2019年5月18日土曜日

のぞみ号の増発・毎時12本運転に向けた事前考察(3)

 前回までの記事では、現況の東京駅折り返し状況やこだま号のN700系統一に伴い、「東京駅発着3分00秒間隔」「のぞみ号が9分間隔で東京駅を発着」になる、という筆者個人の仮説を展開した。今回はその仮説を具体的なダイヤ図に落とし込んでいこうと思う。
  のぞみ号の毎時12本運転の方法については、「のぞみ」1時間当たり最大12本の運転へ(梅原淳) でも推測が試みられている。同記事では、「増発に当たって2通りの方策を予想した。一つは列車の運転間隔を縮めて対処するというもの。もう一つは、現在の運転間隔を維持したうえで車両のやり繰りを調整し、18時台、19時台ともに2本ずつ運転されている回送列車を削減して対処するというものだ。 」とした上で、後者をもとにした推測が行われている。
 一方で、JR東海「のぞみ」20年春増発 5分に1本なぜ可能︖(日本経済新聞電子版 2019年 5月16日付) によると、「実はカギを握るのが東京駅の折り返し時間だ。東京駅の東海道新幹線のホームには6つの乗降場所があり、線路は上りと下りの2本のみだ。「のぞみ」「こだま」など最⼤17本に回送列⾞を合わせた本数が到着と発⾞を繰り返すと、ホーム上の秒単位での調整が必要となる。そのため、新たに合計で約32億円を投じて東京駅の設備改良などを実施する。短縮効果はたったの「10数秒」だが、その10数秒が増発を可能にする。」と記載がある。筆者はこれを見て、「東京駅での折り返し間隔を、現況3分15秒(※10分を3等分した3分20秒をベースに、15秒単位に数値丸め)のところ、3分00秒間隔に短縮するのでは?」と確信し、梅原氏の記事で言う前者(列車の運転間隔を縮めて対処)を前提に議論を進めようと思う。
 さて、3分00秒間隔×6の間にこだまを1本、のぞみ号を2本出すと、54分間にこだま号を6本、のぞみ号を12本出せることになるが、60分間にのぞみ号を12本出せばよいのだから、実際は6分余る。しかしながら、これだけギッシリ列車を詰め込んでしまうと、待避設備の無い熱海駅付近で、こだま号にのぞみ号が追い付いてしまい、結果的にのぞみ号のスジが寝てしまう。
 熱海駅付近には半径1500~1900mのカーブがあるだけでなく、他の駅で見られる18番分岐器が無いため、熱海駅停車によるこだま号・のぞみ号間の時間差(停車時間を含めないで2分程度、含めれば3分程度)は、他の駅(停車時間を含めないで3分30秒程度)と比べて小さい。とはいえ、熱海駅停車によってこだま号が3分程度遅くなる以上は、小田原~三島でのぞみ号のスジも3分程度寝てしまう。
 ところで、2018年3月改正で、東京~新大阪2時間27分のスジ(東京発毎時10分、新大阪発毎時06分)が登場したが、このスジを昼間に設定するにあたっては、のぞみ号を2本続行させることをわざわざ諦めてまで、速達化を達成している。詳細は、前回記事の図5を参照いただきたいのだが、三島以西はほぼ最速である。これをのぞみ毎時12本ダイヤにそのまま入れ込もうとすると、邪魔になってしまう可能性が高い。東京~新大阪2時間27分のスジが、のぞみ号を毎時12本化して実現できなくなるなら、最初から設定するはずがないであろう。のぞみ号毎時12本化して以降も引き続き実現するには、小田原~三島でスジを立てるしかない。したがって、上記「6分余る」は、小田原~三島で(毎時2か所)のぞみのスジを(3分)立てるために使われると考えられ、下記図8のようなダイヤが仮定できる。
図8:N700系統一を想定した12‐0‐6ダイヤ

要は、小田原~三島ののぞみ号のスジを、3か所に1か所、3分だけ立てることによって、分かりやすく30分パターンにしたものである。このため、30分に1か所、のぞみ号とのぞみ号との間で間隔が不必要に空く箇所が出る(図8に無駄に大きな空白が出来ている)ため、ここにひかり号をうまくはめ込むことが出来れば、のぞみ号12本、ひかり号2本は両立できるのではないか、という期待を抱くことが出来る。
 ところで、前々回記事の後半で、 ひかり号を停車駅で甲乙二通りに分類した上で、乙(熱海or三島-静岡-浜松停車)がダイヤ編成上の大きな制約になることを指摘したが、のぞみ号12本化を想定して作成した図8に当てはめようとしても、まったく同じ問題が発生する。甲ひかりであれば、前々回記事図4のごとく設定し、図8の「大きな隙間」にはめ込むことが出来るが、乙ひかりではそれが出来ない。無理にはめ込もうとするとのぞみ号のスジが寝てしまい、2時間30分でたどり着けないスジが出たり、こだま号が駅から15分近く発車できない箇所が出たりする懸念が大きい。
  乙ひかりの設定難易度が高い原因は、こだま号が設定できる箇所を著しく制約することである。これは、①のぞみ号に抜かされる際に副本線を塞ぎ、こだま号が入らなくなる、②新横浜~名古屋に停車駅を2つ以上設定すると、両駅の間でちょうど「のぞみ号とのぞみ号の真ん中」を走ることになり、こだま号が「のぞみ、のぞみ、乙ひかり、のぞみ、のぞみ」の順で抜かされ、15分近く駅を発車できない、の二つが理由として考えられる。15分もこだま号を駅に止めておくくらいなら、30分等間隔でこだま号を設定する意味があまりなくなってしまう。
 ところで、2020年3月改正の宣伝でしきりに言われている「12‐2‐3ダイヤ」であるが、こだまの「3」のうち1本は三島止まりである。わざわざ三島止まりを数に入れている理由として、「のぞみ号を増発するために、既存のこだま、ひかりは減便しない(東京駅の折り返し能力向上の根拠?)」のほか、「こだま号の30分等間隔を取りやめる」が考えられないだろうか?
 こだま号の30分等間隔という仮定を外すことが出来れば、乙ひかりを残したままで、なんとか12‐2‐3ダイヤが作れそうな気がしてくる。より具体的な検討は次回記事に回すが、現在のところは、下記図9やその派生形に近いのではないか、と推測する。
図9:現時点の12-2-3ダイヤ想定形

 












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