2015年12月1日火曜日

千鳥停車に関する考察(5)

 そもそも読者がいるのか怪しいこの記事,更新が止まってしまったため,忘却の彼方へと追いやられているであろう。しかし,筆者の目標は,とりあえずこの記事を完成させることにあるので,ひとまず筆を進めていく。
 前回までの内容を整理すると,いわゆる千鳥停車によって,「列車を1時間に36本出せる」「しかも,必要な列車の編成数は従来とほとんど変わらない」ことを解説しつつ,「混雑が偏るのでは?」という疑問に答えることができていなかった。そこで,今回は趣向を変えて,結果を先出ししようと思う。要は,


  
 色の塗られたマスは,その電車が駅に停車することを表し,塗られていないマスは通過を表す。毎時36本出る列車のうち,赤が12本,緑が12本,青が12本であると仮定している。従来通り,全列車が各停で,毎時30本の場合,神泉→渋谷の混雑率が139%だったのだが,図中の赤い列車と青い列車はそれよりも混雑してしまっている。 一方,図中の緑の列車の乗車率は低く,70%を超えない。これは大雑把に言うと,乗客の半分程度が着席できる計算であり,とても朝の通勤電車とは思えない。増発したはずなのに,一部の電車が以前より混んでいるというのでは,かえって停車時間が増えてしまう恐れがある。ここまで混雑率が偏ってしまっては,実行不可能という批判が出るのが自然であるし,それを唯唯諾諾と受けざるを得ないのである。
 
 ここで「千鳥停車はそもそも実行不可能なので,やる意味はありません!!!」と断じてしまうのは簡単だが,千鳥停車のメリットは増発のほかに,所要時間の削減というものもあったことを思い出していただきたい。それはどの程度かというと,

全列車各駅停車,毎時30本:4.13*10^7(秒×人/時) 
全列車千鳥停車,毎時36本:3.49*10^7(秒×人/時) 

なので,おおよそ15から16%の時間短縮効果がある。通勤時間が15%縮まるってすごいことじゃないですかね?大雑把に言うと,今まで通勤に1時間かけていた人たちが全員,50分で通勤できるということですからね?
 そんなわけで,千鳥停車のメリットを宣伝するのをあきらめられない筆者は,混雑を多少でも平準化できる停車駅パターンを追い求めることにする。一方で,今回の計算結果について,根拠が不十分な(正確には,量が膨大すぎて説明が追いついていない)状態なので,先に計算根拠について示していくことにする。これについては,今回の記事に加筆修正という形にするかもしれないし,丸ごと次回に回すかもしれない。とはいえ,ひとまず結果だけ出しておこう,ということで,今回はいささか中途半端ながら,先に公開に踏み切った次第である。


2015年10月10日土曜日

千鳥停車に関する考察(4)


前回の記事では、従来1時間に30本程度が限界とされてきた列車の本数を、適切に通過駅を配置することによって増やせないか考えてみた。その結果として、鉄道事業者が新たに車両を増やすなどすることなく、従来の1時間あたり30本から、36本程度まで増やすことが可能では、と提言した形となる。
 今回は、以前からお気に留める方の多いと思われる、混雑の偏在に着目して書こうと思う。緑色の列車Bの停車駅に注目いただきたいのだが、明大前と下北沢の双方を通過している。混雑する井の頭線に乗車された経験をお持ちの方は、明大前と下北沢の両駅で、乗客の数が一気に変動することをご存知であろう。明大前にも下北沢にも止まらない列車に乗ってくれるかどうか、心配する方も疑問に思う方も多いのではないだろうか?
  答えを先に書くと、沿線革命017の記事の趣旨とは反する結果が出る、と筆者は推測する。具体的に言えば皆様のご心配通り、明大前も下北沢も通過する列車だけ極端にすいてしまい、ほかの列車がかえって混雑する結果が出るだろう。
 
 と書くと、「こいつは何を根拠に書いているんだ」と疑われるのが当然である。そこでこの記事では、需要量を具体的な数字で「仮定」することによって、お持ちの疑問にお答えすることを試みる。
  井の頭線には駅が全部で17個あるため、乗り降り駅の組み合わせは17*16=272通り存在する。自動改札で取れるデータを集めれば、たとえば一時間当たり何人利用しているか、数え上げることができるはずである。しかし、この趣旨の記事を扱う側にとっては残念なことに、こういったデータは大概の場合企業秘密であるから、そもそも外部からこういった分析を行うことができないのが通例である。
 一般に公開されているデータとしては、駅の乗り降り人員や、ある区間を通過する人数が存在する。この記事では、「都市交通年報」からこれらのデータを引用し、可能な限り恣意性を排除しながら、需要を推測し、混雑がどの程度集中するか見てみよう。
 都市交通年報の中身について紹介したいところだが、図が巨大なので記事の下の方に添付した次第である。記事では、このデータから重要と思うところのみ抜粋して書くので、適宜図を見ていただくか、原典である都市交通年報をご参照いただきたい。なおこの記事では都市交通年報のうち、筆者行きつけの書店にこれしか売っていなかったことを理由に平成22年度版を引用している。
 なお、以降のデータが収集された年度は、現時点で特定できていないが、断りがなければ2008年度のものと思われるので、この記事でも断りがなければ、平成22年度都市交通年報のデータは2008年度のものとみなすこととした。
 都市交通年報の乗車人数データは、定期券とそれ以外で分類されているが、本記事では定期券のデータのみを用いる。次に、全16区間の中で最も利用者の多い神泉→渋谷に着目すると、年間の通過人数は35,526,000人と書かれている。また、都市交通年報を再度引用すると、平成20年度の同区間の混雑率は、最混雑時間帯1時間でみて143%とある。井の頭線の1編成定員を700人、1時間当たり本数を30本として、

35,526,000÷700÷30÷1.43≒1,180

 と割り算する。ここで出てくる1180にはどんな意味があるかというと、1年あたりの上下線通過人数を1180で割ると、一番混む上り線1時間当たりの人数に換算できる、ということである。もちろん路線によって違う値が出るはずだし、必ずしもこの通りになるとは限らないが、ある程度の信ぴょう性が期待できるだろう。
 このような理屈で、とりあえず1年あたりの通過人数で需要を推定しておいて、あとでそれぞれの値を1180で割ることにしよう。
 まず、同書から引用した、年間定期乗車客・降車客・通過客は、下り線を基準としてこの表のようになる。

  定期券のデータは下り線のみで、上り線は対象となっていないが、定期券であるため、下り線のデータを乗降逆にすれば上り線で使用できると考えられる。
 次に、それぞれの駅で降車した乗客数を、乗車駅の規模に応じて比例配分することを考える。例えば、久我山駅で降車する約102万人は、吉祥寺・井の頭公園・三鷹台で乗車するため、この3駅に対し、乗車客数の合計に応じて比例配分(この例では、約1423万人:約19万人:約174万人の割合になるように)する。 このようにして得られるのが次の表である。


 見ての通り、各駅で降車する客数の合計は元データを再現できているが、乗車側の合計が元データを再現できていない。そこで、この表中一番左側の黄色セル部分を、つじつまが合うように無理矢理書き換えると、
 
 こうしてようやく、乗車客数のつじつまが合ったことになる。これを、先述の値で割り算することにより、以下のような表が得られる。割り算そのものは四捨五入していない値で行っているが、最後の結果では小数第一位をすべて切り上げている。そのため、皆様がお手元で計算した場合と、必ずしも細かい値が合わない場合のあることをご承知おき願いたい。


 とりあえず、余計な先入観なしに(悪く言えば、現場に目を向けずに)こうして需要を見積もったわけだが、これは、乗降客数のつじつまを合わせた一つの解にすぎない。今回数値計算の根拠に使った値は乗降客数のデータ32個(井の頭線全16区間×上下二方向=32)で、推定しなければならない値17×16÷2=136個に対してあまりに少ない。方程式32本で136元連立方程式が解けるわけはないし、自分で積んだ山の中身だけを知っている状態で卓上すべての牌の中身が分かるわけがない。個人の直観としては、明大前→渋谷が過大に、下北沢→渋谷が過少に見積もられている気がするし、吉祥寺駅で乗車する人数が全体的に過大に見られている気がするし、枚挙のいとまがない。しかし、これ以上筆者の手でデータを弄ってしまっては、恣意性を排除できなくなってしまうので、あえてこのままにする。
 この辺の分析は専門の方々にお任せするとして、 この記事では、例の運転計画を使った場合にどの程度混雑が偏るか、計算…と言いたいところだが、ページが冗長になってしまったので、計算本体は次回に回す。とはいえ、計算に使いたいデータは出そろった(無理矢理出した)ので、皆様のお手元でもお試しいただくことは可能である。

2015年9月29日火曜日

千鳥停車に関する考察(3)

前回の記事では、1時間あたり30本という列車本数をそのままに、千鳥停車と称して停車駅を削減したとき、どれくらい所要時間が縮むか、列車の編成数はどれくらい変わるか検証してみた。その時出た値をもう一度出すと、

各駅停車のみ:毎時30本、吉祥寺→渋谷30分50秒、列車32編成
千鳥停車導入:毎時30本、吉祥寺→渋谷23分50秒、列車25編成

であった。
 こうして見てみると、「サービス向上のためと言いつつ減便じゃないか」とご指摘の方もおいでだろう。その通りである。考えてみれば優等列車の導入でも高速化でもなんでも、サービス向上はコスト削減と両立できない限りなかなか実施されないのだし、時にコスト削減のためにサービス向上するケースがあったって不思議ではないのだ。 とはいえ、朝の混雑を尻目に車庫に電車が朝寝(?)していたら、乗客の不満轟々であろうし、せっかくこれだけ編成の数が浮いたのだから、もっと本数を増やせないかと考えることもできる。
 ここで前回記事の最後に登場した図の出番である。

 実はこのダイヤ、赤い列車と緑の列車の間だけ、3分間隔になってしまっている。ここを2分間隔まで詰めることができないか、と考えると、以下のような図が出てくることになる。

 赤い列車と緑の列車の間を1分詰めるので、6分に3本だった列車が5分に3本になるのだから、1時間あたりに換算すると36本ということになる。要は、

5分÷3本=1分40秒間隔
1時間÷1分40秒=36本/時
 ということだ。列車編成の数は、詳しい計算は省くが31編成であり、すべて各駅停車の場合と比べても大した増加にならない。
 ここで何よりも先に、はたしてこんなことが可能なのか、という問いに答える必要があろう。何しろ、これと同じ条件の下で、1時間当たり36本も列車を出す鉄道路線は、現時点で日本のどこにも無いのである。列車同士の間隔はしばしば、1分50秒から2分程度が限界とされているし、いま現在の列車ダイヤはそれに則って作られている。これが、いったいどのようにして決まっているかを書く必要があろう。
 まず、ある列車がある駅を出てから、次の列車が入ってくるまでにかかる時間を計算する。列車の加速度や制動距離、信号の間隔などから求めることになる。この記事では、この間隔を60秒とした。
 次に、各駅で乗客が乗り降りするために必要な時間を求める。ここで「求める」とは書いているが、この値は計算して求めるものというよりは、経験的に得られる値である。もちろん、駅によって条件が異なるし、値も異なってくる。ここでは、一番停車時間を長く要する駅に合わせて、これも60秒と仮定した。図中で、下北沢と明大前の停車時間が意図的に長くとられているが、この影響である。
  さて、 これを足し算し、120秒という値が出たところで、普通であれば、120秒間隔で各駅停車を走らせるところだろう。
 (編注:実際のダイヤでは、125秒間隔が現実的なのだが、説明上計算が面倒なので、あえてキリのいい値を採用した次第である)
  しかし、計算の過程を思い出していただきたいのだが、先ほどの「(約)120秒間隔」は2本の列車が両方とも各駅停車の場合の値であって、どちらか、あるいは両方の列車が通過する場合の値ではない、ということである。
 では、通過列車のある場合はどうだろうか。たとえば列車が時速54kmで走っているとしよう。秒速15メートルである。わが国では長い間、「鉄道運転規則」に従って、列車の制動距離は、新幹線など特殊な場合を除いて600メートル以内と決められてきた(現在は撤廃)が、600メートル走るのに必要な時間はわずか600÷15=40(秒)である。ごく単純な発想をすれば、40秒間隔で列車を走らせても、追突しないための距離は確保されている、ということになる。井の頭線にかつて信号機が設置されていたころ、信号機の間隔は長くて300メートル程度であったが、1分もあれば信号機3つ分の距離を進めてしまうのだから、青信号になるまで待ったとしても、これで十分なのである。
 つまり原理上は、通過列車同士なら1分間隔程度まで縮めることができる、ということである。
 実は、これと同じ原理で増便した鉄道路線がある。それは東海道新幹線である。分岐器転換などの都合上、駅を発車する際は3分15秒間隔なのに、通過する列車同士の間隔は2分強まで詰められている。これに疑問を感じる方は、一度こだま号に乗車いただいて、のぞみ号に2本連続で抜かされる際、その時間間隔を測ってみよう。少なくとも私が乗車した際は、実際に観測できた話である。なぜのぞみ号があんなにたくさんあるのか、という問いには、連続して通過列車を走らせるため、という答えが有力になるのである。
 
 というわけで今回は、通過列車が適度に存在すれば、運転間隔をこれまでになく詰められる、ということを紹介した。次回は、以前から心配されていた、混雑偏在について書いていこうと思う。




 
 

2015年9月27日日曜日

千鳥停車に関する考察(2)


前回記事を公にしてから、長い間更新せずに放置してしまっていた。今回は、沿線革命017で提唱された千鳥停車について、具体的な図や表を使いながら、その原理を追ってみようと思う。
 ではまず、下図を見ていただきたい。これは、現在の時刻表を参考にしながら、「全ての列車が各駅停車で吉祥寺行き」という仮定の下、筆者が独自に作成したものである。
 この手の図を初めてご覧になる方のために説明すると、この図はしばしば「列車運行図表」もしくは「ダイヤグラム」と呼ばれ、縦軸が距離、横軸が時間を表す。線一本は列車一本を表し、横軸の目盛は(この図の場合)1目盛りあたり1分である。
 

 

 ところで、ごく一部に赤くて太い線があることに着目いただきたい。これはある1編成の「列車」を太線にしたものである。 この1編成の「列車」の動きを追ってみることにしよう。 この列車は7時ちょうどに渋谷駅を出て、7時27分20秒に吉祥寺駅に到着し、7時30分ちょうどに吉祥寺駅を発車した上で、8時00分50秒に渋谷駅に戻ってくる。もう一度渋谷駅を出るのは8時04分ちょうど、一周回るのに7時ちょうどから8時04分まで合計64分かかることになる。2分(120秒)に1本列車が出発するとすれば、

64(分)÷2(分間隔)=32(編成)

 から、全部で32編成の列車が、この路線の中を走っているとわかるだろう。この図にも、各編成に番号を振ったつもりなのだが、小さくて見づらいかもしれない。
 ご存知の方はご存知かもしれないが、実在の井の頭線に在籍する列車は29編成しかない。さらに、実在の列車は検査の都合などもあって、何編成かは休んでいると考えてよく、実際に走れる列車の数はもう少し小さくなる。例えばこの路線の場合、過去のダイヤを参考にすると、26から27編成が通例とみられている。そのため、このような列車ダイヤを組むことは出来ないのだが、話をわかりやすくするため、あえて実在出来ない図をそのまま用いている。なお、実在の井の頭線では、列車編成の数が不足する分を補うべく、何本かの列車が富士見ヶ丘駅で折り返している。

 さて話が多少脱線してしまったが、ここからは千鳥停車の原理に関して書くことにする。一口に千鳥停車といえども様々なパターンが存在するが、ここでは「沿線革命017」にあったものを中心に説明しよう。沿線革命017から図をそのまま引用するが、停車駅のパターンを以下のように
3駅に1駅通過するように作る。これまで存在した列車種別と違って、上下の別(例えば、特急の止まる駅は急行も必ず止まる)は無い。これをA→B→C→Aの順(あるいはその逆)で順序良く出発させる。こうすることによって、どの駅からどの駅への移動であっても、多くても1回乗り換えれば可能になる。これを基にして、先ほど作成した列車ダイヤを、2分に1本という列車間隔はそのままに、千鳥停車を使って組み替えると、おおよそ以下のようになる。



 今度は太い黒線に着目いただくと、7時ちょうどに渋谷駅を出た列車は、7時21分10秒に吉祥寺駅に到着し、7時24分ちょうどに吉祥寺駅を発車した上で、7時47分50秒に渋谷駅に戻ってくる。再び渋谷駅を発車するのが7時50分ということで、一周の所要時間は50分、必要な列車の編成数は、

 50(分)÷2(分間隔)=25(編成)

から、25編成と求めることができる。

 吉祥寺→渋谷の所要時間で比較すると、従来の30分50秒から23分50秒に短縮されている。停車駅を少なくすれば目的地に早く着けるようになる、というのは当たり前のように見えるが、これまで朝ラッシュ時間帯には実現できていなかった。なぜなら、朝のように列車本数が多い時には、列車がしばしば詰まってしまうので、一番鈍い電車に合わせて所要時間が決まってしまうためである。千鳥停車のミソは、一番鈍い各駅停車をなくしてしまうことにある、と考えてよいだろう。

 さて、賢明な読者の皆様は、いくつかの事実にお気づきと思う。例えば、「(図中の)赤い列車と緑の列車の間隔が空きすぎているのでは?」である。下記に、前掲の図を拡大して載せたが、赤い列車と緑の列車の間だけ、3分も開いてしまっており、もう少し詰められるのでは、というご感想をお持ちの方もおいでだろう。


次回は、これに対してを中心に、少しばかりではあるだろうがコメントしていこうと思う。
 



















2015年9月6日日曜日

千鳥停車に関する考察(1)

 この記事を執筆した直接のきっかけは、2015年2月3日、阿部等氏によって世に出された「【沿線革命017】井の頭線の朝夕ラッシュ時は、「千鳥停車」で大幅にサービス改善!(以下、沿線革命と略す)http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41947」を目にしたことである。詳細は沿線革命本体に譲るとして、「通勤ラッシュ時の所要時間短縮」「通勤ラッシュ時の混雑緩和」を「車両や乗務員の数を増やすことなく」実施できる、ある意味では魔法のようなサービスである。しかしながら、沿線革命017が世に出て以降は(千鳥停車について)具体的に踏み込んだ記述に乏しく、議論が停滞しているように見受けられる。筆者は、こういった議論がもっと活発に行われることを期待し、重い腰を上げて筆(?)を執った次第である。
 沿線革命でいう千鳥停車は、簡単に言うと「各駅停車をなくし」「3種類の列車種別(例えば、急行や快速)を作る」ことで、「電車の本数を1時間に約30本から36本に増やす」ことを目指している。沿線革命を参照すると、確かに1時間に36本の電車が走り、吉祥寺から渋谷までの所要時間が(現状の)31分から22分へと大幅に短縮できることになっている。しかし、肝心の「どの電車がどのくらい混雑するのか」「利用者全体で見たらどれくらい時間短縮効果があるのか」が書かれていないので、導入するメリットがいまいち浮かんで来ない。沿線革命に対するコメントとして、どちらかというと鉄道に詳しそうな人たちから批判の声が多いのも、混雑や時短効果に関する分析なり定量評価なりが不十分という事情がありそうな気がしてくる。
 そんなわけで、定量評価を目指して筆を進めていこうと思う。こうして執筆している間にも、定量評価に向けた準備はしているので、大体こんなものだろう、という目星はついているつもりである。大雑把にいえば、

1.記事の提案通り、保有する列車の編成数を増やすことなく、1時間に36本の電車を走らせることは可能
2.沿線革命の提案通りに走らせた場合、全乗客でみた利用時間の合計を20%程度削減できる
3.沿線革命の提案通りに走らせた場合、明大前と下北沢の両方を通過する列車が極端に閑散としてしまい、そうでない列車の混雑はかえって激化してしまう

と予想している。
 筆者はこの混雑偏在に対し、暫定的な改良を加えた対案を出すこととした。具体的には、停車駅のパターンを変更し、明大前と下北沢を同時に通過する列車のないようにしたものである。こうすると混雑は平準化する反面、吉祥寺から渋谷までの所要時間が1分程度増えてしまう。同様に数値計算について目星をつけると、

1'.沿線革命と比べて所要時間が延びる影響で、1時間に36本の電車を走らせるには、富士見ヶ丘駅での折り返しを増やす必要が生じる
2'.この案では、全乗客でみた利用時間の合計を現状と比べて10%程度削減できるが、沿線革命の提案と比べると削減効果が小さい
3'.この案では混雑の平準化が出来るが、それでも全く均一というわけではない。そのためいわゆる「混んだ電車」の存在を許してしまい、その「混んだ電車」の混雑率は現状とほとんど変わらない

という結果になるだろう、と筆者は推測している。
 また筆者は、一部の駅を通過することには(詰まらないように運転できれば)省エネ効果があると考えており、その量をおおよそ以下のように見積もっている。

4.千鳥停車の導入により、走行にかかわる1時間当たりの消費電力量を、約15%削減できる。ただし、冷暖房に関わる消費電力量を減らすことにはならないので、車両全体で見ると削減効果は約10%程度と思われる

 総じて見ると、「コイツは何を意味の分からないことを言っているんだ」という内容になってしまったが、次回以降の投稿では、これらを可能な限り詳細に扱っていこうと思う。

はじめに

はじめまして。ED10_2と申します。休日あたりを中心に、ぼちぼち更新しようと思います。

いきなりご期待を裏切るようですが、私は編み物なる高尚な趣味が全く出来ません。
アドレスをご覧になってお分かりの通り、「編み物」は仮の名称で、実態としては列車運転計画(ダイヤグラム)について書いてまいります。
名前の由来ですか?ちょっとだけ見た目が似ていたからです。普通の命名では覚えていただけないだろう、ということで、少々無理をしております…

 自己紹介はたぶん
 http://twilog.org/ED10_2
を見ていただけばほとんど済んでしまうので省略します。

では、よろしくお願いいたします。