※本文中で使用した快速エアポート号の運転時分は,130km/h運転が行われていた時期のものを参考に,新札幌・北広島・千歳・南千歳の停車時間を合計1分伸ばすことで,現況の所要時間に合わせたものである。
ダイヤパターン作成時に一番頭を悩ませるのは,単線区間の処理方法である。本稿ではまず,南千歳~新千歳空港の単線区間を処理できるダイヤパターンを有限個洗い出し,次に,平和~新札幌での「苫小牧方面行貨物列車」と「札幌方面行旅客列車・貨物列車」との間の平面交差を処理できるかどうかを検討する。下の図1は,エアポート号を12分間隔で等間隔に配置した上で,南千歳~新千歳空港の単線区間に関して二通りに場合分けし,それぞれ描画したものである。
図1:快速エアポート号パターン想定図(左:12分案,右:17分案) |
表1:12分案・17分案比較表
12分案 | 17分案 | |
長所 | ○新札幌駅付近の単線区間で貨物列車どうしが交差支障を起こさないため,貨物ダイヤの設定自由度が高い(「上下線それぞれ」毎時5本まで) →貨物列車の遅延に強い |
○新千歳空港駅折り返し時分が可能な限り長く取られている ○空港行きのエアポート号が遅れても,1分30秒以下であれば,空港行きのエアポート号に影響しない →エアポート号の遅延に強い ○エアポート号と特急列車の乗り換え時間が比較的短い |
短所 | △千歳~南千歳の平面交差の関係で,空港行きのエアポートが少しでも遅延すると,それがそのままそのまま空港発のエアポートに伝播する | △新札幌付近の単線区間で貨物列車どうしが交差支障を起こすため, 貨物列車の設定可能本数が少ない(「上下線合計で」毎時5本まで) △南千歳~新千歳空港の線路が常時埋まっている状態になるので,千歳線の札幌方面の遅延が,そのまま空港行きのエアポートに伝播する |
一長一短であり,比較できるものではないが,今回の内容では12分案・17分案のいずれを採用しても大して変わり映えしないため,便宜上12分案を用いて図示することにする。なお,12分案を使用した理由は,新千歳空港駅の信号設備を改良する理由が説明しやすいためである。
というわけで今回も,最小運転間隔を図示するため,ひとまず図2のようなダイヤ図を作成してみることにする。過去に作成したものと異なる点は,列車間隔に余裕を持たせたことと,上野幌~北広島にボールパーク新駅が開業することを想定していることである。新駅への停車により,運転時分は停車時間を除いて90秒,停車時間を含めて120秒延びることを想定している。また,今後断りの無い限り,ボールパーク新駅には待避設備が無いことを想定して議論を進めてゆく。
図2:特急と快速を交互に配置した場合の最小運転間隔(概念図) |
色々と突っ込みどころ満載の図であるが,特徴的な箇所をいくつか抜粋したい。
①サッポロビール庭園で各駅停車を抜かす特急の前後(島松・千歳のいずれかで各駅停車を抜かす)に配置される快速の間隔が12分をわずかに超えている。
②北広島→白石を無待避で走り抜ける際,快速同士の運転間隔は9分30秒を要している。
③各駅停車がサッポロビール庭園で快速に抜かされる際,恵庭駅での運転間隔が,他の駅や特急列車と比べて長い。
①を受け入れるならば,これまで「札幌駅の配線について…」の記事で出したダイヤパターンの一部は組めないことになってしまう。とはいえ,影響を受けるのは島松以南であり,札幌駅の配線に関する議論を左右しないため,あえて過去記事の図を差し替えることはしないことにする。
②が意味するところは何だろうか。快速と快速の間に特急を1本挟むと12分間隔ぎりぎりであり,かつその場合,特急は新札幌の手前で,快速に追いつかないよう走行することになる。つまり,快速列車が12分間隔で走行し,ボールパーク新駅に各駅停車が停まる場合,特急列車は徐行運転を強いられることになる。上野幌の中線を苫小牧方面に譲る仮定を置く限り,特急を高速走行させるためには,北広島→白石のどこかにもう1か所待避設備が必要となる。
ところで,北海道の鉄道に関して興味をお持ちの読者の皆様は,忘れ去られた待避設備のことを挙げたくて仕方ないのではなかろうか。そう,西の里信号場である。いつの間にか側線が撤去されてしまっているが,ダイヤ編成上,北広島駅で待避するのとほとんど変わり映えがしないため,不要不急設備とみなされても(当時は)致し方なかったのだろう。ところが,西の里(信)~北広島に新駅を作り,普通列車を停車させると事情が変わってくる。図3のように,西の里信号場の札幌方面の線路が復活した場合を想定すると,ボールパーク新駅の停車時間に多少余裕を持たせつつも,12分間隔でのパターン化が可能となる。冬季に除雪する手間がかかるという難点はあるものの,新駅が営業できる(≒西の里信号場を稼働させる)時期をプロ野球の試合が行われる季節に限定すれば,さほど大きな問題にならない,と筆者は考えている。もっとも,ドーム球場で出来るイベントはなにも野球に限られないわけだが…
※上野幌駅に4番線を新設し,必要に応じて上野幌→新札幌の閉塞割を細かくしても同様の効果は得られるし,普通列車からすれば余計な停車回数を喰わずに済むのだが,本記事では,用地の制約が無い西の里信号場案を優先して挙げることにした。
図3:西の里信号場を復活させた場合 |
ところで,せっかく特急を高速で走らせる体で,西の里信号場を復活させる話を出した割には,恵庭以北でスジが寝てしまっている(上野幌~恵庭で平均100km/h程度)。高速化した意味がイマイチ感じられないダイヤになってしまう原因は,間に駅が2つも挟まっているにも関わらず島松~サッポロビール庭園に待避設備が無いことである。
ここで,思い出したように図2の③について解説すると,要はサッポロビール庭園を出る普通列車は,恵庭駅の手前でエアポート号に追いつかないよう配慮する必要がある(逆方向も然り),ということである。つまり,サッポロビール庭園で快速を待避する場合,恵庭駅に快速が停車することによって,列車間隔が余分に空いてしまい,結果的にダイヤ設定の自由度が下がっている現状がある。じゃあもともと通過駅だった恵庭駅に快速を止めなければ良いじゃないか,という
図4:快速エアポート号が恵庭駅を通過した場合 |
図5:恵庭駅に副本線を設置した場合 |
最後になるが,野球の試合終了に合わせた臨時列車(以下「野球臨」)の設定可能性について考察したいと思う。試合終了から30分ほど経過すれば,北広島駅からエアポート号に乗車する乗客も出て来るであろうが,試合終了直後ともなると,一番近い駅に乗客が殺到するであろうから,専用の臨時列車を用意する必要が出よう。そういう意味でパターンダイヤは便利である…というのはともかく,臨時列車を試合終了間際まで置いておく場所が課題となる。そんな中候補になりそうなのが,「西の里信号場の苫小牧方面副本線」「北広島駅の3番線」「島松駅の2番線」である。これらはいずれも配線の都合上,手稲側からの回送ができ,(特急のスジを寝かせさえすれば)試合が長引いてこれらの線路が塞がっていても,通常営業列車のスジを阻害せずに済む。少ない編成数で多くの乗客を運ぶことを考えるなら,西の里→ボールパーク→北広島(折り返し,乗客は快速で移動?)→ボールパーク→札幌,という経路をたどるのが一番効率的であろうから,待避駅としての機能は全部島松駅に押し付ける代わり,北広島駅2番線から札幌方面に出られるように配線改良するのもアリだろう。また「新千歳空港にさえ乗入れなければ」ホームの長さも待避駅の有効長も全体的に有り余っており,長編成の野球臨設定も不可能ではないように思われる。もっともその場合,ボールパーク駅のホーム長さが不足しては元も子もないように思えるが…下図は,西の里信号場に1編成,北広島駅(2番線から札幌方面に出られるよう改造済)に2編成留置することを想定し,17時ちょうどに試合が終了したと仮定して作成したものである。
図6:17時丁度に試合が終了することを想定して作成した図 |
なお,このダイヤ図は引き上げ線を1本も要求しない代わりに,臨時列車が止まっていた場所を緩急接続・追い抜きのために使用するケチなプランである。北広島駅に引き上げ線を設置できれば,もう少し余裕のあるものが作れると考えられる。
というわけで,ここまで千歳線のダイヤパターンを,「快速毎時5本」「上野幌~北広島の新駅開業」の二つを想定して作成して来た。JR北海道としては,あまりお金をかけずに設備改良を実施し,空港や新球場からの旅客から収入を得られれば上出来であろうから,いかにその設備改良の資金を集めて来るかが課題と考えられる。もっとも,西の里信号場や恵庭駅への待避設備増設に関して,必要性を訴えるには「エアポート号を毎時4本から5本に増やした結果,特急の高速運転が不可能になるため」と理由を付ける必要がある(※特急のスジをエアポートと平行になるくらい寝かせると,なくても組める)し,そもそも高速運転をやっていないじゃないか,と言われると辛いものがあるが…
このようなパターンを組んだ際の,札幌駅やその先の区間への影響については,別途論じることにしたい。
なお,図4に札幌方面の列車が図示されていない理由については,皆様への「宿題」とします。
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