西九州新幹線(武雄温泉~長崎)の開業が令和4年9月23日に予定されている。これを受けて本記事では、具体的にどのような列車運転計画が作成されるか、予測を試みることにする。まず最初に、ダイヤを予想する上で最も決め手となりやすい「博多駅における新幹線の着発時刻」に着目した上で、以下の図を作成する。
図1:博多駅付近パターンダイヤ図 |
図中で小さく表記された数字は「毎時N分」を表し、駅に近い側が到着時刻、遠い側が発時刻である。博多~鳥栖の普通列車や快速列車が毎時3本を基調に組まれていることから、特急列車は20分ずつの等間隔に3本配置するのが理想と想定すると、図1のような特急列車設定用の「枠」が上下3つずつ設定できる(※所要時間は最も速いかもめ号を想定した)。これらのうちどれを佐世保線系統に割り振るかで、上り3通り×下り3通りで計9通りの組み合わせが考えられるが、本稿ではまず、新幹線との接続関係が上下線で対称であると仮定する。すると、上図の枠A・枠B・枠Cのいずれか1個に対し、佐世保線方面の特急列車を割り当てることで、ダイヤの概略形を定めることが出来る。本稿では、上記の枠B(緑色)に対して佐世保線特急を割り振ることを想定し、具体的なダイヤ図に落とし込んでいく。理由は以下のとおりである。
・リレーかもめ号の武雄温泉駅折り返し停車時間が最小(12分)になる。佐世保線特急は武雄温泉駅付近での行き違いが想定されるため、その際に武雄温泉駅で必要となるホームの数が少なくできる。
・新幹線の最速達列車を枠A、各駅停車を枠Cに割り振ると、接続関係のバランスが比較的良い。
図2:佐世保線特急を枠Bに割り振ることを想定したダイヤ図 |
さて、ここで多少話題がそれるが、今から20年ほど前のダイヤ改正時点の情報を用い、図1同様に九州全体を図示すると図3のようになる。
2001年は、九州の在来線特急用車両が概ね出揃った時期である。まだ新幹線が博多までしか開業していないが、現在から見ても非常に精緻なパターンダイヤが組まれている印象を受ける。かもめ号が毎時2本走っていた時期に、うち1本に対して885系が新しく投入されてから間もない頃のダイヤだが、博多~諫早を僅か90分で結んでおり、令和4年5月現在と比べても10分弱早く到着する。一方で、図2をよく見ると、枠Cにおける博多~諫早の所要時間は約85分である。
図3:九州全体パターンダイヤ図(2001年) |
現在、かもめ号は1時間に1本しか運転されていないが、この理屈から行くと輸送力は枠C(武雄温泉~長崎で各駅停車)だけで足りてしまう公算となる。ところが、博多~諫早の所要時間で885系登場時(90分)と枠C(新幹線区間で各駅停車、85分)とを比べると僅か5分しか差がつかず、西九州新幹線の正当性を大きく揺るがす懸念がある。さらに、枠Cに783系を割り当てると博多~諫早の所要時間が90分を超えてしまい、「従前の特急より遅い」という批判すら来かねない。このため本稿では、開業後数年間は仮に乗車率が低迷し「空気輸送」と揶揄されようと、枠Aのスジを削減せず、毎時2本(枠A、枠Cいずれも)運行するものと想定せざるを得ない。また、枠Cのリレーかもめの車種として885系を想定したのも、博多~諫早で20年前のかもめ号に抜かされないことを念頭に置いたためである。
ところで、令和4年4月28日付けでJR九州から発出されたプレスリリースによると、現時点での時刻表案が各駅に掲示されている模様である。インターネット上に出回っている画像(特に、肥前山口駅の下り線と、肥前鹿島駅の上り線のもの)を参照する限り、昼間は下り線が枠B、上り線が枠Cを使用している一方で、夕方は下り線が枠A、上り線が枠Bを使用している模様である。「新幹線との接続関係が上下線で対称」という上記の仮定を崩せば、例えば「下り線の枠C、上り線の枠Aが佐世保線特急である」のような仮定を置くことで、時刻表案と整合の取れるダイヤ図を作成できると考えられる。「新幹線との接続関係が上下線で対称」という仮定を崩した場合のダイヤ図は機会を改めて別途作成することとする。