2019年5月18日土曜日

のぞみ号の増発・毎時12本運転に向けた事前考察(2)

  前回記事に引き続き、2020年春に予定されているのぞみ号の毎時12本運転に伴い、どのようなダイヤが組まれるだろう、という観点から引き続き分析を試みる。今回は特に、「現況ダイヤ(2019.3改正)からのぞみ号をさらに毎時2本増やそうとすると、どのような課題が生じるか」を中心に考察する。
図5:2019年3月改正ダイヤの概要(※一部、筆者による推測を含む)
  図5の各スジに乗っている2桁の数値は、東京駅を毎時何分に出るかを表す。東京駅を毎時10分に出るのぞみ号(博多直通のうち、多くが福山に停まる方)が最も速い(垂直に近い)一方で、他ののぞみ号のスジは何らかの理由で寝ている箇所が散見される。太線はNのつかない700系が運用に就く可能性のあるものを表している。以下、今後のダイヤ改正時に活用できそうな要素を列挙しようと思う。
①図5は最速のぞみ(99号・1号・265号・200号・64号)が垂直になるよう作成しているため、700系が入る可能性のあるのぞみのスジは、N700系との速度差が15km/h分生じるため、多少でも寝かせておく必要がある。この影響で、N700系に統一されたはずののぞみ号のスジが僅かに寝ている箇所が散見される。
②東京駅毎時10分発の博多直通のスジは、2018年3月改正にて東京~新大阪で3分(2時間30分→2時間27分)スピードアップしたものだが、三島以西ではほぼ最速である。
③小田原~三島のスジは、先行列車(特に、こだま号)が居ない場合、比較的自由に立てたり寝かせたり出来る。

 次に、東海道新幹線の増発に当たり、最も本数が多くなりがちな東京駅について、折り返しの現況について整理したいと思う。図6は、2019年3月時点での東京駅において、14番線~19番線がどのように使われているかを表すものである。

図6:17時~19時東京駅折り返し現況
10分間に3本の列車が到着・出発することを、可能な限り簡略化し図示したものである。東京駅に到着・出発する列車どうしの折り返し関係は、東京駅の入線時刻が表記されたJR時刻表からある程度類推可能であるが、折り返し関係が明らかでない列車については、大井車両基地からの回送と見做し、図を作成している。
 この図に2020年春からのぞみ号を毎時2本追加しようにも、 そもそも下り列車を追加する枠がそんなに沢山残っていない。「全列車N700系に統一するのだから、大井回送の数は今ほど多くなくても良いのでは」という意見も出るだろうが、現時点で(下り)大井回送が走っている原因は、この図を見る限り車種の不統一と断定することは出来ない。また、大井回送の枠を減らしてのぞみ号を毎時2本増やすとなると、何かの理由で大井車両基地と車両を入れ替える際に不都合が生じる懸念がある。
図3(再掲):12‐0‐6ダイヤの「10分間隔」の内訳
図7‐1:N700系こだま号の想定性能
一方、前回記事で触れたように、 10分間に2本設定されたのぞみ号が「10分間隔」になる理由は、その隙間にこだま号を挟み、のぞみ号同士を2分30秒離した場合、ほぼ10分間隔になることであった。しかしこの「10分間隔」自体は、のぞみ号がN700系、こだま号が700系の場合でも成立する。となると、「こだま号を加減速自慢のN700系に統一することで、運転間隔はさらに詰められるのでは?」という仮説が立つ。
 そこでまず、(構内に急カーブがある熱海駅を除く)各駅駅間におけるN700系の運転曲線を図7のように想定する。勾配・急カーブのない約18.7kmの駅間で最高速度まで加速しすぐに減速、約7分30秒で駅間を走行したことを想定したものである。
図7‐2:N700系こだま号の想定性能
のぞみ号が285km/hで18.7kmを走行するのに使う時間は3分56秒程度であり、こだま号との時間差は3分30秒前後、 多少余裕を見ても4分あれば足りそうである。図3で、こだま号とのぞみ号との間の時間差を5分と見積もっていたが、こだま号をN700系に統一出来れば、どうも4分で足りるような気がしてくる。この数値を図3にそのまま当てはめると、9分間にのぞみ号を2本、こだま号を1本設定することは出来ないか、という仮説を得る。これを東京駅に当てはめると3分00秒間隔、毎時20本であり、現況ダイヤ(10分に3本、毎時18本)から増える毎時2本の枠を、そのままのぞみ号の増発に充てることが出来る。
 ここまで挙げた問題点を一挙に解決し、「のぞみ号の毎時12本運転」「のぞみ号はすべて、東京~新大阪2時間半」を実現するのには、「全車両のN700系統一」等をきっかけに、「東京駅折り返し時の列車間隔の短縮」「のぞみ号同士の間隔縮小」が行われるのではないか、という仮説を得た。次回以降は、この仮説に基づき、ダイヤ図の形に具体化して落とし込んでいこうと思う。



 



 

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