まず前回の記事に書いた通り,増発については主に下記の四つの要素から行われるように思われるので,改めて一つ一つ考えてみたいと思う。
1.小田急が保有する車両の数を増やす。直通先の千代田線や常磐線(各駅停車)から車両を借りてくる。
2.列車を速く走らせ,同じ本数を走らせるために必要な車両の数を減らす。その分を増発に充てる。
3.千代田線方面への直通運転の本数を増やし,折り返しのために新宿・代々木上原で止まっている車両を減らす。これで浮いた分だけ増発に充てる。
4.下り列車を途中駅(特に成城学園前・向ヶ丘遊園)で折り返し,新たな上り列車として走らせる。
1.を行うには,相当な投資が必要であったり,直通先の千代田線・常磐線の減便を伴うため,現実的ではないように思うので,ひとまず2.に着目してみたいと思う。とある新聞報道(正確には,2016年4月28日の日経電子版の記事)によると,急行列車の町田→新宿が,現行の48分から38分に短縮される,と記載がある。 この記事を参考に,ひとまず現行の優等列車のスジを10分ほど立てることを想定し,以下の図を書いてみる。なお,今回の記事でベースとするダイヤ図・時刻表データは,すべて2014年春改正時点でのダイヤとする。(←最新版の運用を調べるのがめんどくさいからです。すみません。)
太線のうち実線が増発,点線が減便である。赤く着色した個所を例にとると,現行の町田→新宿が47分なのに対し,計画では37分と10分短縮したことになる。10分早く着くことにより,現行で言うところの2本前の急行に追いつくことになる。これによって「同じ輸送力を確保するため必要な電車の編成数が2編成減る」ことになるので,同じ電車の編成数なら2本増発できることになる。
3.に関して同記事に言及があるかというと,「千代田線への直通列車を5本から12本に増やす」と言及がある。ここで,千代田線への直通列車を1本増やすごとに,「千代田線が代々木上原で折り返すための所要時間(約8分程度)」が浮くことになる(新宿折り返し分の約6分と,新宿~代々木上原の往復所要時間は,この区間が減便されるわけではないのでここでは計上しない)。一方で,都心(例えば新宿駅)と郊外(一番近い折り返し拠点である向ヶ丘遊園)の間を急行列車として往復するだけでも50分近くかかるので,千代田線直通を7本増やして代々木上原折り返しを7本減らして8×7=56分浮かせても,せいぜい1編成しか浮かないことになってしまう。
しかし,2.と3.を頑張って組み合わせても,せっかく複々線化したのに列車が2+1=3本しか増えないというのはいささか寂しすぎる気がしてこないだろうか。上記の新聞記事によれば,ピーク時は1時間に27本から36本に増発することになっているはずである。
そこで着目されるべきは4.で挙げた「向ヶ丘遊園駅・成城学園前駅始発の列車」である。そもそも複々線化はほぼ東京都内の区間に限られており,複線の川崎市側で毎時36本も運転するのは厳しい。すなわち, 増発されるべき9本分は向ヶ丘遊園ないし成城学園前のいずれかの駅の始発列車になると考えられる。(経堂でもできなくはないが,交差支障があるので折り返しが難しいと思われる。)
2014年時点の時刻表によると,向ヶ丘遊園駅始発の列車は,6時28分発の後8時26分まで無い。理由は単純で,始発を作ったところで結局下北沢で詰まってしまうためである。この影響で,向ヶ丘遊園や成城学園前で折り返していればラッシュの戦力になれるはずの列車が,そのまま下り方面に走って行ってしまい,場合によってはそのまま車庫に入っていわゆる昼寝をしてしまう。これではあまりにも勿体ないので,2014年時点のダイヤ図をもとに,何本くらい向ヶ丘遊園・成城学園前始発を設定できるか,下記の図のように考えてみた。
実線を増発する代わりに点線を減便するわけだが,下り列車を減便することにより,5本程度であれば向ヶ丘遊園始発の列車が設定できる。2.や3.で増便する列車が向ヶ丘遊園始発になると考えれば,5本と言わずもっと多く設定されても不思議ではない。また,新聞記事の通り9本(27→36本)増発するのであれば,「速達化で2本+直通列車の増で1本+向ヶ丘遊園での折り返しで5本」増えることで,割とつじつまが合うと考えられる(※遠方向けの有料特急も増えると思われるが,本稿では深入りしない)。物価も家賃も都内に比べて安いので,実際「向ヶ丘遊園近辺でアパート借りて住むのも悪くないんじゃないか?」と思い始めたところである。
上記の図だと成城学園前始発が1本しか増えていないことになるが,個人的な感覚としては,成城学園前始発はもっと増えても良いように思う。そう思い始めたきっかけは,「代々木八幡駅のホーム10両化(2018年秋予定)が,下北沢付近の複々線化(2018年春予定)に間に合わないこと」である。
代々木八幡駅のホームに10両編成が停車できるようになると,各駅停車も10両編成にすることが(理論上は)可能になる。各駅停車を10両化するならば,現在一番混んでいる時間帯の各駅停車を10両化するのが一番のサービス向上と言うべきであろう。下記のダイヤ図は,2014年現在8両編成で運転されている列車のみを図示したものなのだが,ここでは着色した11個の運用が激しく混雑し,ここを優先的に10両化するものと仮定して話を進めていく。
今持っている8両編成の一部を10両編成に改造する必要が出るわけだが,そんなにいっぺんに改造できるわけではないので,おそらく改造の進捗に合わせて少しずつ10両化していくものと思われる。そのため,本稿では「10両編成化された後も,当分は各駅停車のみとして運用される」と仮定して筆を進める。また,昼間の各駅停車に10両編成を使うのは動力費の観点から好ましくない(乗車率が低い上,そもそも各駅停車は急行に比べて電気を喰う)ため,「10両化する」運用は可能な限り昼寝させる方向で考えるべきだろう。
ところが,実際は各駅停車の多くが同じ駅(本厚木駅)で折り返しているため,最混雑時間帯の各停を集中的に10両化すると,その後の各停が「特定の時間帯だけ」10両編成だらけになってしまう。上図の例では,新百合ヶ丘10時台上りの各駅停車が10両編成だらけになってしまっている。これを防ぐためには,折り返しを駆使して少しでも10両編成の塊を散らすしか無い。一方で向ヶ丘遊園は始発優等列車の増発という役割を兼ねている上,各駅停車が折り返す際は交差支障を生じる(下りは大して変わらない説があるが,それは置いておいて)ため,支障の少ない成城学園前駅に白羽の矢が立つのではないか,と考えている。
というわけで今回は,小田急線の複々線化に伴う増発について,新聞記事と照らし合わせながら考えてみた。新聞記事は,町田以遠の遠距離通勤客にとって利便性が向上する,という趣旨であったが,あくまでも筆者の私見によれば,通勤が快適になるのは,むしろ始発列車の恩恵を受けられる近距離客(特に向ヶ丘遊園・成城学園前)ではないか,と思われる。
個人的に,快適通勤ムーブメントなり時差Bizなりに関して書きたいところでもあるのだが,この記事と共通する部分もあればそうでない部分もあるので,近いうちに別途記事を起こすことにしたい。
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