今回は、2020年12月18日に発表のあった、JR東日本のダイヤ改正概要のうち、朝ラッシュ時間帯の輸送力に関するもの、及び11月10日に発表されていた「多様化する通勤スタイルに合わせたJRE POINTの新サービスについて」について記したいと思う。
今回のダイヤ改正に関する内容のうち、終電繰り上げに関連した早朝時間帯の減便を除くと、朝ラッシュ時間帯に関するものは意外と少なく、山手線及び宇都宮線の朝通勤時間帯本数見直しくらいのように見受けられる。前者は、車両の置き換え及びホームドア設置駅の増加に伴うものと見受けられるため、本稿での深入りは避ける。一方で後者の原因として思い当たるものは今のところないが、「下り列車を減便する旨の記載が、昼間の本数見直しと区別しにくい」ため、どれだろうとは言いづらい状況である。以前から書いているように、上野止まりのグリーン車に比較的空席が見られるのと、折り返しの下り列車が減便対象外なのとから思うに、上野折り返しがそのまま旅客列車に充当されない、朝遅い時間帯の上野止まり530M~534M(上野8:38~9:11着)あたりと思われるが、減便する代わりにどこかを増発するわけでもなさそうなので、浮いた車両の行方が気になるところである。
一方、JREポイントの付与については、11月10日の時点で概ね概要が発表されており、筆者が意図的に見逃していたことになる。しかし12月16日のJR西日本による社長会見、及びそれを受けて起こした前回記事と比較検討する必要が改めて生じたことから、今回筆を起こすに至った次第である。
図1: JR東日本特設ページから抜粋・一部編集 |
JR西日本の取り組みと比較すると、主として以下の2点が異なっている。
・JR東日本は、早朝時間帯も対象にしているが、JR西日本はしていない。ただしピーク前とピーク後で還元されるポイントの量が異なる。
・JR西日本は、改札を出場する時間帯で区切っているが、JR東日本は入場する時間帯で区切っている。
筆者は以前から、オフピーク時間帯より前の時間帯にどのように手を入れるか興味があったので、オフピーク前時間帯も対象としたことは評価できると考えている。一方で、ピーク後時間帯の方がポイント還元率が高いので、「本音は、オフピーク後に流れて欲しい」という事情も伺える。
ところで、入場・出場どちらの時間帯で区切るべきかの議論であるが、朝ラッシュ時に絞って考えると、一般的には出場時間帯で区切った方が効果が分かりやすいと考えられる。なぜなら、混雑ピークの発生原因の多くは(家の近くの目的地を「学校を選ぶ」という方法で選択できる学生を除き)出社時刻の選択自由度の低さにあるからである。一方で、JR東日本単独では出札時刻を正確に検知出来ない路線がいくつか存在し、その原因が相互直通運転(中央・総武緩行線、常磐緩行線)にあることから、入場時間帯で区切らざるを得ない事情も理解できる。
入場時間帯で区切ることにより、良く言えば、ポイント還元時間帯を各路線の混雑状況に合わせて設定しやすくなるが、悪く言えば、そのルールが非常に分かりづらくなってしまう。筆者個人の都合で言えば、「改札に入る時点で、特定の列車が駅を通過する前、または後」でも構わないのだが、あまりにルールが複雑だとそもそも仕組みとして浸透しない。公式HPには「2021年春から1年間の期間限定での実施を予定しています。」と記載があることから、好意的に解釈すれば「失敗しても取り下げられる」のだが、そこまでしてまで複雑なルールを設定する根拠も乏しいので、「ある程度路線図を色分けして、ピーク前・ピーク後の時間帯を、30分単位で設定する」という仮説を立てたいと思う。本稿では、以前から話題提起している上野東京ラインについて、どの区間でどの時間帯をオフピークにするだろうか?という観点から、仮説を立てることを試みる。
図2:上野東京ライン オフピーク時間帯(2021年度)仮説 |
国交省が出しているピーク時間帯の混雑率データにおいて「ピーク」とされている1時間の概ね最初か最後になる列車を、京浜東北線も含めて図示したのが赤い太線、グリーン車が毎日のように満席になっている中距離電車が茶色い太線、追加料金が発生する列車が青い細線である。当方で赤い枠で囲ったのが「ピーク前」を推測したもの、青い枠で囲ったのが「ピーク後」を推測したものである。具体的には、
東海道線戸塚以南:6時台の混雑が群を抜いて激しいのでピーク前は6時まで、オフピークは東京駅9時以降着から逆算し、安全を見て8時半以降
京浜東北線区間:極力分かりやすくするため7時から9時を除いて対象とする
※大船駅は東海道線に流入する懸念が大きいので含まない。根岸線の区間をどうするかは要検討(6時までにすると効果が小さいし、7時までにするとピーク時間帯に客が流入する。かといって6時半にするとルールが分かりづらくなる)。大宮駅を含むかどうかだが、大船~品川と比べると、大宮~上野間で緩行線との所要時間差が小さいので、大宮駅で着席できる効用の方が大きいため、大船駅と違って無理に除外しなくても良いように思う。
大宮以北:大宮6時台後半と8時台前半に誘導したいが、大宮以北の距離・乗車時間が全体的に大きいので、ピーク前は6時半、ピーク後は8時とした。大宮着6時台前半は輸送力が小さいので、これも極力誘導したくないのが実態。
今回は議論を極力単純にするため、このような強引な仮定を置いたが、実現まであと3ヶ月程度しかないことから、このような議論は、すでにJR東日本内部では概ね完了しているものと思われる。どのような形で実現するのか、興味津々で見守る所存である。