2018年11月13日火曜日

エアポート号増発とボールパーク新駅を想定した千歳線ダイヤパターンの考察(2)

 前回の記事では、千歳線のダイヤパターンについて、快速エアポート号の増発(現在毎時4本→5本に増発予定)と上野幌~北広島の新駅開業とを想定しながら作成してみた。今回は、貨物列車の設定を念頭にこのパターンをより具体的な形に落とし込むことを試みる。現段階では、「エアポート号の増発が2020年度予定、北広島ボールパークの開業が2023年予定」と、両者の時期がある程度具体化していると同時に、時期としてはエアポート号の増発が先になる可能性がかなり高いことから、まずはエアポート号の増便を前提にダイヤパターンを作成し、その上でボールパーク新駅の設置に伴う課題を洗い出すことを試みる。

  筆者が千歳線のダイヤパターンを書くとき真っ先に決めるのが、快速エアポート号同士がすれ違う位置である。ここでは、議論を単純にするために毎時5本のエアポート号が等間隔(12分に1本)走ることを想定した。この時考え得るパターンは、大雑把に言って「千歳~南千歳ですれ違う」「南千歳駅構内ですれ違う」の2種類に分類できる。前者を左側、後者を右側に配置するとともに、貨物列車が「エアポート号に追いつかない、かつ追いつかれない」ように配置したのが、以下図1である。
図1:エアポート号同士がすれ違う位置で二通りに場合分けしたダイヤパターン。議論を単純にするため、エアポート号の空港駅発車時刻は、いずれのパターンでも12N分ちょうどとした。
 この時、貨物列車の時刻は一意に定まらないため、設定しうる時刻を帯状に表すことにした(※貨物列車を帯状に描画する際は、15秒ずつずらしてコピペしている。)。ここで、貨物列車同士がすれ違う位置について、左右それぞれのパターンで比較したい。単線区間である札幌貨物ターミナル~新札幌(駅北方の平面交差)で貨物列車がすれ違うのを防ごうとすると、右側のパターンよりも、左側のパターンの方が、貨物列車設定の自由度が高いことが分かる。貨物列車同士が単線区間ですれ違わないようにしようとすると、右側のパターンでは、貨物列車の時刻がどちら方面もほぼ1通りに決まってしまうのに対し、左側のパターンでは、少なくとも一方向の貨物列車の時刻は(帯の範囲に収まるなら)比較的自由に決められる。
 というわけで本稿では、エアポート号が千歳~南千歳で行き違うパターン(図1左側)を前提に議論を進めようと思う。エアポート号の新千歳空港駅停車時分は12分と、微小な遅延を調整するための時間がほとんど取れないのが課題であるが、「貨物列車の設定自由度を高める方が、結果的に大規模な遅延を防げる」と考え、本稿ではこのパターンを前提に考えることにする。
 さて次に、図1左側のパターン(新千歳空港駅の停車時間12分+千歳~南千歳にてエアポート号が行き違い) に対し、特急列車の設定を試みる。本稿では、特急列車のスジが必要以上に寝てしまうことが無いよう、「新札幌駅の時点で、札幌行きはエアポート号の直後、札幌発はエアポート号の直前」になるように配置しようと思う。すると図2のように、
図2:北広島以北のみ、特急を設定した図。
札幌行きの特急と札幌(貨)発の貨物列車が交差支障を起こしてしまう。これを避けるための一つの方法として、特急列車を新札幌駅に止めたままにする、というものが考えられるが、あまり長く止めていると、北広島駅で抜かしたはずの普通列車に追いつかれてしまうため、限度はある。限度いっぱいまで止めた場合を想定し、図2では特急列車の一部を帯状に描画している。
 ところで、図2右側の新札幌駅付近(図中オレンジ色の丸印部)で、札幌行き普通列車と札幌(貨)発の貨物列車が交差支障を起こしているが、先ほどの特急列車の場合と異なり、どう頑張っても交差支障を回避することが出来ない。このためやむを得ず、図3のように、札幌行き貨物列車をなるべく図の左側に寄せることにする(≒千歳駅で貨物列車がエアポート号に追いつかない条件下で、可能な限り早くする)。
図3:図2の平面交差を避ける形で修正。一部のエアポート号のスジが寝てしまう難点はある(後述)
  図3は、図2の橙色丸印部で発生した平面交差を避けるため、貨物列車を可能な限り早い側(図の左側)に寄せている。この際、図の緑色丸印部分のエアポート号は、白石駅の手前でどうしても普通列車に追いついてしまうため、スジを寝かせることにした。図3のパターンは、「新札幌駅時点で、札幌行き貨物列車の直後に普通列車が居る場合に限り、その後ろを走るエアポート号のスジが1分程度寝てしまう」という難点を抱えつつも

①快速エアポート号が毎時5本、等間隔に走る
②特急列車、貨物列車のうちいずれか片方を、エアポート号とエアポート号の間に設定できる(エアポート号を抜かさず、エアポート号に抜かされない)
③札幌(貨)発の貨物列車は、どの札幌行き列車とも交差支障を起こさない(厳密には「交差支障は起きうるが、すべてのケースに対し、回避する方法が用意できる」が正しい)

のすべてを満たす形になっている、と考える。
 今回掲載した図で、札幌行きの普通列車に関しては、上野幌~北広島に新駅が無い場合とある場合とを重ねて描画している。新駅が無い場合、北広島で特急列車や貨物列車に抜かれた普通列車は、白石駅まで後続のエアポート号から逃げるのに精一杯の状況である。あえて換言するならば、ボールパーク新駅が待避設備等のない棒線駅の場合、12分間隔でエアポート号を設定しようとすると破綻する。これを防ぐならば、前回記事の通り、北広島→白石に(上野幌2番線以外に)もう1か所追い抜き設備が必要である。 今回掲載した図では、西の里信号場を復活させることを想定しているが、他の駅(例えば上野幌駅)に追い抜き設備を増設しても、おおむね同じようなダイヤ図が得られるであろう。
 
 …とは言うものの、賢明な読者の皆様は、下記のような意見をお持ちかもしれない。例えば、「上記の「破綻」が指す事象はエアポート号が2分程度遅くなるという程度の話であって、エアポート号の札幌駅停車時間6分程度(過去記事参考、白石~手稲に待避設備が事実上無いため)を削ればなんとかなるのでは」「であればいっそのこと、空港発のエアポート号をボールパーク新駅に臨時停車させれば良いのでは」などである。
 球場輸送に関わるエアポート号の臨時停車に関しては、今回記事には含まず別途記事を起こして議論したい。しかし南千歳以南の単線区間を処理しなければならない都合上、新千歳空港行きのエアポート号がボールパーク駅に臨時停車することはまず無いと言って良いだろう。今回使用したパターン(新千歳空港の停車時間が12分しかなく、これ以上削れない)だとなおさらである。