ではまず、下図を見ていただきたい。これは、現在の時刻表を参考にしながら、「全ての列車が各駅停車で吉祥寺行き」という仮定の下、筆者が独自に作成したものである。
この手の図を初めてご覧になる方のために説明すると、この図はしばしば「列車運行図表」もしくは「ダイヤグラム」と呼ばれ、縦軸が距離、横軸が時間を表す。線一本は列車一本を表し、横軸の目盛は(この図の場合)1目盛りあたり1分である。
ところで、ごく一部に赤くて太い線があることに着目いただきたい。これはある1編成の「列車」を太線にしたものである。 この1編成の「列車」の動きを追ってみることにしよう。 この列車は7時ちょうどに渋谷駅を出て、7時27分20秒に吉祥寺駅に到着し、7時30分ちょうどに吉祥寺駅を発車した上で、8時00分50秒に渋谷駅に戻ってくる。もう一度渋谷駅を出るのは8時04分ちょうど、一周回るのに7時ちょうどから8時04分まで合計64分かかることになる。2分(120秒)に1本列車が出発するとすれば、
64(分)÷2(分間隔)=32(編成)
から、全部で32編成の列車が、この路線の中を走っているとわかるだろう。この図にも、各編成に番号を振ったつもりなのだが、小さくて見づらいかもしれない。
ご存知の方はご存知かもしれないが、実在の井の頭線に在籍する列車は29編成しかない。さらに、実在の列車は検査の都合などもあって、何編成かは休んでいると考えてよく、実際に走れる列車の数はもう少し小さくなる。例えばこの路線の場合、過去のダイヤを参考にすると、26から27編成が通例とみられている。そのため、このような列車ダイヤを組むことは出来ないのだが、話をわかりやすくするため、あえて実在出来ない図をそのまま用いている。なお、実在の井の頭線では、列車編成の数が不足する分を補うべく、何本かの列車が富士見ヶ丘駅で折り返している。
さて話が多少脱線してしまったが、ここからは千鳥停車の原理に関して書くことにする。一口に千鳥停車といえども様々なパターンが存在するが、ここでは「沿線革命017」にあったものを中心に説明しよう。沿線革命017から図をそのまま引用するが、停車駅のパターンを以下のように
3駅に1駅通過するように作る。これまで存在した列車種別と違って、上下の別(例えば、特急の止まる駅は急行も必ず止まる)は無い。これをA→B→C→Aの順(あるいはその逆)で順序良く出発させる。こうすることによって、どの駅からどの駅への移動であっても、多くても1回乗り換えれば可能になる。これを基にして、先ほど作成した列車ダイヤを、2分に1本という列車間隔はそのままに、千鳥停車を使って組み替えると、おおよそ以下のようになる。
今度は太い黒線に着目いただくと、7時ちょうどに渋谷駅を出た列車は、7時21分10秒に吉祥寺駅に到着し、7時24分ちょうどに吉祥寺駅を発車した上で、7時47分50秒に渋谷駅に戻ってくる。再び渋谷駅を発車するのが7時50分ということで、一周の所要時間は50分、必要な列車の編成数は、
50(分)÷2(分間隔)=25(編成)
から、25編成と求めることができる。
吉祥寺→渋谷の所要時間で比較すると、従来の30分50秒から23分50秒に短縮されている。停車駅を少なくすれば目的地に早く着けるようになる、というのは当たり前のように見えるが、これまで朝ラッシュ時間帯には実現できていなかった。なぜなら、朝のように列車本数が多い時には、列車がしばしば詰まってしまうので、一番鈍い電車に合わせて所要時間が決まってしまうためである。千鳥停車のミソは、一番鈍い各駅停車をなくしてしまうことにある、と考えてよいだろう。
さて、賢明な読者の皆様は、いくつかの事実にお気づきと思う。例えば、「(図中の)赤い列車と緑の列車の間隔が空きすぎているのでは?」である。下記に、前掲の図を拡大して載せたが、赤い列車と緑の列車の間だけ、3分も開いてしまっており、もう少し詰められるのでは、というご感想をお持ちの方もおいでだろう。
次回は、これに対してを中心に、少しばかりではあるだろうがコメントしていこうと思う。
0 件のコメント:
コメントを投稿