各駅停車のみ:毎時30本、吉祥寺→渋谷30分50秒、列車32編成
千鳥停車導入:毎時30本、吉祥寺→渋谷23分50秒、列車25編成
であった。
こうして見てみると、「サービス向上のためと言いつつ減便じゃないか」とご指摘の方もおいでだろう。その通りである。考えてみれば優等列車の導入でも高速化でもなんでも、サービス向上はコスト削減と両立できない限りなかなか実施されないのだし、時にコスト削減のためにサービス向上するケースがあったって不思議ではないのだ。 とはいえ、朝の混雑を尻目に車庫に電車が朝寝(?)していたら、乗客の不満轟々であろうし、せっかくこれだけ編成の数が浮いたのだから、もっと本数を増やせないかと考えることもできる。
ここで前回記事の最後に登場した図の出番である。
実はこのダイヤ、赤い列車と緑の列車の間だけ、3分間隔になってしまっている。ここを2分間隔まで詰めることができないか、と考えると、以下のような図が出てくることになる。
赤い列車と緑の列車の間を1分詰めるので、6分に3本だった列車が5分に3本になるのだから、1時間あたりに換算すると36本ということになる。要は、
5分÷3本=1分40秒間隔
1時間÷1分40秒=36本/時
ということだ。列車編成の数は、詳しい計算は省くが31編成であり、すべて各駅停車の場合と比べても大した増加にならない。
ここで何よりも先に、はたしてこんなことが可能なのか、という問いに答える必要があろう。何しろ、これと同じ条件の下で、1時間当たり36本も列車を出す鉄道路線は、現時点で日本のどこにも無いのである。列車同士の間隔はしばしば、1分50秒から2分程度が限界とされているし、いま現在の列車ダイヤはそれに則って作られている。これが、いったいどのようにして決まっているかを書く必要があろう。
まず、ある列車がある駅を出てから、次の列車が入ってくるまでにかかる時間を計算する。列車の加速度や制動距離、信号の間隔などから求めることになる。この記事では、この間隔を60秒とした。
次に、各駅で乗客が乗り降りするために必要な時間を求める。ここで「求める」とは書いているが、この値は計算して求めるものというよりは、経験的に得られる値である。もちろん、駅によって条件が異なるし、値も異なってくる。ここでは、一番停車時間を長く要する駅に合わせて、これも60秒と仮定した。図中で、下北沢と明大前の停車時間が意図的に長くとられているが、この影響である。
さて、 これを足し算し、120秒という値が出たところで、普通であれば、120秒間隔で各駅停車を走らせるところだろう。
(編注:実際のダイヤでは、125秒間隔が現実的なのだが、説明上計算が面倒なので、あえてキリのいい値を採用した次第である)
しかし、計算の過程を思い出していただきたいのだが、先ほどの「(約)120秒間隔」は2本の列車が両方とも各駅停車の場合の値であって、どちらか、あるいは両方の列車が通過する場合の値ではない、ということである。
では、通過列車のある場合はどうだろうか。たとえば列車が時速54kmで走っているとしよう。秒速15メートルである。わが国では長い間、「鉄道運転規則」に従って、列車の制動距離は、新幹線など特殊な場合を除いて600メートル以内と決められてきた(現在は撤廃)が、600メートル走るのに必要な時間はわずか600÷15=40(秒)である。ごく単純な発想をすれば、40秒間隔で列車を走らせても、追突しないための距離は確保されている、ということになる。井の頭線にかつて信号機が設置されていたころ、信号機の間隔は長くて300メートル程度であったが、1分もあれば信号機3つ分の距離を進めてしまうのだから、青信号になるまで待ったとしても、これで十分なのである。
つまり原理上は、通過列車同士なら1分間隔程度まで縮めることができる、ということである。
実は、これと同じ原理で増便した鉄道路線がある。それは東海道新幹線である。分岐器転換などの都合上、駅を発車する際は3分15秒間隔なのに、通過する列車同士の間隔は2分強まで詰められている。これに疑問を感じる方は、一度こだま号に乗車いただいて、のぞみ号に2本連続で抜かされる際、その時間間隔を測ってみよう。少なくとも私が乗車した際は、実際に観測できた話である。なぜのぞみ号があんなにたくさんあるのか、という問いには、連続して通過列車を走らせるため、という答えが有力になるのである。
というわけで今回は、通過列車が適度に存在すれば、運転間隔をこれまでになく詰められる、ということを紹介した。次回は、以前から心配されていた、混雑偏在について書いていこうと思う。
ここで何よりも先に、はたしてこんなことが可能なのか、という問いに答える必要があろう。何しろ、これと同じ条件の下で、1時間当たり36本も列車を出す鉄道路線は、現時点で日本のどこにも無いのである。列車同士の間隔はしばしば、1分50秒から2分程度が限界とされているし、いま現在の列車ダイヤはそれに則って作られている。これが、いったいどのようにして決まっているかを書く必要があろう。
まず、ある列車がある駅を出てから、次の列車が入ってくるまでにかかる時間を計算する。列車の加速度や制動距離、信号の間隔などから求めることになる。この記事では、この間隔を60秒とした。
次に、各駅で乗客が乗り降りするために必要な時間を求める。ここで「求める」とは書いているが、この値は計算して求めるものというよりは、経験的に得られる値である。もちろん、駅によって条件が異なるし、値も異なってくる。ここでは、一番停車時間を長く要する駅に合わせて、これも60秒と仮定した。図中で、下北沢と明大前の停車時間が意図的に長くとられているが、この影響である。
さて、 これを足し算し、120秒という値が出たところで、普通であれば、120秒間隔で各駅停車を走らせるところだろう。
(編注:実際のダイヤでは、125秒間隔が現実的なのだが、説明上計算が面倒なので、あえてキリのいい値を採用した次第である)
しかし、計算の過程を思い出していただきたいのだが、先ほどの「(約)120秒間隔」は2本の列車が両方とも各駅停車の場合の値であって、どちらか、あるいは両方の列車が通過する場合の値ではない、ということである。
では、通過列車のある場合はどうだろうか。たとえば列車が時速54kmで走っているとしよう。秒速15メートルである。わが国では長い間、「鉄道運転規則」に従って、列車の制動距離は、新幹線など特殊な場合を除いて600メートル以内と決められてきた(現在は撤廃)が、600メートル走るのに必要な時間はわずか600÷15=40(秒)である。ごく単純な発想をすれば、40秒間隔で列車を走らせても、追突しないための距離は確保されている、ということになる。井の頭線にかつて信号機が設置されていたころ、信号機の間隔は長くて300メートル程度であったが、1分もあれば信号機3つ分の距離を進めてしまうのだから、青信号になるまで待ったとしても、これで十分なのである。
つまり原理上は、通過列車同士なら1分間隔程度まで縮めることができる、ということである。
実は、これと同じ原理で増便した鉄道路線がある。それは東海道新幹線である。分岐器転換などの都合上、駅を発車する際は3分15秒間隔なのに、通過する列車同士の間隔は2分強まで詰められている。これに疑問を感じる方は、一度こだま号に乗車いただいて、のぞみ号に2本連続で抜かされる際、その時間間隔を測ってみよう。少なくとも私が乗車した際は、実際に観測できた話である。なぜのぞみ号があんなにたくさんあるのか、という問いには、連続して通過列車を走らせるため、という答えが有力になるのである。
というわけで今回は、通過列車が適度に存在すれば、運転間隔をこれまでになく詰められる、ということを紹介した。次回は、以前から心配されていた、混雑偏在について書いていこうと思う。
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