2019年8月18日日曜日

札幌駅の配線について考えてみる(10)

 このシリーズものの記事ではこれまで、札幌駅の配線について何度も取り上げてきた。北海道新幹線の札幌延伸や、快速エアポート号の増発、北広島~上野幌のボールパーク新駅等が話題に上るたびに、筆者の体を叩き起こして筆を執ってきた。
 そんな中、2019年度の夏コミ(C96)にて、札幌駅の配線に関して「まさに、これそのもの」を題材とした同人ゲーム「札幌駅2019」が発売となったため、勝手ながらこの場を借りて紹介したいと思う。作品の詳細は、作者てんぽく先生


に譲るものの、筆者の都合よくまとめると、「札幌駅に行き来する丸一日分の列車に対し、どの列車を何番線に入れる、という指示を出し、遅れを抑える」ことを目指すシミュレーションゲームである。
図1:タイトル画面(抜粋)


 ゲーム画面には、札幌駅の配線図が常に表示されていて、札幌駅に向かって近づいてくる各列車に対し、どの列車を何番線に入れる、というのをキーボードやマウスから指示することが出来る。実際のダイヤとは異なる番線に入れることも可能である。入れることのできない線路に無理矢理入れようとすると失敗したり、進路同士の平面交差が発生すると列車が遅れたり、筆者自身もこのゲームを手に取るまで知らなかった臨時列車が多数登場したり、様々な部分で非常に凝った作りをしている。

 
図2:プレイ画面の一例。同時に何本も列車を矛盾なく走らせると謎の達成感が生まれる。

 今まで筆者のページをお読みの方にとってはご想像の通り、筆者がいの一番に行うオプション(いわゆる縛りプレイ)は、「北海道新幹線建設後を想定した、1・2番線の使用不可」である。これを行うと3~5番線の使い方が非常に煩雑になるだけでなく、一部の時間帯はそもそも列車が入りきらない事態が発生する。端的に言って、この内容では遅延を完全な0に抑える方法は見つかっていないため、それを最小に出来る方法を、筆者の無駄な努力で探しているところである。

図3:丸一日プレイすると、成績がこのように集計され表示できる。
 
 「札幌駅に行き来する列車を眺めたい」方も「指令の仕事に興味がある」方も、「札幌駅新幹線ホームを1・2番線に入れるなんて出来っこない」という方も「いや、出来るに決まっている」 という方も、ぜひ一度お手に取ってみてはいかがだろうか。

2019年5月18日土曜日

のぞみ号の増発・毎時12本運転に向けた事前考察(3)

 前回までの記事では、現況の東京駅折り返し状況やこだま号のN700系統一に伴い、「東京駅発着3分00秒間隔」「のぞみ号が9分間隔で東京駅を発着」になる、という筆者個人の仮説を展開した。今回はその仮説を具体的なダイヤ図に落とし込んでいこうと思う。
  のぞみ号の毎時12本運転の方法については、「のぞみ」1時間当たり最大12本の運転へ(梅原淳) でも推測が試みられている。同記事では、「増発に当たって2通りの方策を予想した。一つは列車の運転間隔を縮めて対処するというもの。もう一つは、現在の運転間隔を維持したうえで車両のやり繰りを調整し、18時台、19時台ともに2本ずつ運転されている回送列車を削減して対処するというものだ。 」とした上で、後者をもとにした推測が行われている。
 一方で、JR東海「のぞみ」20年春増発 5分に1本なぜ可能︖(日本経済新聞電子版 2019年 5月16日付) によると、「実はカギを握るのが東京駅の折り返し時間だ。東京駅の東海道新幹線のホームには6つの乗降場所があり、線路は上りと下りの2本のみだ。「のぞみ」「こだま」など最⼤17本に回送列⾞を合わせた本数が到着と発⾞を繰り返すと、ホーム上の秒単位での調整が必要となる。そのため、新たに合計で約32億円を投じて東京駅の設備改良などを実施する。短縮効果はたったの「10数秒」だが、その10数秒が増発を可能にする。」と記載がある。筆者はこれを見て、「東京駅での折り返し間隔を、現況3分15秒(※10分を3等分した3分20秒をベースに、15秒単位に数値丸め)のところ、3分00秒間隔に短縮するのでは?」と確信し、梅原氏の記事で言う前者(列車の運転間隔を縮めて対処)を前提に議論を進めようと思う。
 さて、3分00秒間隔×6の間にこだまを1本、のぞみ号を2本出すと、54分間にこだま号を6本、のぞみ号を12本出せることになるが、60分間にのぞみ号を12本出せばよいのだから、実際は6分余る。しかしながら、これだけギッシリ列車を詰め込んでしまうと、待避設備の無い熱海駅付近で、こだま号にのぞみ号が追い付いてしまい、結果的にのぞみ号のスジが寝てしまう。
 熱海駅付近には半径1500~1900mのカーブがあるだけでなく、他の駅で見られる18番分岐器が無いため、熱海駅停車によるこだま号・のぞみ号間の時間差(停車時間を含めないで2分程度、含めれば3分程度)は、他の駅(停車時間を含めないで3分30秒程度)と比べて小さい。とはいえ、熱海駅停車によってこだま号が3分程度遅くなる以上は、小田原~三島でのぞみ号のスジも3分程度寝てしまう。
 ところで、2018年3月改正で、東京~新大阪2時間27分のスジ(東京発毎時10分、新大阪発毎時06分)が登場したが、このスジを昼間に設定するにあたっては、のぞみ号を2本続行させることをわざわざ諦めてまで、速達化を達成している。詳細は、前回記事の図5を参照いただきたいのだが、三島以西はほぼ最速である。これをのぞみ毎時12本ダイヤにそのまま入れ込もうとすると、邪魔になってしまう可能性が高い。東京~新大阪2時間27分のスジが、のぞみ号を毎時12本化して実現できなくなるなら、最初から設定するはずがないであろう。のぞみ号毎時12本化して以降も引き続き実現するには、小田原~三島でスジを立てるしかない。したがって、上記「6分余る」は、小田原~三島で(毎時2か所)のぞみのスジを(3分)立てるために使われると考えられ、下記図8のようなダイヤが仮定できる。
図8:N700系統一を想定した12‐0‐6ダイヤ

要は、小田原~三島ののぞみ号のスジを、3か所に1か所、3分だけ立てることによって、分かりやすく30分パターンにしたものである。このため、30分に1か所、のぞみ号とのぞみ号との間で間隔が不必要に空く箇所が出る(図8に無駄に大きな空白が出来ている)ため、ここにひかり号をうまくはめ込むことが出来れば、のぞみ号12本、ひかり号2本は両立できるのではないか、という期待を抱くことが出来る。
 ところで、前々回記事の後半で、 ひかり号を停車駅で甲乙二通りに分類した上で、乙(熱海or三島-静岡-浜松停車)がダイヤ編成上の大きな制約になることを指摘したが、のぞみ号12本化を想定して作成した図8に当てはめようとしても、まったく同じ問題が発生する。甲ひかりであれば、前々回記事図4のごとく設定し、図8の「大きな隙間」にはめ込むことが出来るが、乙ひかりではそれが出来ない。無理にはめ込もうとするとのぞみ号のスジが寝てしまい、2時間30分でたどり着けないスジが出たり、こだま号が駅から15分近く発車できない箇所が出たりする懸念が大きい。
  乙ひかりの設定難易度が高い原因は、こだま号が設定できる箇所を著しく制約することである。これは、①のぞみ号に抜かされる際に副本線を塞ぎ、こだま号が入らなくなる、②新横浜~名古屋に停車駅を2つ以上設定すると、両駅の間でちょうど「のぞみ号とのぞみ号の真ん中」を走ることになり、こだま号が「のぞみ、のぞみ、乙ひかり、のぞみ、のぞみ」の順で抜かされ、15分近く駅を発車できない、の二つが理由として考えられる。15分もこだま号を駅に止めておくくらいなら、30分等間隔でこだま号を設定する意味があまりなくなってしまう。
 ところで、2020年3月改正の宣伝でしきりに言われている「12‐2‐3ダイヤ」であるが、こだまの「3」のうち1本は三島止まりである。わざわざ三島止まりを数に入れている理由として、「のぞみ号を増発するために、既存のこだま、ひかりは減便しない(東京駅の折り返し能力向上の根拠?)」のほか、「こだま号の30分等間隔を取りやめる」が考えられないだろうか?
 こだま号の30分等間隔という仮定を外すことが出来れば、乙ひかりを残したままで、なんとか12‐2‐3ダイヤが作れそうな気がしてくる。より具体的な検討は次回記事に回すが、現在のところは、下記図9やその派生形に近いのではないか、と推測する。
図9:現時点の12-2-3ダイヤ想定形

 












のぞみ号の増発・毎時12本運転に向けた事前考察(2)

  前回記事に引き続き、2020年春に予定されているのぞみ号の毎時12本運転に伴い、どのようなダイヤが組まれるだろう、という観点から引き続き分析を試みる。今回は特に、「現況ダイヤ(2019.3改正)からのぞみ号をさらに毎時2本増やそうとすると、どのような課題が生じるか」を中心に考察する。
図5:2019年3月改正ダイヤの概要(※一部、筆者による推測を含む)
  図5の各スジに乗っている2桁の数値は、東京駅を毎時何分に出るかを表す。東京駅を毎時10分に出るのぞみ号(博多直通のうち、多くが福山に停まる方)が最も速い(垂直に近い)一方で、他ののぞみ号のスジは何らかの理由で寝ている箇所が散見される。太線はNのつかない700系が運用に就く可能性のあるものを表している。以下、今後のダイヤ改正時に活用できそうな要素を列挙しようと思う。
①図5は最速のぞみ(99号・1号・265号・200号・64号)が垂直になるよう作成しているため、700系が入る可能性のあるのぞみのスジは、N700系との速度差が15km/h分生じるため、多少でも寝かせておく必要がある。この影響で、N700系に統一されたはずののぞみ号のスジが僅かに寝ている箇所が散見される。
②東京駅毎時10分発の博多直通のスジは、2018年3月改正にて東京~新大阪で3分(2時間30分→2時間27分)スピードアップしたものだが、三島以西ではほぼ最速である。
③小田原~三島のスジは、先行列車(特に、こだま号)が居ない場合、比較的自由に立てたり寝かせたり出来る。

 次に、東海道新幹線の増発に当たり、最も本数が多くなりがちな東京駅について、折り返しの現況について整理したいと思う。図6は、2019年3月時点での東京駅において、14番線~19番線がどのように使われているかを表すものである。

図6:17時~19時東京駅折り返し現況
10分間に3本の列車が到着・出発することを、可能な限り簡略化し図示したものである。東京駅に到着・出発する列車どうしの折り返し関係は、東京駅の入線時刻が表記されたJR時刻表からある程度類推可能であるが、折り返し関係が明らかでない列車については、大井車両基地からの回送と見做し、図を作成している。
 この図に2020年春からのぞみ号を毎時2本追加しようにも、 そもそも下り列車を追加する枠がそんなに沢山残っていない。「全列車N700系に統一するのだから、大井回送の数は今ほど多くなくても良いのでは」という意見も出るだろうが、現時点で(下り)大井回送が走っている原因は、この図を見る限り車種の不統一と断定することは出来ない。また、大井回送の枠を減らしてのぞみ号を毎時2本増やすとなると、何かの理由で大井車両基地と車両を入れ替える際に不都合が生じる懸念がある。
図3(再掲):12‐0‐6ダイヤの「10分間隔」の内訳
図7‐1:N700系こだま号の想定性能
一方、前回記事で触れたように、 10分間に2本設定されたのぞみ号が「10分間隔」になる理由は、その隙間にこだま号を挟み、のぞみ号同士を2分30秒離した場合、ほぼ10分間隔になることであった。しかしこの「10分間隔」自体は、のぞみ号がN700系、こだま号が700系の場合でも成立する。となると、「こだま号を加減速自慢のN700系に統一することで、運転間隔はさらに詰められるのでは?」という仮説が立つ。
 そこでまず、(構内に急カーブがある熱海駅を除く)各駅駅間におけるN700系の運転曲線を図7のように想定する。勾配・急カーブのない約18.7kmの駅間で最高速度まで加速しすぐに減速、約7分30秒で駅間を走行したことを想定したものである。
図7‐2:N700系こだま号の想定性能
のぞみ号が285km/hで18.7kmを走行するのに使う時間は3分56秒程度であり、こだま号との時間差は3分30秒前後、 多少余裕を見ても4分あれば足りそうである。図3で、こだま号とのぞみ号との間の時間差を5分と見積もっていたが、こだま号をN700系に統一出来れば、どうも4分で足りるような気がしてくる。この数値を図3にそのまま当てはめると、9分間にのぞみ号を2本、こだま号を1本設定することは出来ないか、という仮説を得る。これを東京駅に当てはめると3分00秒間隔、毎時20本であり、現況ダイヤ(10分に3本、毎時18本)から増える毎時2本の枠を、そのままのぞみ号の増発に充てることが出来る。
 ここまで挙げた問題点を一挙に解決し、「のぞみ号の毎時12本運転」「のぞみ号はすべて、東京~新大阪2時間半」を実現するのには、「全車両のN700系統一」等をきっかけに、「東京駅折り返し時の列車間隔の短縮」「のぞみ号同士の間隔縮小」が行われるのではないか、という仮説を得た。次回以降は、この仮説に基づき、ダイヤ図の形に具体化して落とし込んでいこうと思う。



 



 

2019年5月6日月曜日

のぞみ号の増発・毎時12本運転に向けた事前考察(1)

 2019年4月18日付でJR東海から、2020年春に予定しているN700Aタイプへの車種統一に伴う全列車の最高速度285km/h化に合わせ、各種設備の改良に取り組むことでダイヤを刷新して「のぞみ12本ダイヤ」を実現予定、と発表があった。本稿では、「のぞみ12本ダイヤ」がどのようなものか、可能な限り事前に考察することを試みる。
 まず、現時点での筆者の予想(限りなく妄想に近いが…)、という前置きを置いた上で、「のぞみ号12本ダイヤ」がどのような形を取るか、図の形でお示ししたいと思う。

図1:12‐2‐3ダイヤ(筆者の妄想)
いきなりこのダイヤ図を御覧に入れたところで、正しい説明になっているかというと全くそうではない。そこで、あるべき説明方法の概要に立ち返るべく、①東海道新幹線でのぞみ号を多数増発するため、現況のダイヤ上ではどのような工夫がされてきたか ②現況ダイヤ(毎時10本)からのぞみ号を毎時2本増やすためには、どのような課題があるか ③上記ダイヤ図にたどり着いた経緯 の順で説明することを試みる。

図2:12-0-6ダイヤ
まず、①現況の東海道新幹線のダイヤで、のぞみ号を多数設定するために、ダイヤ上どのような工夫があるか、について述べる。まずは議論を単純にするため、のぞみ号とこだま号のみでダイヤ作成を試みる。現況の東海道新幹線では、10分間に3本の列車が発車しているため、これを単純にのぞみ2:こだま1の割合で配分し、かつのぞみ号の高速運転をなるべく妨げない方向性で作成したのが図2である。
 ところで、こういった場合に一般的なダイヤ図の形で図示しようとすると、図が横長になってしまって見づらいという難点があるため、本記事では、「最も速いのぞみ号(現時点では99号・1号・265号・200号・64号)が図上で垂直になる」よう、横軸は「最速のぞみとの時間差」になるよう取ることにしている。最速ののぞみ号の場合、東京~新大阪は約2時間18分(※途中駅の停車時間は含まない)で結ばれる。例えば図2で東京7時発の列車は、新大阪駅に7時11分に着くことになっているが、この「11分」は上記「2時間18分との差」であるため、実際に新大阪に着くのは9時29分となる。
ここで、10分間にのぞみ2本、こだま1本を走らせた場合の「10分間」の内訳について述べたいと思う。図3を用いて説明すると、下記㋐㋑㋒㋓4つの合計が10分であることにより、10分間にのぞみ2本、こだま1本を設定することが(原理上は)可能になる。
 ㋐2本続けて走るのぞみ号同士の間隔:約2分半
 ㋑向かって後ろののぞみ号通過~こだま号発車:約1分
 ㋒こだま号が1駅間走る際の所要時間の、のぞみ号との時間差:約5分
 ㋓こだま号停車~向かって前ののぞみ号通過:約1分半
 ただし、品川・新横浜・名古屋・京都のようにのぞみが停車する駅で、2分30秒ごとにのぞみ号が発車・到着するのは難しいことから、実際のダイヤではプラットホームを交互に使用するとともに、到着時には向かって後ろ側ののぞみ号、発車時には向かって前側ののぞみ号のスジを寝かせることで間隔を適切に保つよう工夫している。
図3:12‐0‐6ダイヤの「10分間隔」の内訳
 通過列車どうしの間隔(2分30秒)が停車列車どうしの間隔(最小3分15秒)よりも短いことこそ、このダイヤパターンのミソである。時速270kmで2分30秒走れば11.25km、列車自体の制動距離よりも十分長い距離を進むことが出来るためである。高速道路で一番幅が広く、よく渋滞するのが「料金所」であることを思い浮かべていただくと、イメージしやすいかと思う。通過列車主体のダイヤで列車間隔を詰めよう、という発想自体はいたるところで見受けられるが、これを実際のダイヤに応用しているのが東海道新幹線なのである。
 ところで図2の12-0-6ダイヤで「東京7時発ののぞみ号が新大阪に9時29分に着く」と先ほど述べた。つまるところ、「のぞみ号毎時12本」「すべてののぞみ号が、東京~新大阪2時間半以内」は、現時点でもやろうと思えばできないことはない。しかし、現在のダイヤで設定されているような「ひかり号」を毎時2本設定しようとすると、これがとたんに難しくなってしまう。
 現在の時刻表をご覧いただくと、ひかり号は毎時2本設定されているが、停車駅で分類すると大雑把に言って以下の2種類になる。

 甲:東京、品川、新横浜、(小田原と豊橋のいずれか)、名古屋、岐阜羽島、米原、京都、新大阪(500番台)
 乙:東京、品川、新横浜、(熱海と三島のいずれか)、静岡、浜松、名古屋、京都、新大阪(以西各停)(450番台)


図4:小田原or豊橋のみ停車のひかり号を設定した10-2-2ダイヤ
このうち「甲」ひかりを設定する場合は、図4に示すように、のぞみ号1本を甲ひかりに置き換えることにより、図2パターンを大きく乱す必要がないことが分かる。実際は、小田原or豊橋の停車時間分(1分程度)だけ、のぞみ同士の間隔が不足してしまうため、「余裕時分を切り詰める」「その分だけのぞみ号のスジを寝かす」「性能の高い車を甲ひかりに対し、優先的に割り当てる」のいずれかが必要になるだろう。
 しかしいずれにしても、10-2-2ダイヤ(つまり、現況と本数はほぼ同じ)であっても、「すべてののぞみ号が、東京~新大阪2時間半以内」は、現時点でもやろうと思えばできないことはない。さらに、上記の甲ひかりの停車駅は小田原や豊橋である必要はなく、静岡や浜松でもほぼ同じことが出来る(※熱海~名古屋ノンストップ便には別の方向性で可能性が秘められているが、ここでは触れない)。
 賢明な読者の皆様は、ここまでで筆者が何を申し上げようとしているか、おおむね見当がついてしまうのではないかと思うが、すべてののぞみ号を東京~新大阪2時間半で走らせることの障壁になってしまっているのが(本記事で言う)乙ひかり(現時点で、450番台)である。 新横浜~名古屋で(熱海を除く)2駅以上停車させると、どうしてものぞみ号に追い抜かれる必要が生じる上、のぞみ号に追い抜かれたら追い抜かれたで、のぞみ-のぞみ-乙ひかり-のぞみ-のぞみのように通過列車が5連続でやってくるため、こだま号が駅で15分近く停まる必要が出てしまう。
 東海道新幹線Ⅱ改訂新版(JTBキャンブックス、須田寛著)を参照する限り、この乙ひかりの起源は昭和60年3月改正に遡ることができ、誕生はのぞみ号より先である。同書ではこのひかり号は「HKひかり」と呼称されており、以下のような解説がある。
  
 「昭和60年3月ダイヤ改正から東海道新幹線ひかりに新しいダイヤパターンが加わった。開業当初から「ひかり」は名古屋、京都の2駅を中間停車駅としてきた。そして例外的に新横浜、静岡などを追加してきたが、これら各駅への「ひかり」停車はせいぜい一日数本にとどまっていた。「ひかり」増停車に対する各駅の地元からの要望は強く、一方で減量ダイヤを組むため「こだま」の編成減車などを行なうこととなったので、「ひかり」の中間駅停車をダイヤ規格に取り込んでこれをカバーすることとなり、60年3月から実施した。
 この際東京~新大阪間「ひかり」に毎時1本、熱海・豊橋間に原則として2駅(列車によって停車駅は異なる)停車可能のダイヤ規格が生まれた。これが「HKひかり」(ひだま列車ともいわれた)である。即ち「H-ひかり」と「K-こだま」の中間の列車の意である。したがって同区間の各駅はこの「ひかり」で停車回数が増加した。」

 このひかり号によって、(原理上は)あらゆるODを拾うことができるため、「地域密着経営」という点では満足度の高いものであったと思われる。しかし、図2のようなダイヤパターンに組み込もうとするとのぞみ号に追い抜かされる必要が生じ、停車駅同士をあまり離しすぎるとこだま号を入れる場所がなくなってしまうことから、熱海or三島・静岡・浜松の三駅停車という形に落ち着いたものと考えられる。

 さてようやく②現況ダイヤ(10-2-2ダイヤ)からのぞみ号を毎時2本増やす際の課題について、あくまで筆者の推測、という但し書きはつくが、お示ししようと思う。ただ、この時点で記事が無駄に冗長になってしまったため、いったん筆をおくことにする。

 

2018年11月13日火曜日

エアポート号増発とボールパーク新駅を想定した千歳線ダイヤパターンの考察(2)

 前回の記事では、千歳線のダイヤパターンについて、快速エアポート号の増発(現在毎時4本→5本に増発予定)と上野幌~北広島の新駅開業とを想定しながら作成してみた。今回は、貨物列車の設定を念頭にこのパターンをより具体的な形に落とし込むことを試みる。現段階では、「エアポート号の増発が2020年度予定、北広島ボールパークの開業が2023年予定」と、両者の時期がある程度具体化していると同時に、時期としてはエアポート号の増発が先になる可能性がかなり高いことから、まずはエアポート号の増便を前提にダイヤパターンを作成し、その上でボールパーク新駅の設置に伴う課題を洗い出すことを試みる。

  筆者が千歳線のダイヤパターンを書くとき真っ先に決めるのが、快速エアポート号同士がすれ違う位置である。ここでは、議論を単純にするために毎時5本のエアポート号が等間隔(12分に1本)走ることを想定した。この時考え得るパターンは、大雑把に言って「千歳~南千歳ですれ違う」「南千歳駅構内ですれ違う」の2種類に分類できる。前者を左側、後者を右側に配置するとともに、貨物列車が「エアポート号に追いつかない、かつ追いつかれない」ように配置したのが、以下図1である。
図1:エアポート号同士がすれ違う位置で二通りに場合分けしたダイヤパターン。議論を単純にするため、エアポート号の空港駅発車時刻は、いずれのパターンでも12N分ちょうどとした。
 この時、貨物列車の時刻は一意に定まらないため、設定しうる時刻を帯状に表すことにした(※貨物列車を帯状に描画する際は、15秒ずつずらしてコピペしている。)。ここで、貨物列車同士がすれ違う位置について、左右それぞれのパターンで比較したい。単線区間である札幌貨物ターミナル~新札幌(駅北方の平面交差)で貨物列車がすれ違うのを防ごうとすると、右側のパターンよりも、左側のパターンの方が、貨物列車設定の自由度が高いことが分かる。貨物列車同士が単線区間ですれ違わないようにしようとすると、右側のパターンでは、貨物列車の時刻がどちら方面もほぼ1通りに決まってしまうのに対し、左側のパターンでは、少なくとも一方向の貨物列車の時刻は(帯の範囲に収まるなら)比較的自由に決められる。
 というわけで本稿では、エアポート号が千歳~南千歳で行き違うパターン(図1左側)を前提に議論を進めようと思う。エアポート号の新千歳空港駅停車時分は12分と、微小な遅延を調整するための時間がほとんど取れないのが課題であるが、「貨物列車の設定自由度を高める方が、結果的に大規模な遅延を防げる」と考え、本稿ではこのパターンを前提に考えることにする。
 さて次に、図1左側のパターン(新千歳空港駅の停車時間12分+千歳~南千歳にてエアポート号が行き違い) に対し、特急列車の設定を試みる。本稿では、特急列車のスジが必要以上に寝てしまうことが無いよう、「新札幌駅の時点で、札幌行きはエアポート号の直後、札幌発はエアポート号の直前」になるように配置しようと思う。すると図2のように、
図2:北広島以北のみ、特急を設定した図。
札幌行きの特急と札幌(貨)発の貨物列車が交差支障を起こしてしまう。これを避けるための一つの方法として、特急列車を新札幌駅に止めたままにする、というものが考えられるが、あまり長く止めていると、北広島駅で抜かしたはずの普通列車に追いつかれてしまうため、限度はある。限度いっぱいまで止めた場合を想定し、図2では特急列車の一部を帯状に描画している。
 ところで、図2右側の新札幌駅付近(図中オレンジ色の丸印部)で、札幌行き普通列車と札幌(貨)発の貨物列車が交差支障を起こしているが、先ほどの特急列車の場合と異なり、どう頑張っても交差支障を回避することが出来ない。このためやむを得ず、図3のように、札幌行き貨物列車をなるべく図の左側に寄せることにする(≒千歳駅で貨物列車がエアポート号に追いつかない条件下で、可能な限り早くする)。
図3:図2の平面交差を避ける形で修正。一部のエアポート号のスジが寝てしまう難点はある(後述)
  図3は、図2の橙色丸印部で発生した平面交差を避けるため、貨物列車を可能な限り早い側(図の左側)に寄せている。この際、図の緑色丸印部分のエアポート号は、白石駅の手前でどうしても普通列車に追いついてしまうため、スジを寝かせることにした。図3のパターンは、「新札幌駅時点で、札幌行き貨物列車の直後に普通列車が居る場合に限り、その後ろを走るエアポート号のスジが1分程度寝てしまう」という難点を抱えつつも

①快速エアポート号が毎時5本、等間隔に走る
②特急列車、貨物列車のうちいずれか片方を、エアポート号とエアポート号の間に設定できる(エアポート号を抜かさず、エアポート号に抜かされない)
③札幌(貨)発の貨物列車は、どの札幌行き列車とも交差支障を起こさない(厳密には「交差支障は起きうるが、すべてのケースに対し、回避する方法が用意できる」が正しい)

のすべてを満たす形になっている、と考える。
 今回掲載した図で、札幌行きの普通列車に関しては、上野幌~北広島に新駅が無い場合とある場合とを重ねて描画している。新駅が無い場合、北広島で特急列車や貨物列車に抜かれた普通列車は、白石駅まで後続のエアポート号から逃げるのに精一杯の状況である。あえて換言するならば、ボールパーク新駅が待避設備等のない棒線駅の場合、12分間隔でエアポート号を設定しようとすると破綻する。これを防ぐならば、前回記事の通り、北広島→白石に(上野幌2番線以外に)もう1か所追い抜き設備が必要である。 今回掲載した図では、西の里信号場を復活させることを想定しているが、他の駅(例えば上野幌駅)に追い抜き設備を増設しても、おおむね同じようなダイヤ図が得られるであろう。
 
 …とは言うものの、賢明な読者の皆様は、下記のような意見をお持ちかもしれない。例えば、「上記の「破綻」が指す事象はエアポート号が2分程度遅くなるという程度の話であって、エアポート号の札幌駅停車時間6分程度(過去記事参考、白石~手稲に待避設備が事実上無いため)を削ればなんとかなるのでは」「であればいっそのこと、空港発のエアポート号をボールパーク新駅に臨時停車させれば良いのでは」などである。
 球場輸送に関わるエアポート号の臨時停車に関しては、今回記事には含まず別途記事を起こして議論したい。しかし南千歳以南の単線区間を処理しなければならない都合上、新千歳空港行きのエアポート号がボールパーク駅に臨時停車することはまず無いと言って良いだろう。今回使用したパターン(新千歳空港の停車時間が12分しかなく、これ以上削れない)だとなおさらである。

 

2018年9月11日火曜日

計画停電を防ぐ「節電ダイヤ」の方向性について(1)


 2018年9月6日3時7分に発生した北海道胆振東部地震の影響により、北海道全範囲での停電(いわゆるブラックアウト)が発生した。その後も、苫東厚真火力発電所の復旧に時間を要していることから、全道にわたる停電が再び発生する懸念が生じ、計画停電の実施の是非や、計画停電を回避する手段に関して、現在進行形で議論が行われている。
 鉄道に関して言えば、施設自体への被害は幸いにして大きくなく、9月9日時点で多くの路線が運転を再開できたが、全道的な電力不足と、それに伴う鉄道運行への懸念は今も続いている。鉄道も「節電への協力」対象と見做されたのか、札幌市営地下鉄や路面電車では昼間の本数削減、JR北海道では特急「電車」の一部運休が実施されている。
 関東地方に暮らす筆者は、2011年夏に発動された「電力使用制限令」に伴う列車の減便により、大きな不便益を被った。このような不便益の発生を繰り返さない、という意志のもと、列車の減便以外に何か良い方法は無いか、筆者なりに考察してみようと思う。
 
 まず、9月10日現在、どのような「間引き運転」が実施されているか、札幌市営地下鉄東豊線を対象に調べてみた。

図1:東豊線ダイヤ図(震災以前)。周回60分÷7.5分間隔=(最小)8編成で運転できる。

図2:東豊線ダイヤ図(2018.09.10現在)。運転間隔は不規則だが、最小7編成で運転できる。
 図1(震災以前)と図2(2018.09.10現在)を比較すると、運用するために必要な列車編成数は、図1で(最小)8編成、図2で(最小)7編成となる。どのくらい節電になるのか単純に計算すると、1-7/8=12.5%の節電が可能と考えられる。
 一方図2のダイヤを利用することで被る乗客の不便益は、主として「通常時に比べて列車が混む」「通常時に比べて列車を待つ時間が長くなる」の二つが考えられる。対象とする時間帯が昼間の閑散期であることから、前者の影響は小さいと判断し、後者に着目することにする。すると、図1の平均待ち時間は225秒(3600÷8÷2=225)なのに対し、図2の平均待ち時間は最小で約257秒(3600÷7÷2)となり、32秒の差がつく。平均値にはなるが、すべての乗客に対して32秒多くの「負担」を強いることになる。
 混雑による不便益が無視できる場合、乗客にかかる負担を可能な限り減らそうとすると最も有効な方法は減車である。例えば10両編成の列車を8両編成にすれば、(多少の誤差は出るだろうがおおむね)2割の節電が可能になる。しかし東豊線の場合、もともとTc-M-M'-Tcの4両編成で運転されているため、これ以上の減車が容易でない。
 減車が困難な路線において、次に考えうる手段が減速である。図3は一般的な鉄道車両における、運転時分と消費エネルギーとの間の関係性を表すものである。
図3:一般的な鉄道路線における消費エネルギー(kWh)と運転時分(秒)の関係[1]
  図に例示された3つの区間について述べれば、「最速での運転時分を5秒単位で切り上げた値(区間1(赤)で65秒、区間2(緑)・区間3(青)で75秒)を標準運転時分として使っている路線においては、運転時分を5秒増やすだけでも2割程度の省エネを実現できる」ということになる。東豊線の乗車1回あたりの平均利用区間数を3区間と仮定する(札幌の中心市街地を横切る形の線形のため、通しでの利用は少ないと仮定した)と、各乗客の負担は3区間で15秒程度となり、間引き運転の場合よりも負担を小さくすることができると考えられる。

 このように突拍子のない提案をすると、「そんなはずは無い」「具体例は無いのか」という反論が来そうなものだが、2011年夏、起点から終点までの運転時分を1分30秒延ばすことで、列車を減便することなく15%の省エネを実現した鉄道事業者が存在する。それは新京成電鉄であり、内容については抜粋し図として掲載したが、詳細は同社の公式ホームページhttps://www.shinkeisei.co.jp/topics/2011/2521/および文献[2]を参考されたい。
 ※この事例では、運転時分1分30秒の増を、終着駅の折り返し停車時間を削減することで吸収している。また、図6の省エネ効果については、運転時分の増加の他、軽量な省エネ車両を集中的に起用した効果も含まれているので注意されたい。
図4:ノッチオフを早めて最高速度を下げた例(文献[2])

図5:65km/hと85km/hでそれぞれ試運転し、消費エネルギーを測定した結果(文献[2])

図6:2011年夏季における省エネルギー効果。省エネ車両の積極的起用もあり、15%を大きく上回る効果を達成した。(文献[2])

 
 さて、ここまで大風呂敷を広げたところで、読者の皆様がお持ちであろう、以下の疑問に対応しようと思う。

Q1:ゴムタイヤで走行する札幌市営地下鉄は、一般の鉄道と比べて走行抵抗が大きいため、運転時分を延ばしても省エネ効果は小さいのでは?

A1:速度に関係なく消費されるエネルギーが大きいと、速度を下げることによる省エネルギー効果が小さくなることは事実である。ゴムタイヤ・地下鉄といった特殊な条件下で図3のような関係性を導くには、机上の計算(運転曲線の作成)を行った上で、実測によって確かめるのが現実的と思われる。

Q2:この文章の前半では「節電」、後半では「省エネルギー」となっているのは何故か?
A2:鉄道の電力消費量は加減速の関係で時々刻々と変化するため、その「瞬間最大値の大小」と、「ある程度長い時間の平均値の大小」は必ずしも一致しない。例えば、電車の出力が向上すると、前者が大きくなり後者が小さくなるが、加速が良くなるとその分最高速度が低くて済むためである。
 このような事情から、前者の削減と後者の削減を明確に区別しておく必要がある、と筆者は考える。「間引き運転」や「減車」は(MT比を変えない場合)前者と後者を同時に小さくできるため「節電」と呼称し、「減速」は後者のみを小さくするため「省エネルギー」と呼称することで区別を試みている。
 なお、変電所の容量不足など緊急の場合に、前者を下げるために行うのが「ノッチ制限」である。例えば抵抗制御車の場合、マスコンを2に入れっぱなしにするとパワーを意図的に抑えたまま加速できる(※直列段のまま特性領域に移行するため)が、その分ロスも多いため、結果的に後者が増えてしまう懸念はある。あくまで急場しのぎの方法と言えるだろう。

 ここまで大急ぎで筆を進めてきたが、計画停電を防ぐ列車ダイヤの方向性について、少しでも多くの皆様に知っていただければ幸いである。


[1]曽根悟:「長期的節電要請に対する電気鉄道のモデルチェンジの提案」, JREA, Vol.54, No.9, pp.39-46(2011)
[2]濱崎康宏:「新京成電鉄における省電力への取り組み」, 鉄道車両と技術, No.196, pp.15-21(2012)


2018年3月15日木曜日

エアポート号増発とボールパーク新駅を想定した千歳線ダイヤパターンの考察(1)

 情報収集に熱心な読者の皆様であれば,札幌駅の新幹線ホームの位置がおおむね「大東案」で決定していることはよくご存知であろう。筆者はこれを受けて,記事の方向性を多少ではあるが変更し,「札幌駅の構造にかかわらず,千歳線のダイヤ編成上のボトルネックになる箇所」を探っていこうと思う。今回はまず,札幌駅の新幹線ホームに関して協議する際に「先送り」となった,快速エアポート号の増発(毎時5本)について検討したいと思う。また,札幌ドームの移転先が北広島市内に決まり,上野幌~北広島に新駅設置を要請された場合についても検討したいと思う。
 ※本文中で使用した快速エアポート号の運転時分は,130km/h運転が行われていた時期のものを参考に,新札幌・北広島・千歳・南千歳の停車時間を合計1分伸ばすことで,現況の所要時間に合わせたものである。
 ダイヤパターン作成時に一番頭を悩ませるのは,単線区間の処理方法である。本稿ではまず,南千歳~新千歳空港の単線区間を処理できるダイヤパターンを有限個洗い出し,次に,平和~新札幌での「苫小牧方面行貨物列車」と「札幌方面行旅客列車・貨物列車」との間の平面交差を処理できるかどうかを検討する。下の図1は,エアポート号を12分間隔で等間隔に配置した上で,南千歳~新千歳空港の単線区間に関して二通りに場合分けし,それぞれ描画したものである。
図1:快速エアポート号パターン想定図(左:12分案,右:17分案)
札幌駅の配線について考えてみる(6)と書いてあることは大して変わらないのだが, エアポート号が新千歳空港で停車している時間で場合分けし(これをそれぞれ「12分案」「17分案」と名付ける),快速列車に追いつかない・追いつかれない範囲で特急・貨物列車を設定してみる。

 表1:12分案・17分案比較表

12分案 17分案
長所 ○新札幌駅付近の単線区間で貨物列車どうしが交差支障を起こさないため,貨物ダイヤの設定自由度が高い(「上下線それぞれ」毎時5本まで)
→貨物列車の遅延に強い
○新千歳空港駅折り返し時分が可能な限り長く取られている
○空港行きのエアポート号が遅れても,1分30秒以下であれば,空港行きのエアポート号に影響しない
→エアポート号の遅延に強い
○エアポート号と特急列車の乗り換え時間が比較的短い
短所 △千歳~南千歳の平面交差の関係で,空港行きのエアポートが少しでも遅延すると,それがそのままそのまま空港発のエアポートに伝播する △新札幌付近の単線区間で貨物列車どうしが交差支障を起こすため, 貨物列車の設定可能本数が少ない(「上下線合計で」毎時5本まで)
△南千歳~新千歳空港の線路が常時埋まっている状態になるので,千歳線の札幌方面の遅延が,そのまま空港行きのエアポートに伝播する

 一長一短であり,比較できるものではないが,今回の内容では12分案・17分案のいずれを採用しても大して変わり映えしないため,便宜上12分案を用いて図示することにする。なお,12分案を使用した理由は,新千歳空港駅の信号設備を改良する理由が説明しやすいためである。
 というわけで今回も,最小運転間隔を図示するため,ひとまず図2のようなダイヤ図を作成してみることにする。過去に作成したものと異なる点は,列車間隔に余裕を持たせたことと,上野幌~北広島にボールパーク新駅が開業することを想定していることである。新駅への停車により,運転時分は停車時間を除いて90秒,停車時間を含めて120秒延びることを想定している。また,今後断りの無い限り,ボールパーク新駅には待避設備が無いことを想定して議論を進めてゆく。
図2:特急と快速を交互に配置した場合の最小運転間隔(概念図)

 色々と突っ込みどころ満載の図であるが,特徴的な箇所をいくつか抜粋したい。
①サッポロビール庭園で各駅停車を抜かす特急の前後(島松・千歳のいずれかで各駅停車を抜かす)に配置される快速の間隔が12分をわずかに超えている。
②北広島→白石を無待避で走り抜ける際,快速同士の運転間隔は9分30秒を要している。
③各駅停車がサッポロビール庭園で快速に抜かされる際,恵庭駅での運転間隔が,他の駅や特急列車と比べて長い。

 ①を受け入れるならば,これまで「札幌駅の配線について…」の記事で出したダイヤパターンの一部は組めないことになってしまう。とはいえ,影響を受けるのは島松以南であり,札幌駅の配線に関する議論を左右しないため,あえて過去記事の図を差し替えることはしないことにする。
 ②が意味するところは何だろうか。快速と快速の間に特急を1本挟むと12分間隔ぎりぎりであり,かつその場合,特急は新札幌の手前で,快速に追いつかないよう走行することになる。つまり,快速列車が12分間隔で走行し,ボールパーク新駅に各駅停車が停まる場合,特急列車は徐行運転を強いられることになる。上野幌の中線を苫小牧方面に譲る仮定を置く限り,特急を高速走行させるためには,北広島→白石のどこかにもう1か所待避設備が必要となる。
 ところで,北海道の鉄道に関して興味をお持ちの読者の皆様は,忘れ去られた待避設備のことを挙げたくて仕方ないのではなかろうか。そう,西の里信号場である。いつの間にか側線が撤去されてしまっているが,ダイヤ編成上,北広島駅で待避するのとほとんど変わり映えがしないため,不要不急設備とみなされても(当時は)致し方なかったのだろう。ところが,西の里(信)~北広島に新駅を作り,普通列車を停車させると事情が変わってくる。図3のように,西の里信号場の札幌方面の線路が復活した場合を想定すると,ボールパーク新駅の停車時間に多少余裕を持たせつつも,12分間隔でのパターン化が可能となる。冬季に除雪する手間がかかるという難点はあるものの,新駅が営業できる(≒西の里信号場を稼働させる)時期をプロ野球の試合が行われる季節に限定すれば,さほど大きな問題にならない,と筆者は考えている。もっとも,ドーム球場で出来るイベントはなにも野球に限られないわけだが…
 ※上野幌駅に4番線を新設し,必要に応じて上野幌→新札幌の閉塞割を細かくしても同様の効果は得られるし,普通列車からすれば余計な停車回数を喰わずに済むのだが,本記事では,用地の制約が無い西の里信号場案を優先して挙げることにした。工事費より用地費にばかり気を回すのは東京者の感覚かもしれない
図3:西の里信号場を復活させた場合

 ところで,せっかく特急を高速で走らせる体で,西の里信号場を復活させる話を出した割には,恵庭以北でスジが寝てしまっている(上野幌~恵庭で平均100km/h程度)。高速化した意味がイマイチ感じられないダイヤになってしまう原因は,間に駅が2つも挟まっているにも関わらず島松~サッポロビール庭園に待避設備が無いことである。
 ここで,思い出したように図2の③について解説すると,要はサッポロビール庭園を出る普通列車は,恵庭駅の手前でエアポート号に追いつかないよう配慮する必要がある(逆方向も然り),ということである。つまり,サッポロビール庭園で快速を待避する場合,恵庭駅に快速が停車することによって,列車間隔が余分に空いてしまい,結果的にダイヤ設定の自由度が下がっている現状がある。じゃあもともと通過駅だった恵庭駅に快速を止めなければ良いじゃないか,という危なっかしい発想の下で書かれたのが図4である。図4では,特急がその性能をほぼ最大限に発揮できるようなパターンが引かれている。
 
図4:快速エアポート号が恵庭駅を通過した場合
とはいえ,恵庭駅利用者からすれば大変に困った話である。そこで,特急の高速運転と快速エアポート号の恵庭駅停車とを両立する方法が必要となるわけだが,一番有力と思われる方法は,恵庭駅への副本線設置である。既存のホームにあるエレベーターと交錯しないか気になるところだが,それ以外の箇所では用地に比較的余裕があるように見受けられる。図5は,恵庭駅に副本線がある前提で書かれたものである。
図5:恵庭駅に副本線を設置した場合
これで晴れて,ボールパーク新駅への各駅停車停車,エアポート号の毎時5本+恵庭駅停車,特急の高速運転をすべて満たす形が出来上がったことになる。
 
 最後になるが,野球の試合終了に合わせた臨時列車(以下「野球臨」)の設定可能性について考察したいと思う。試合終了から30分ほど経過すれば,北広島駅からエアポート号に乗車する乗客も出て来るであろうが,試合終了直後ともなると,一番近い駅に乗客が殺到するであろうから,専用の臨時列車を用意する必要が出よう。そういう意味でパターンダイヤは便利である…というのはともかく,臨時列車を試合終了間際まで置いておく場所が課題となる。そんな中候補になりそうなのが,「西の里信号場の苫小牧方面副本線」「北広島駅の3番線」「島松駅の2番線」である。これらはいずれも配線の都合上,手稲側からの回送ができ,(特急のスジを寝かせさえすれば)試合が長引いてこれらの線路が塞がっていても,通常営業列車のスジを阻害せずに済む。少ない編成数で多くの乗客を運ぶことを考えるなら,西の里→ボールパーク→北広島(折り返し,乗客は快速で移動?)→ボールパーク→札幌,という経路をたどるのが一番効率的であろうから,待避駅としての機能は全部島松駅に押し付ける代わり,北広島駅2番線から札幌方面に出られるように配線改良するのもアリだろう。また「新千歳空港にさえ乗入れなければ」ホームの長さも待避駅の有効長も全体的に有り余っており,長編成の野球臨設定も不可能ではないように思われる。もっともその場合,ボールパーク駅のホーム長さが不足しては元も子もないように思えるが…下図は,西の里信号場に1編成,北広島駅(2番線から札幌方面に出られるよう改造済)に2編成留置することを想定し,17時ちょうどに試合が終了したと仮定して作成したものである。
図6:17時丁度に試合が終了することを想定して作成した図
  試合終了の前後で比べると,待避回数が上下線で合計3回(西の里信号場×1,北広島×2)で増加し,これが臨時列車の編成数(西の里信号場×1,北広島×2)と一致するように作成した。試合終了と同時に臨時列車を発車させられない理由は,試合終了(17時)と同時に恵庭駅等待避駅で定期列車の各駅停車を抑止させ,臨時列車用の場所を空けるのに時間を要していることである。定期列車を抑止させる際には,エアポート号の止まる駅までに乗客に周知し,急ぐ乗客をエアポート号に適切に誘導する必要がある。こういった事情から,快速停車駅である恵庭駅に副本線が有るとたいへん便利である
 なお,このダイヤ図は引き上げ線を1本も要求しない代わりに,臨時列車が止まっていた場所を緩急接続・追い抜きのために使用するケチなプランである。北広島駅に引き上げ線を設置できれば,もう少し余裕のあるものが作れると考えられる。

 というわけで,ここまで千歳線のダイヤパターンを,「快速毎時5本」「上野幌~北広島の新駅開業」の二つを想定して作成して来た。JR北海道としては,あまりお金をかけずに設備改良を実施し,空港や新球場からの旅客から収入を得られれば上出来であろうから,いかにその設備改良の資金を集めて来るかが課題と考えられる。もっとも,西の里信号場や恵庭駅への待避設備増設に関して,必要性を訴えるには「エアポート号を毎時4本から5本に増やした結果,特急の高速運転が不可能になるため」と理由を付ける必要がある(※特急のスジをエアポートと平行になるくらい寝かせると,なくても組める)し,そもそも高速運転をやっていないじゃないか,と言われると辛いものがあるが…
 このようなパターンを組んだ際の,札幌駅やその先の区間への影響については,別途論じることにしたい。

 なお,図4に札幌方面の列車が図示されていない理由については,皆様への「宿題」とします。