2016年9月20日火曜日

札幌駅の配線について考えてみる(3)

以前の記事に引き続き,札幌駅の新幹線用ホームを現在の1・2番線の位置に建設したとき(上の図の状態),どのような問題が生じるか,いろいろと検討してみようと思う。
 本来は,前回作成したパターンに丸一日分のダイヤを当てはめ, 「何時ごろここが足りない」などの議論をすべきところであるし,筆者自身もそのつもりで準備してきた。しかしながら,筆者自身の都合により腰を据えて取り組むことが出来なかったことと,どうやらこの問題に対し9月中をめどに結論を出そうとしているらしいと耳にしたこと,この二点を理由に,未完成のままひとまず文章として書き起こすことを決めた。

 筆者自身の手元では,ダイヤをパターン化(千歳線は15分周期,函館線は30分周期)し,おおよそ9時から20時を目安にこのパターンにあてはめ,ホームが足りるかどうか検討するつもりで作業を進めてきたため,その一部を図示してみた。
図2:現行のダイヤを筆者想定パターンに(無理矢理)あてはめた場合の図
  
 筆者は札幌駅の配線に一番無理が生じると思われる時間帯を「夕刻(ここでいう16時から19時)の手稲方面」 と予想した。というのも,新幹線に1・2番線を譲ってしまうと,まともに運用できる手稲方面ホームが3から5番線しかなくなってしまうためである。苗穂方面が6から11番線まで使えるのとは(札沼線を差し引いても)エラい格差である。時間帯を16時から19時にしたのは札幌着の特急が多いためだが,特に16時台は普通列車まで多いことも理由として挙がる。ここをなんとか3から5番線で間に合わせることができないか検討したが,結論から言えば,「条件はつくが,間に合わせることが可能」であった。


 今回は書こうと思っている内容にイマイチまとまりが無いため,以下FAQ形式にて整理しようと思う。

Q1. どの列車を何番線に入れる想定で組んでいるのか?その根拠は?
A1. 以下の通りとした。カッコ内は1時間あたりの本数である。

11:予備
10:札沼線(3)
9:スーパーカムイ(2)
8:いしかりライナー(2),江別方面行普通(最大4)
7:快速エアポート(4),千歳方面行普通(最大4)
6:千歳線始発特急(最大4)
5:千歳線終着特急(最大4)
4:快速エアポート(4),千歳方面発普通(最大4),江別方面発普通(最大2)
3:スーパーカムイ(2),いしかりライナー(2),江別方面発普通(最大2)

これは,以下の点を考慮して決めている。
○快速エアポートといしかりライナー(札幌~江別で快速運転)を可能な限り対面接続させる。これは,現状の長時間停車を見直すとともに,現在札幌どまりのエアポートを手稲以西各停の小樽行きとして運用し,札幌駅での折り返しを減らす狙いもある(そもそもUシート付の6両編成の数が足りてるのか怪しく,かなり無理矢理だが…)。
○千歳線の特急は増結を考慮し,比較的有効長さの大きい3から6番線を使う。しかし,3・4番線は手稲方面の普通列車で埋まっていること,真ん中に寄せた方が苗穂方面に折り返しやすいことの二点を念頭に,5・6番線を基本とした。
○現在の9~11番線は交差支障が多く使い勝手がイマイチ良くないと感じるが,将来の配線改良に期待し,札沼線は北側に寄せる。
○エアポートは苗穂側で分岐制限を受けにくいよう調整した。…と言う割には,上記に従って決めたらたまたまそうなってしまったのが実情。
○余った9番線に始発のスーパーカムイを割り当てる。

Q2. パターンの決定順序は?制約条件として厳しかったのはどこか?
A2. 正確に再現できているとは言えないが,以下の順序で考えた(らしい)。
①スーパーカムイの時刻を現行通り入れる。札幌発0・30分,札幌着25・55分。
②千歳線の特急を札幌発0・15・30・45分とし,南千歳まで標準28分で走破することを想定する。個人的には最高速度120km/hでも十二分に走れる数値と考えている。
ちなみに30の倍数より少し少ない値にしたのは,いわゆるスイス方式に倣うことを想定したためである。スイスの鉄道は,「毎時55分くらいに各線から列車が集まってきて毎時00分にまた発車していく」と同時に,「乗換駅どうしの間を55分程度で走る」ことで,乗り換えの利便性を確保する狙いがある。スイス方式にすると駅のホームがいっぺんに大量に使われるので,この文章の趣旨には反するんですけどね
③千歳方面の快速エアポートを特急に追いつかれない範囲で,かつ間に普通列車が挟まっても逃げ切れるように入れる。このパターンでは特急の4分45秒後としている。北広島で緩急接続を取った普通がサッポロビール庭園まで先行する際,特急のスジが1分ほど寝てしまっているのはご愛嬌。
 この影響で千歳方面行きの普通列車は,すぐ後ろに特急がいる限りサッポロビール庭園に停車する必要が出る。これは,千歳まで逃げ切るのが困難なためである。
※一応,北広島で特急通過待ち→島松でエアポート通過待ちならサッポロビール庭園まで逃げられるし,エアポートの出発が1分ほど早められるが,そこまでする必要はないと判断して今の形にしている。
④厚別で上り普通列車の特急通過待ちをしたくなかったため,江別方面から来る普通列車が札幌駅に到着できる時間帯は限られる(毎時22分から36分,52分から翌6分が到着不可)。この普通列車が遅滞なく札幌駅を発車すると仮定したとき,手稲まで快速に追いつかれないよう,快速エアポートの札幌発車時刻を決める。
⑤南千歳付近でエアポートどうしが交差支障を起こさないことを念頭に,空港発エアポートの札幌停車時間を決める。今回は偶然にも4分に収まったが,南千歳でエアポートどうしが行き違う,従来と異なるパターンに決まった。
⑥エアポートに追いつかない範囲で,かつ普通列車が逃げ切れる範囲で,札幌行きの特急の時刻を決める。

似たようなことは前回も書いているが,改めて文章化してみると長い長い…(汗)

Q3.札幌駅のホームは「条件付きで足りる」ってどういうことよ
A3.条件の一つは「5番線に到着した千歳線からの特急が,到着から10分で札幌駅5番線を離れ,どこかしらの引き上げ線に向かう」である。15分間隔で特急が来ることを想定する以上,停車時間は10分が限度と思われる。ただし,筆者が目視で観察した限りでは,ドア閉めまで5分程度で出来ているので,全くの不可能とは考えていない。

Q4.特に冬季はダイヤ通りの運転は困難ではないか?ダイヤ通り運転できないなら,今までの議論は意味がないのではないか?
A4.筆者の個人的な意見だが,岡山付近の単線区間では似たようなことがすでに起こっている気がする。岡山と瀬戸大橋の間の一部複線化をするにあたって,ダイヤ通りの運転を前提に複線区間を選んでいる気がするのだが,強風でダイヤが乱れると結局収拾がつかなくなってしまう。筆者がこれまで書いてきたことも結局はダイヤ通りの運転が前提なので,この懸念は当然と思うし,筆者自身も懸念しているところである。
 とはいえダイヤ乱れ時のホームは何本あっても足りないわけで,そこまで考慮していては議論が進まないので,これまであえて避けていたのも事実である。

Q5.では,ダイヤ乱れ対策は何も考えないのか?
A5.今までFAQ形式で整理した理由として,パターンを組む際にどこが「しんどい」かをあらかじめ明らかにしよう,というものがあった。ダイヤ乱れ時の弱点として露呈することを念頭に置いたものである。ダイヤ乱れが他に伝播しないようにするには,以下のような配線改良を「おねだり」することになると考えている。
札幌駅については図3太線の通り,

図3:ダイヤ乱れ対策と称する渡り線増設候補(案)
○8・9番線が札沼線と交差支障なく利用できるよう渡り線を増設
○9番線から平和方面に出ても10・11番線の厚別方面との交差支障が無いよう渡り線を増設
○5番線から苗穂方面に回送しても平和・厚別方面からの同時進入(3・4番線)を妨げないよう渡り線を増設
あたりが候補となろう。しかし相変わらず3・4番線に大量の本数を負担させているため,あまりにもダイヤ乱れの収拾がつかない時に備え,最後の手段として以下を考えている。
○3・4・5番線の場内閉塞を真ん中で分割して追い込み時間を短くするとともに,いざというときは縦列停車させる。3から6番線の14両(筆者が目視で測定。多少の誤差はすみません…)にも及ぶ有効長を利用できないかという案。
○4・5番線の真ん中あたりに渡り線を置き,手詰まりの際に駅構内で転線する。アムステルダム中央駅の配線をそのまま持ってきたようなものだが,札幌駅の実態に合わない気がしないでもない。

札幌駅の外では,
○厚別駅の上り本線移設
○発寒中央・発寒付近の待避設備新設(ただし,現地にはエレベーターがあるので新設は困難?)
○手稲の小樽側に引き上げ線を「上下線の間に」新設(ただし,本線の移設を伴う)

あたりだろうか。しかし,冬季は使う分岐器を集約した方がいいような気がするので,あまり有効な策としては認められないかもしれない。

Q6.そもそも手稲回送が図示されてないじゃないか
A6.本当はそこまで考えながら組むはずだったところ,9月いっぱいに当方で仕上げられないと判断し,あえて何も書かなかった(すみません…)。


今回はこんなところにして,思い浮かんだものは適宜次回追加していこうと思う。


2016年9月3日土曜日

札幌駅の配線について考えてみる(2)

 
 
図表題:今回作成したパターン(今回の最終形)
先日,北海道に足を運んだ。過去に札幌駅の配線について書き,公開した記事に対し,今回北海道を訪れて得られた知見から,補足を行うことにする。
 まず,筆者が北海道に足を運んだタイミングで台風の影響から列車が次々と運休してしまい,暇を持て余してしまった影響で,札幌近辺の普通列車に乗る機会を得た。実際に乗ってみて判明した,実現困難と思う部分を修正してゆき,ひとまず以下のダイヤパターンを考えてみることにした。
図1:筆者想定ダイヤパターンその1
結構必死こいて考えたつもりなのだが,札幌~南千歳を特急で28分,快速で34分で走ることを前提に,普通列車を「入れられるところに入れてみた」といった感じの図なので,各駅停車がこんなに大量にいるわけではない。
 まず図の下り方向(苫小牧方面)の特急が1分寝てしまっている。北広島で快速エアポートと緩急接続を取ると島松まで逃げ切るのが困難なので,やむを得ず上野幌から島松までの間で1分寝かせる構成にしている。苫小牧方面のサッポロビール庭園は後ろから優等列車に追いかけられている列車はすべて停車する必要が出てしまうので,現在の旅客流動からするとあまり自然な形とは言えないが,優等が速すぎて千歳まで逃げ切るのが困難な状況下では,他に手が無いのが現状である。
 図の上り方向(小樽方面)も,優等列車を1時間に4本ずつほぼ等間隔に並べ,白石と北広島で待避を行っている。東急東横線と同じ本数という過密なダイヤを組むことはまずないであろうが,とりあえず入れようと思えば入るという程度の話である。小樽方面は白石駅で待避が可能で,西の里信号場の有効長さも長いので,上野幌での通過待ちはすべて苫小牧方面に譲ることにした。こうして,上下線で非対称なダイヤパターンが出来たというわけである。
 折り返しという観点からは,比較的無理の少ないパターンにしたつもりなのだが,手稲どまりの各停を置く場所がないという難点は残る。正直なところ,小樽行きの各停をやめてこれも手稲どまりにすれば,折り返し場所にも困らないと思う。朝里・銭函駅の利用者にとっては減便になってしまう(現況の毎時3本→毎時2本に減便)が,現況は等間隔でないし,区間快速を6両化し,新千歳空港方面に直通させるので,輸送力はむしろ増えている(毎時9両→毎時12両)し,ポジティブに考えればサービスアップなんじゃないかと思う。このため,筆者は手稲どまりの置き場所についてあまり気にしていない。
 ちなみに,筆者には(北広島での緩急接続をあきらめない限り)これ以外のパターンが作れなかったので,読者の皆様からよりよいパターンを募集したいところである。


 …とは書いたのだが,実は困難な問題がもう一つ生じている。それは,上りの江別→札幌で待避できないという問題である。 厳密には待避出来ないこともないが,特急に副本線を通過させるのでスピードダウンにつながり,個人的には気が進まない。そのため,
図2:札幌~旭川想定パターン
この図2のようなパターンに限定されてしまうのでは,と考えている。この時,特急の前後に普通列車が入らない時間帯(毎時22分から36分にかけて,毎時52分から翌6分にかけて)が出来てしまう。一方図1では,毎時10・25・40・55分に小樽方面に出発する快速の前に8分ほど,普通列車が発車できない時間帯がある。これは,札幌から手稲まで待避設備が無く,ここを空けておかないと快速のスジが寝てしまうためである。
 このままでも,札幌駅で長時間停車させ,快速が札幌を出発するのを待っていれば良さそうなのだが,この記事の趣旨である「札幌駅の在線時間を極力短くする」に反してしまう。そこでこの記事では,図‐1の小樽方面のスジを丸ごと平行移動することによって,札幌駅での停車時間を圧縮できないか考えてみた。色々と考えてみると,小樽方面のスジを5分前に平行移動することにより,

図‐3:改良ダイヤパターン

 図‐3のようなパターンが得られる。こうすると,ちょうど「江別~札幌で特急待避が出来ない影響で各停が走れない時間帯」と「札幌~手稲で快速待避が出来ない影響で各停が走れない時間帯」を重ねることが出来る。あと,地味に南千歳での特急‐快速間の接続にかかる時間が短くなり,結構大きな効果が得られそうである。
 ただし,この図‐3パターンには致命的な難点がある。それは,南千歳から駒里信号場までの距離が長い割に時間の余裕がなく,行き違いの設定がしんどいという点である。最初からそうならないように設定すれば良さそうだが,現況の時刻表を見ていると,やむを得ず駒里信号場で行き違いせざるを得ない状況が出そうである。どうしたものか…といったところである。

 というわけで,ここまで札幌駅に同時に在線する列車を減らすことを考えながらパターンを組んできた。このパターンを見ている限りでは,3番線(いしかりライナー,スーパーカムイ,普通列車の一部)・4番線(快速エアポート,普通列車の一部)・5番線(千歳線の特急)の3本で強引に回しきれそうな気がしてくる。ダイヤ乱れ時にどうしようという議論も起こるだろうが,3番線から6番線の有効長さは非常に長く14両編成分(筆者が目視で測定。多少の誤差はすみません)のホームがあるため,いっそのこと場内閉塞を東京の満員電車よろしく半分に割り(以下検閲削除。車止めを置く気はない)を検討している。

 次回は,このパターンに現行のダイヤを当てはめながら,出て来る問題点を整理し,どうしようもない点が出てきたところで,配線改良をおねだりする方向で書いてみようと思う。あくまで現時点での筆者の予想だが,以下の点が問題として浮かび上がると思われる。

3から6番線の場内閉塞を半分に分割
9番線と10番線の同時発着
11番線の設置もしくは,9番線を真ん中で分割
手稲駅に入庫とは別に,折り返し専用の引き上げ線を設置
厚別駅の上り本線移設
琴似駅の函館方になにかを新設

図‐4:最終的にはこの形の図に持っていきたいところ(妄想)


2016年8月7日日曜日

都知事公約「満員電車ゼロ」の実現に向けた時差出勤に関する考察

 去る7月31日に行われた都知事選にて当選した小池新知事の公約の一つに「満員電車ゼロ」がある。公約を実現する方策自体は,阿部等氏の著書「満員電車がなくなる日」や東洋経済オンライン
http://toyokeizai.net/articles/-/130415
に譲るが,かなり大がかりな政策であるがゆえに,実現性を疑問視する声も上がっている。たとえば杉山淳一氏は「週刊鉄道経済」
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1608/05/news036.html
にて,「時差出勤や,通勤手当の上限引き下げが現実的」との立場を表明している。
 筆者はここで,弊ブログの一記事「ゆう活と時差出勤と増発と」にて,「時差出勤に対する政府の要請が肝要」と書いたばかりなのを思い出す。この時は東海道線・高崎線を対象とし,早朝に増発する可能性を探ったものだが,時差出勤を公約として掲げる知事候補が当選した以上,もう少し幅広く考察してみようと思う。

 まず考察の前置きとして,出勤時刻を繰り上げるか繰り下げるか,という点を整理しようと思う。このページでは列車運転計画を扱うものであるから,繰り上げ・繰り下げの分類は「都心からの距離」で分類されることが自然と思うので,出勤時刻について「遠距離通勤を繰り上げ,近距離通勤を繰り下げ」「遠距離通勤を繰り下げ,近距離通勤を繰り上げ」の二通りを考える。結論から先に書くと,筆者は「遠距離通勤を繰り上げ,近距離通勤を繰り下げ」に賛成である。理由を以下に列記しようと思う。

1.都心以外の各都市への通勤客とピークを重ねないため
 都心への通勤客の混雑ピークと都心以外の各都市への混雑ピークを重ねないことを念頭に置く。「都心への」遠距離通勤客の出勤時刻を繰り下げると,都心以外の各都市への通勤客のピークと重なってしまい,これを避けたいため。

2.車庫が一般に郊外に置かれがちであるため
 鉄道各社が列車を夜間に留置する車庫は地価の観点から郊外に置かれることが自然である。郊外に車庫を持つ路線で,ある列車を2度朝ラッシュに充当するには,下図のように「郊外の車庫→都心→中間駅折り返し→都心」の順に走る必要があるため。


 遠距離通勤客の出勤時刻を繰り上げることにはもちろんデメリットもある。特に保育園に子供を預ける場合,保育園の始業時間まで待てないケースが出て来ると思われる。とはいえ,遠距離通勤客の出勤時刻繰り上げは大域的なもので,全員に無理矢理当てはめる必要はないし,夫婦での分業(例えば一方が子供を預け,もう一方が引き取る)も考え得る。
 こうした観点から,当記事では「遠距離通勤客の出勤時間の繰り上げ,近距離通勤客の出勤時間の繰り下げ」を念頭に置き,これに相応な列車運転計画を組むには…ということで具体例に立ち入ることにする。筆者は,「遠距離通勤客の出勤時刻を7時半から8時」「近距離通勤客の出勤時刻を9時半から10時」に振り替えた場合について想定することにした。

 筆者が列車運転計画について考える際,オフピーク通勤に協力する乗客に対して何かメリットを与えることを考えている。将来的には時間帯によって運賃に格差をつけることになると考えられるが,当記事では「速達化」「着席効用」などで還元することを考えている。上の図のようなダイヤ図で,豊田→東京→武蔵小金井→東京のように走る列車について考えるとき,「1本目の豊田→東京は速達性を重視し,2本目の武蔵小金井→東京は着席効用を重視する」ことにすれば,遠距離客,近距離客の双方にメリットのある運用が作れるのではないか?という発想に至る。そこでまず,早朝に速達列車を入れることを考えるのだが,入れる場所として一番有力なのは特急や通勤ライナーのすぐ前かすぐ後ろである。二本連続で通過待ちをすることによって列車増発・速達化を行った例として東海道新幹線があまりにも有名だが,ここでもそれに倣った。

赤実線が増発,赤点線が減便。左端は朝6時15分,右端は7時45分。
早朝に特別快速を1本,通勤特快を3本,計4本を増発し,その分快速を3本減便している。こうして見ると1本列車が増えたことになるのだが,投入する列車編成数は増えない。弊所でしばしば主張しているように,速く列車を走らせれば,同一の輸送力なら保有する列車は少なくて済むし,同じ数の列車を使うならば増便できる。こうして見てみると,減便した快速の立川→新宿41分に対し,増便する通勤特快は24分(最速)となる。表定速度で見ると約40km/h→約68km/hであるが,相当な速達化を行うことが出来る。
 もちろん難点もあって,それは通勤特快が速すぎるせいでライナー券の売り上げが下がってしまうことである。ライナーのすぐ横に平行ダイヤで入れるのだから当たり前の話である。筆者も,青梅ライナーの横には八王子方面始発を入れ,中央ライナーの横には青梅ライナーを置くよう少しは考えて配置したつもりなのだが,割と言い訳の効かない事態である。
 次に,近距離通勤客向けに始発列車を遅い時間帯に入れることを考えるのだが,

左端が7時45分,右端が9時15分。豊田8:59発(844T)までは10時出勤に間に合いそう。

  もともと8時台に武蔵小金井始発は結構いっぱいいるので,多少増やす程度にとどまってしまう。ここで,705T列車が8時12分に豊田に到着して以後動いていないことにお気づきかもしれないが,この列車を東京方面に折り返したところで,上り列車を入れる場所が見当たらないため,あえてそのままとしている。木彡並三馬尺を通過すればあっけなく場所を捻出できる気がするのだが,気にしてはいけない。
 ここまで,中央線快速電車を対象にしながら,時差出勤に関するポリシーについて考えてみた。ほかの路線についても考えてはみたいのだが,時間の制約から機会を改めることにする。

 時差出勤に際しては「政府の要請が肝要」と書いたばかりだが,こういった機会のある以上,今後より具体的な議論が起これば幸いであると考える。

 


2016年6月28日火曜日

ゆう活と時差出勤と増発と

 6月24日のこと。新聞・インターネット各誌(?)に,「ゆう活」の文字が今年も躍った。簡単に言うと夏の夕方を有効活用しようということで,国家公務員の終業時間を4時から5時15分あたりに繰り上げようというものである。午前じゃないよ
 最初に断っておくとこれは「全員を」対象としているらしいが,「毎日を」対象としているわけではない。全員が毎日参加してしまうと,共働きの場合は保育園に子供を預けられなくなってしまう。それはともかくとして,これを機に(夏の時間帯は)時差出勤やフレックスタイム制が定着するきっかけになるのなら,それなりに意味のある取り組みのように感じる。

 のだが,ここで筆者が問題視したいのは,早朝(特に6時台)の列車が少なすぎることである。この時刻表をご覧いただきたい。東海道線上りの新橋駅のものだが,
図1 東海道線(上り)新橋駅時刻表(えきから時刻表より抜粋)
7時より前に到着する列車は3本しかない。8時台に到着する列車の本数(19本)とはえらい差である。仮に時差出勤に本気で取り組む企業が増えたとして,早朝の少ない本数で支えきれるだろうか。上記の「ゆう活」から逆算すると早い人は7時半までに霞ケ関に登庁(?)しないといけないらしいのだが,早朝の電車の本数で間に合うのかどうか気になるところである。時差出勤したらいつもより電車が混んでいた…では,せっかくの取り組み効果も薄れてしまう。
  色々と問題が浮き彫りになりそうな話題なのだが,筆者は制度そのものの問題には立ち入らず,現状で早朝の電車をどの程度増発できるか,に絞って筆を進めたいと思う。本稿では,東海道本線東京口,高崎線を対象にしたいと思う。東海道線は,単純に筆者が使っているからという理由であり,高崎線は,2面3線の駅が沢山あるという理由である。2面3線にこだわる理由は…筆を進める間にいずれ説明する。

 まず,この路線が抱える根本的な問題として,路線の長さが他と比べても長いことを挙げる。東京~国府津が77.7km,東京~籠原が67.7km(いずれも営業キロ)もあるので,同じ電車が1日1回しか朝ラッシュの輸送に携われないという難点がある。例えば上記の時刻表で言うと,新橋に5時49分に着く一番列車は高崎駅まで行った後,赤羽駅まで戻ってくると9時半を過ぎてしまう。要は,1回お客さんを都心に運んでおしまい,という電車が大半なのが現状である。距離が短ければ,同じ電車が何往復もして輸送力を稼げば良いのだが,距離の長い路線ではそれが出来ないため,これ以上本数を増やそうとすると電車を買って増やすしかなく,鉄道事業者にとって増便は実現困難と考えられる。

 距離が長いのが原因なら,途中の駅で折り返せばいいじゃないかとお考えのそこのアナタ。ちょっと面倒な話になるが,具体例に踏み込んでみようと思うので,少しばかりおつきあい願いたい。高崎線の2面3線に着目したのは,途中駅で折り返すためである。
 
図2:東海道線ダイヤ図(赤太線は増,赤点線は減)
図2は東海道線について具体例に落とし込んだものである。10・15などの表示は編成両数であり,KやYは車両の所属を表すが正直あまり関係ない。ここでは東京駅到着6時台に3本増やすことを想定している。車両を買ったりせずに増発しようと言い出している根拠は,品川駅に夜間泊まっている(?)何本かの列車を下り回送列車として充当することで,上り列車を増やそうというものである。途中駅の折り返しと何の関係があるのかいまいち釈然としないであろう。実のところ東海道線には折り返しに適した途中駅が少ない上に,数少ない折り返し可能駅では今現在も折り返し運転を駆使して列車を増やしている。筆者は品川から回送列車を充当することを想定したわけだが,何かこう勿体なさを感じる。1本の列車を増やすために回送電車も1本増えるわけだから効率が悪い。もともと駅が少ない上に駅を通過できるため,電気の無駄かというと案外そうでもないのだがそれはともかく。

図3:高崎線ダイヤ図(赤太線は増,赤点線は減)
 ここで,先ほど述べた理由で着目した高崎線に目を移していただく。先ほど東海道線で増発しようとした3本の列車のうち2本は高崎線に入り,途中駅の桶川・北本で折り返すことを想定している(残りの1本は品川始発にくっつけた)。折り返す列車は籠原始発でなくなるので,その2本分は早朝の増発に充てられる,というからくりにしてある。一部減便になってしまうが,上尾で2割ほど混雑率が増すくらいには混雑区間が起点寄りなので,勘弁してほしい(あくまで個人の言い訳)。「吹上から大宮までにお客の数が倍増するのに,籠原から大宮まで同じ輸送力じゃなくてもいいんじゃね」という実にただの㋔㋟㋗らしい安直な発想である。
 
 個人的には,途中駅での折り返しはそれなりに「鉄道事業者側にも」メリットがあると考えている。というのも,始発列車の有無は通勤環境に大きな差をもたらすためである。あえて極端に言えば,始発列車があれば住む人が増える。住宅価格が電車区を境に変わる,という現象は何か所かで観測されているが,電車区が原因かどうか断定できないし,電車区の前後で大して変わらない路線もあるので,証拠としては貧弱なのであえて挙げないけれど。

 
 ここまで,早朝の電車を増便するために,鉄道事業者単体でなんとか出来ないか色々と検討してみた。全くの不可能ではないにしろ,鉄道事業者側のメリットにたどり着くにはあまりにも遠い道のりであることが,読者の皆様にもお分かりいただけたかと思う。
 結局のところ, 政府主導で時差出勤に取り組むにあたって,満員電車の混雑緩和まで含めて議論しようとすると,鉄道事業者に対する「政府の要請」が最も肝要なんじゃないかという気がしてくる。

追伸:最近気づいたのだが,従来10両編成だった1524E列車(国府津5:48→7:05東京7:07→8:58宇都宮)が,2016年3月改正から15両編成に変更され,混雑が大幅に緩和した。もともと本数の少ない早朝には10両編成が結構いるため,早朝の混雑に拍車をかけている感があるが,1本でも多く15両化されれば,混雑緩和につながるに違いない。

2016年6月4日土曜日

小田急線の増発について考えてみた(1)

 先日,札幌駅の配線についていろいろと考察した際,札沼線と苗穂方面の相互直通について考えようとしたところ,「現行普通列車の車両運用が持つかどうか」考えるには,手元の情報が不足していることに気づいた。交通新聞社発刊の「普通列車編成両数表」から得ることが多い情報なのだが,そもそも北海道内の更新が止まっているのと,新幹線開業時にダイヤ改正をしたのとで,欲しい情報を手に入れることが出来ていない。去年の発売日からして6月中旬ごろまで手に入らないだろうと勝手に判断し,札幌駅に関する考察はしばらく延期することにした。

 一方, 小田急線の混雑緩和に関しては以前から興味があったので,細々と調べながら記事にする機会をうかがっていた。記事の方向性が定まってきたので,粗削りの状態ながらも投稿してみようと思う。

 「下北沢駅の緩急分離工事により,2018年3月にダイヤ改正を行い,増便・速達化が可能になる」ことを前提に,議論を進めていこうと思う。ここでは,上記のダイヤ改正に伴って,そもそもどのように増発するのか,どのような変化がありそうか,勝手に予想しながら筆を進めていく。

 某経済新聞いわく,上記の改正をきっかけに,以下のようなことが可能になるらしい。
① 午前7~8時台の上り列車の運行本数は1時間あたり36本
② 千代田線と相互乗り入れする列車も5本から12本にする
③ 町田駅から新宿駅への所要時間は48分から38分に短縮。本厚木駅は現在の66分から10分程度短縮でき,1時間圏内になる。

 複々線化する際に列車を増やすと書いてこそあるものの,いったいどうやって列車を増やすのか,疑問がわいても不思議ではないと思う。そこで本稿では主に,どうやって列車が増えるのか,その原理について考えてみることにする。筆者は,列車増発の方法を主に4つの要素に分解し,一つ一つ考察してみようと思う。

1.小田急が保有する車両の数を増やす。直通先の千代田線や常磐線(各駅停車)から車両を借りてくる。
2.列車を速く走らせ,同じ本数を走らせるために必要な車両の数を減らす。その分を増発に充てる。
3.千代田線方面への直通運転の本数を増やし,折り返しのために新宿・代々木上原で止まっている車両を減らす。これで浮いた分だけ増発に充てる。
4.下り列車を途中駅(特に成城学園前・向ヶ丘遊園)で折り返し,新たな上り列車として走らせる。


 まずは一番わかりやすい1から。もちろん持っている電車の数を増やせば増便できるというのは正しい。が,その分車庫を広くしなければいけないし,これから人口が減っていく国で場合によっては人間より長生きする車両を新たに買うことが,果たしてよい買い物かどうかを検討する必要があるだろう。一番無難な選択肢は,新車への置き換え間近の車両にもう少し頑張ってもらう,というものであろうが,退役間近の車両があったかと聞かれると筆者は答えられない。
 また,千代田線や常磐線から朝だけ車両を借りてくるという手もなくはないだろうが,そのためには千代田線や常磐線を減便する必要が出てしまう。これらの路線で車両の数を増やす予定があるなら,6000系をいまこの時期に引退させてしまうとは考えにくい。

 次に2の項目についてだが,果たして列車を速く走らせると増便できるのか,という声も上がると思うので,少しは分かりやすい例を出し,山手線を用いて説明しようと思う。
 2013年3月時点で,朝ラッシュ時の山手線を一周するのにかかる時間は,外回り・内回りともにおおよそ62分30秒(3750秒)であった。山手線専用の列車が(当時)52編成あるうち2編成が検査等の都合で走らないとして,残りの50編成を内回り・外回りに均等に割り振ると

3750(秒)÷25(編成)=150(秒/編成)
3600(秒/時間) ÷150(秒/編成)=24(編成/時間)

で運転できる計算である。 最近はE235系なる新車も顔を出し始めたが,25編成で回す体制は現在も変わっていないと思われる。ところが2016年3月現在,1周するのにかかる時間が65分から66分に延びてしまっている。計算を簡便にするためにちょうど65分(3900秒)とすると,

3900(秒)÷25(編成)=156(秒/編成)
3600(秒/時間) ÷156(秒/編成)=23.07...(編成/時間)

となっており,実はわずかながら本数が減っているのである。 副都心線・東北縦貫線の開業もあるので実現はしないであろうが,仮に,2013年当時の輸送力を確保しようとすると

3900(秒)÷150(秒/編成)=26(編成)
 
が必要と分かるので,実は電車をもう1編成買う必要が出る。以前からダイヤ通りの運転が難しかったとは聞くものの,ホームドアを設置し遅れにくくなったのに,車両が入れ替わったわけでのに,一周の所要時間が増えた理由は(お察しください)。可動柵の設置によって「輸送力が落ちるデメリット」と「遅延が減るメリット」が相殺するかどうか,ぜひ志の高い方にご考察いただきたいところであるが,ここでは深入りしない。
  余談だが,2013年2月6日のこと。首都圏を大雪が襲うとの予報が前日から出ていたことにより,前日5日17時の時点で,「列車本数を7割程度に間引く」ことが決定された。山手線もこの影響で7割程度の本数(25編成×0.7≒17編成)で運転された(筆者が目視で数えたもの)が,混雑があまりにも激しかったためか,周回の所要時間が100分(6000秒)まで延びてしまっていた(これも筆者が直接測定したもの)。

6000(秒)÷17(編成)≒353(秒/編成)
3600(秒/時間) ÷353(秒/編成)≒10.2(編成/時間)

で,普段の4割しか輸送力がなかったことになる。乗客向けに7割と広報していた割にはえらい差である。たぶん多くの乗客が,「7割と言ってた割には全然来ないじゃないか」と怒っていたはずであるが,どちらの値も間違いではないのである。
 輸送力の単位は「編成数/時間」であり,列車編成数の単位は「編成数/距離」であるこれらは,明確に別物である。前者は24(編成/時間)であり後者は25÷34.5(編成/山手線の周回距離)であって,前者÷後者を計算することで表定速度(約33km/h)を求めることが出来る。
 わざわざ長々と書いたのは,上記2で述べた「列車を速く走らせ,同じ本数を走らせるために必要な車両の数を減らす」原理を説明するためである。「編成数/距離(保有する車両の数)を据え置き,編成数/時間(輸送力)を上げるには,距離/時間(表定速度)を上げればいい」の一言で済む。

 ここでようやく小田急の話に戻すと,某経済新聞が③で謳うように所要時間が10分縮まるなら,10分当たり4本程度電車が来る路線であるので,車両が4編成程度少なくて済むはずである。下りも同様に少なくできるはずだが,上りほど下北沢付近のスジが寝ていないのであえて考慮していない。上りの分だけでも,4編成分程度ではあるが,増発が可能になると考えることが出来るだろう。4編成が朝方に2往復できれば8本の増発になるが,乗客がどの程度増えるかはピークシフトの出来次第である。
 
 本当は3.や4.についても書こうと思ったのだが,あまりにも2.の説明が冗長になってしまったので次回に回す。しつこいようだが,輸送力の単位は「編成数/時間」であり,列車編成数の単位は「編成数/距離」であるこれらは,明確に別物である。一人でも多くの方の頭の隅に置いていただければ,筆者にとってたいへん幸いなことである。

2016年5月22日日曜日

札幌駅の配線について考えてみる(1)

いったい何人の読者がいるか分からないが,長らく放置している間,いろいろ書きたいことが増えてきた。久々に投稿する機会が出来たので,今日ここに投稿してみようと思う。

北海道新幹線が新函館北斗まで開業して以来,しばしば話題に上っている「札幌駅の配線」について,しばし考えてみることにした。とはいっても,都会育ちの筆者にとって,札幌駅は訪れる機会が少ないので,何となく実感の持てないまま筆を進めてしまっている感があるので,是非皆様からご意見等いただきたいところである。

新幹線の札幌延伸に当たってしばしば話題になるのが「札幌駅をどこに置くか」で,札幌駅の(現)1・2番線部分を新幹線に転用できるかどうか,議論の的になっている。ここでは,議論の細かい経緯には立ち入らないことにして,「今の3から10番線だけで札幌駅を回そうとすると,どこがボトルネックになりそうか」調べてみることにする。

まず,議論の前提となる札幌駅の配線図については,筆者が無理矢理デフォルメした図(下記)を掲載しようと思う。一応某ストリートビューで確認はしたつもりだが,間違い等あればご指摘いただければ幸いである。

見づらくてご迷惑をおかけします
図1:札幌駅の配線図(現況)

初めて駅を訪れる少年の心をワクワクさせる配線図なるものも,いざ書き出してみるといくつか特徴があるように見える。真ん中付近の3~8番線はかなり使いやすいように見えるが,それ以外の線路は一部の方向からだとその場では折り返しが出来ず,引き上げ線を通ってから折り返すことを前提に作られているように見える。9・10番線を札沼線に集中的に割り当てることが出来るのは,おそらく今の札沼線本線を(小樽側の引き上げ線を1本減らしてまで)作ったためと思われる。

さて肝心の容量に関する議論を行う際に必要と思うので,現況の列車パターンをある程度整理しておこうと思う。カッコ内は,一時間当たりの本数である。

特急列車
スーパーカムイ(1~2)
スーパー北斗・北斗・スーパーおおぞら・スーパーとかち・オホーツク・スーパー宗谷・サロベツ(不定)

エアポート(4)(うち2本は小樽行き・2本は札幌止まり)
いしかりライナー(2)(札幌~江別快速運転,岩見沢行・江別行1本ずつ)
いしかりライナー(2)(札幌~手稲快速運転,小樽行)

江別行(2),岩見沢行(1)
小樽行(1),ほしみ行(1)
千歳行(3)(一部は苫小牧行)

起終点の対応関係をあえて明示しなかったのは,後で組み替えるときに見やすくするためである。

さて,線路容量の足りる足りないについて議論する際に一番わかりやすい根拠は,「現行の配線の利用状況を調べて,同時に最大何本使っているか調べる」ことと思う。筆者も「鉄道ダイヤ情報」誌が一時期やっていたように丸一日分図示しようと思ったのだが,あまりにも時間がかかるため後回しにした。全国の鉄道ファン・あるいは鉄道趣味誌に先に実現していただけると勝手に期待し,筆者は独自にダイヤパターンを作ることに作業時間を割いた。

というわけで,筆者が勝手に作ったものだが,図示してみようと思う。

図2:札幌駅付近ダイヤパターン(筆者想定)略図

 鉄道ファンにとってダイヤ図と言えば縦軸が距離,横軸が時間のダイヤグラムと思うが,ここではあえて上に掲載したような図で議論を進めたいと思う。スイスではこのような図が広く用いられていて,各駅で接続がどのように取られているか一目でわかるようになっている。なお,スイスではこの接続を徹底するために,乗換駅同士の間の所要時間を,30分・1時間より少し少ないくらいになるよう調整し,速度が遅く達成できない区間に絞って速達化のための線形改良を行っているらしい。
個人的には,接続を「線」ではなく「面」で議論するときに適した図と思う。目的地が札幌一点に偏っていると有用性が100%活かせているか怪しくなってくるが,単に見やすいという理由であえて使ってみた。
図そのものや数字の意味を説明していなかったが,線1本が「1時間につき1本走る列車」を表す。4本あれば毎時4本走るという意味になる。線に数字が書かれているが,駅に近い方が到着時刻,遠い方が出発時刻である。○囲み数字は使用する番線だが,筆者が勝手に付け加えたもので,スイスで使用される図にはこの記述は無かった…はず。進行方向は,日本の鉄道に合わせて左側通行にしたので,たぶんどちらがどちらかご理解いただけるものと勝手に期待する。

まず見ての通り,快速エアポート(札幌どまり)をいしかりライナー(札幌~手稲快速運転)に付け替えている。現在のダイヤをお調べいただければ見ての通り,いしかりライナーは札幌を境に事実上別列車として運行されていて,札幌駅に長時間停車している。線路容量の限界について議論するので,「長時間停車は減らせるだけ減らして分かりやすくしよう」という方針からこのようにした。

次に特急列車について。珍しくパターン化されているスーパーカムイの発着時刻は,可能な限り現行のものをそのまま使っている。一方,千歳線内の特急列車については,1時間に4か所(要は,15分に1か所)走行できるスジを開けておいて,既存の特急を可能な限りこのどこかに当てはめる方針で書いている。とはいえ特に札幌行きの特急が遅れて南千歳に到着することは決して珍しいことではないと思うので,札幌方面の普通列車は特急がどこに突っ込んできてもある程度対応できるようにしておく必要が出るだろう(詳細は後述の予定)。南千歳までの所要時間は,せっかく30分弱で(一部の列車が)走っているのだから,ということで28から29分としてある。冬場は厳しい気がしてならないが,せっかくスイス式の図表を使ったので,見やすいようにしたかったというのもある。30分で物理的に走れない場合については,札幌側のパターンを優先的にそろえることを想定している。

あとは江別方面だが,いしかりライナーを毎時2本等間隔に置くことにした。今は20分‐40分の間隔で置かれているが,特急が1本のパターンと2本のパターンを両方とも考えるのが面倒だから,というだけで,特に深い意味はない。

発着番線は,以下のように割り振ったことになる。
3:スーパーカムイ(2),いしかりライナー(2)
4:エアポート(4)
5:千歳線特急(終着)(最大4)
6:千歳線特急(始発)(最大4)
7:エアポート(4)
8:いしかりライナー(2)
9:札沼線(3)
10:スーパーカムイ(2)

これだけ見ると案外余裕じゃないかと思いたくなるが,上の図には(札沼線を除き)普通列車が明示されていない。普通列車は合間を縫って隙間に入れることになるが,千歳方面に毎時4本,江別方面に毎時3本を想定しているのだが,いったいどこに入れるのかという感がある。詳細についてはこの記事の図に入れておいたのだが,特に4番線回りはかなり無理をしている。

さて,札幌駅のホームを可能な限り埋めないことばかり考えていると,各駅停車を手稲方面に毎時9本(千歳方面4本+いしかりライナー2本+江別方面3本)も入れることになる。もともと多すぎる気はしているのだが,仮に江別方面のうち1本を札幌の桑園側の引き上げ線で返しても毎時8本,快速が毎時4本いてかつ手稲まで待避不可能となると,形が勝手に定まってしまうような気がしている。

各駅停車も含めてダイヤ図にしたものが下の図である。3号から10号まであるが,札幌駅の使用番線である(9番線は札沼線用に空けてある)。別に阪急電鉄にあやかりたかったわけではなく,列車番号以外にスジ上に情報を出す手段が他に思い浮かばなかっただけである。


図3:札幌駅付近ダイヤパターン(筆者の勝手な想定)

この図だけ見るとかなり無理矢理ながらなんとか成立させているように見えるかもしれない。しかし,特急が札幌→手稲を回送する場所がないという致命的な欠陥があるので,まあ確かにホーム足らんわなとなるわけである。これを解消するには「そもそも手稲まで回送させない」「札幌から手稲のどこかに(西の里信号場みたく駅間でもいいから)待避可能な設備を追加する」「手稲方面行きの普通を何本か札沼線に突っ込む」のいずれかが考えられるが,手稲まで回送させない案はすでに琴似駅でカムイ号が実施しているし,待避設備の追加は大半が高架線なのもあってそもそも場所が見当たらないし,八方塞がりな感がある。正直なところ北側にホームを何本追加しようとこの欠陥が解消できないので,「北側にホームを追加しても,在来線への影響が大きく厳しい」という意見も一理あると思うところである。

こんな長ったらしい記事をここまでお読みの皆様が,「そもそも9番・10番線の使い勝手は何とかできないのか」「江別行は札沼線に直通できないのか」などといった考えをお持ちでも,不思議ではないと思う。線路の改良を伴う記述について,今回は見送り,次回書きたいところである。機会と皆様からのご期待があれば。