分間隔を仮定した千歳線のダイヤとなじむよう調整する際に一番手っ取り早いのは,11番線にプラットホームを新設することである…と言いたいところだが,大規模な土木工事になるし,今ある建物の立ち退きが間に合わないと報道する向きもあるようなので,これも現実的でないということになる。 おまけに,北側に何本プラットホームを新設しても,図3で示した箇所のボトルネックは解消しないのである。
 しかし,「札沼線の運転間隔が13分を下回る場合,札沼線用のホームが2線分必要になる」のは,よくよく考えると「桑園~札幌が単線である」ためである。札幌と桑園の間で行き違いが実施できるならその限りではない。筆者なりに色々と検討した結果,以下の案が浮上した。

図4:配線改良案のひとつ
図では,桑園駅に渡り線を2か所追加しているように書かれているが,案の本旨を実現するためなら片方だけで十分である。桑園駅東側の片渡り線を両渡り線に改造できれば理想だが,それが難しければ,駅西方で過去に撤去した渡り線を復活させるだけでも大きな効果がある。何のためにこんな案を出したのかと言えば,函館本線の下り線に札沼線の上り列車を乗り入れさせ,札沼線の運転間隔を短縮するためである。三線運転で真ん中の線路だけ向きが違う,半ば右側通行のような事例は筆者も見たことが無いが,出来ないことはないと考える。

 ここまで色々と検討してきたが,これを一つの図にまとめると以下のようになると考えれられる。一番混む時間帯は毎時55分頃で,すべてのプラットホームに出番がある。次に混む時間帯は毎時30分頃で,5番線を除きすべて使われてしまう。
図5:毎時何分に何番線がどの列車に使われているか示した図(雑)

 上記のパターンを仮定すると,以下のような改良工事があれば,ダイヤ乱れ時にも対処しやすいと考えられる。
 ○発寒~発寒中央付近に,待避設備か引き上げ線を整備する。地平区間のため高架橋の大規模改修も不要だし,上に架かる道路橋の橋脚スパンも線路4本分はゆうに確保してあるように見受けられる。その効果として,各駅停車用のプラットホームが8番線1本で済む(9番線が浮く)ようになることが挙げられる。
 ○札幌駅3~6番線の場内閉塞を,プラットホームの真ん中で二つに分割する。札幌駅での追い出し間隔をなるべく詰めるとともに,現状9両編成の普通列車は無いため,詰みを減らすために2本縦列停車させることも(物理的には)可能になる。3~6番線に限定したのはプラットホームが長いためである。
 逆に,以下のようなケースでは,上記のパターンは破綻してしまう。「こうならないように組む」しかないのが現状である。
 ×12分間隔で,二本連続で苗穂方向に回送する必要が出た場合。
 ×すずらん号が毎時55分付近の一番混む時間帯で,ホーム上折り返しになった場合。

 ダイヤ図を大きく出して検討する作業は,今回の記事で一通り済んだと考える。手元には特急列車の想定ダイヤ(2020~2030年)も用意しているが,蛇足であると判断し今回はあえて掲載しないことにした。次に筆を起こすのは,札幌駅新幹線ホーム建設位置の問題について,より具体的な報道があるのを待ってからにしたいと思う。