http://toyokeizai.net/articles/-/130415
に譲るが,かなり大がかりな政策であるがゆえに,実現性を疑問視する声も上がっている。たとえば杉山淳一氏は「週刊鉄道経済」
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1608/05/news036.html
にて,「時差出勤や,通勤手当の上限引き下げが現実的」との立場を表明している。
筆者はここで,弊ブログの一記事「ゆう活と時差出勤と増発と」にて,「時差出勤に対する政府の要請が肝要」と書いたばかりなのを思い出す。この時は東海道線・高崎線を対象とし,早朝に増発する可能性を探ったものだが,時差出勤を公約として掲げる知事候補が当選した以上,もう少し幅広く考察してみようと思う。
まず考察の前置きとして,出勤時刻を繰り上げるか繰り下げるか,という点を整理しようと思う。このページでは列車運転計画を扱うものであるから,繰り上げ・繰り下げの分類は「都心からの距離」で分類されることが自然と思うので,出勤時刻について「遠距離通勤を繰り上げ,近距離通勤を繰り下げ」「遠距離通勤を繰り下げ,近距離通勤を繰り上げ」の二通りを考える。結論から先に書くと,筆者は「遠距離通勤を繰り上げ,近距離通勤を繰り下げ」に賛成である。理由を以下に列記しようと思う。
1.都心以外の各都市への通勤客とピークを重ねないため
都心への通勤客の混雑ピークと都心以外の各都市への混雑ピークを重ねないことを念頭に置く。「都心への」遠距離通勤客の出勤時刻を繰り下げると,都心以外の各都市への通勤客のピークと重なってしまい,これを避けたいため。
2.車庫が一般に郊外に置かれがちであるため
鉄道各社が列車を夜間に留置する車庫は地価の観点から郊外に置かれることが自然である。郊外に車庫を持つ路線で,ある列車を2度朝ラッシュに充当するには,下図のように「郊外の車庫→都心→中間駅折り返し→都心」の順に走る必要があるため。
遠距離通勤客の出勤時刻を繰り上げることにはもちろんデメリットもある。特に保育園に子供を預ける場合,保育園の始業時間まで待てないケースが出て来ると思われる。とはいえ,遠距離通勤客の出勤時刻繰り上げは大域的なもので,全員に無理矢理当てはめる必要はないし,夫婦での分業(例えば一方が子供を預け,もう一方が引き取る)も考え得る。
こうした観点から,当記事では「遠距離通勤客の出勤時間の繰り上げ,近距離通勤客の出勤時間の繰り下げ」を念頭に置き,これに相応な列車運転計画を組むには…ということで具体例に立ち入ることにする。筆者は,「遠距離通勤客の出勤時刻を7時半から8時」「近距離通勤客の出勤時刻を9時半から10時」に振り替えた場合について想定することにした。
筆者が列車運転計画について考える際,オフピーク通勤に協力する乗客に対して何かメリットを与えることを考えている。将来的には時間帯によって運賃に格差をつけることになると考えられるが,当記事では「速達化」「着席効用」などで還元することを考えている。上の図のようなダイヤ図で,豊田→東京→武蔵小金井→東京のように走る列車について考えるとき,「1本目の豊田→東京は速達性を重視し,2本目の武蔵小金井→東京は着席効用を重視する」ことにすれば,遠距離客,近距離客の双方にメリットのある運用が作れるのではないか?という発想に至る。そこでまず,早朝に速達列車を入れることを考えるのだが,入れる場所として一番有力なのは特急や通勤ライナーのすぐ前かすぐ後ろである。二本連続で通過待ちをすることによって列車増発・速達化を行った例として東海道新幹線があまりにも有名だが,ここでもそれに倣った。
赤実線が増発,赤点線が減便。左端は朝6時15分,右端は7時45分。 |
もちろん難点もあって,それは通勤特快が速すぎるせいでライナー券の売り上げが下がってしまうことである。ライナーのすぐ横に平行ダイヤで入れるのだから当たり前の話である。筆者も,青梅ライナーの横には八王子方面始発を入れ,中央ライナーの横には青梅ライナーを置くよう少しは考えて配置したつもりなのだが,割と言い訳の効かない事態である。
次に,近距離通勤客向けに始発列車を遅い時間帯に入れることを考えるのだが,
左端が7時45分,右端が9時15分。豊田8:59発(844T)までは10時出勤に間に合いそう。 |
もともと8時台に武蔵小金井始発は結構いっぱいいるので,多少増やす程度にとどまってしまう。ここで,705T列車が8時12分に豊田に到着して以後動いていないことにお気づきかもしれないが,この列車を東京方面に折り返したところで,上り列車を入れる場所が見当たらないため,あえてそのままとしている。
ここまで,中央線快速電車を対象にしながら,時差出勤に関するポリシーについて考えてみた。ほかの路線についても考えてはみたいのだが,時間の制約から機会を改めることにする。
時差出勤に際しては「政府の要請が肝要」と書いたばかりだが,こういった機会のある以上,今後より具体的な議論が起これば幸いであると考える。